ドキュメンタリー映画「ビヨンド ユートピア 脱北」を映画館で観てきました。
映画「ビヨンド ユートピア」は北朝鮮からの脱北者が実際に国境を越えるのを追うドキュメンタリー映像である。予告編から大体の内容の想像がついたが,好奇心でみたくなった。監督は数々の映画の編集に関わっているマドレーヌ・ギャヴィンである。
息を呑むようなシーンが続く。目が離せない。
脱北に成功する事例と失敗した事例の両方が語られる。いずれも多数のブローカーが絡んでいる。実にうさん臭い。
必見のドキュメンタリーだ。
ソウルに住む牧師が脱北に関与している。脱北と言うと北朝鮮から国境を越えて中国に行くことだけを想像する。ただ、この牧師は中国からは出禁になっている。脱北に失敗して中国で拘束されると北朝鮮に強制送還される。失敗して拘束された人たちへの当局からの仕打ちは半端じゃない拷問だ。結局,中国に渡った後、車で長距離の移動をして,ベトナムに渡りその後ラオスに移動する。最終的にメコン川の国境を渡りタイに渡る。タイに行かないとラオスも北朝鮮の友好国だけにとらわれると強制送還される。
命がけの脱出である。まずは北朝鮮から中国に移動すること自体が大変だ。容易に川を渡って中国に渡る人たちが多かった時期もあったようだ。現場の監視が厳しくなり脱北の難易度が極めて高い。国境を渡ってもその先には高い山がある。この映画の映像はコロナ前の脱北だ。コロナになった後は中国からベトナムに行くこともできず,牧師のところに脱北の希望がずいぶんと来ていても、なかなか着手できないようだ。
映画の中では,北朝鮮のリアルな街頭映像が何度か出てくる。
本当に貧しそうだ。よく韓国映画で北朝鮮の街路を映し出している映像と大きく変わらない。
もともと朝鮮戦争の休戦後はむしろ南より北の方が豊かだった時代もあった。日本統治時代に,北朝鮮エリアで開発した日本の産業プロジェクトが多く、北朝鮮がそれを無償で継承できたことも影響している。日本統治が朝鮮発展に寄与したことも多い。1970年代後半から,韓国が驚異的な経済成長を遂げる。逆に北朝鮮はソ連の崩壊に伴ってそれまで潤沢だった援助が受けられなくなった。そこで大きな差がついた。北朝鮮の指導者は,ひたすら核開発に向かう一方で,国民の生活は無視されている。
この映画を観て初めて知ったこともいくつかある。中国から大陸を縦断してベトナム、ラオス経由でタイに行って7ヶ月過ごしてから韓国に行くという脱北ルートは初めて知った。あと、金日成主席は当然日本統治下の朝鮮で育ったと思っていた。ところが、幼い頃から中国で育ったので、北朝鮮建国でスピーチする時には朝鮮語が不得手で特訓したなんて話も初めて知った。
ひたすらおかしいのは,脱北している家族の80過ぎの老婆がこの場に及んでもまだキムジョンウンのことを若くして英雄とするスピーチをすることだ。「キムジョンウンの周りが悪い。みんなで国を豊かにしなければならない。」とまで言う。狂っているとしか思えない。一種の宗教みたいなものだろう。北朝鮮では聖書は禁止されているらしい。聖書に載ってるような神話のような話が,北朝鮮でも同じように作られてそれが国民に信じられている。ただ,天皇を神様とした戦前の日本も大して変わらないんじゃないかと自分は感じる。ハイエクが「隷属への道」で語る全体主義の残酷な世界が北朝鮮にはエスカレートして存在する。
この老婆が脱北に成功して韓国で生活しているときの顔立ちは,脱北途中の顔と全く違っていた。いい顔つきに変わった。ただ1つだけ疑問だったのは,数多いブローカーへの報酬が一体どこから出ているのかがよくわからなかった。失敗した事例の時に,脱北させようとした母親とブローカーとの電話のやりとりを聞くと,特殊詐欺に騙されている老人たちを思わせるようなやり取りにしか見えなかった。それでもすがるのであろう。
映画「ビヨンド ユートピア」は北朝鮮からの脱北者が実際に国境を越えるのを追うドキュメンタリー映像である。予告編から大体の内容の想像がついたが,好奇心でみたくなった。監督は数々の映画の編集に関わっているマドレーヌ・ギャヴィンである。
息を呑むようなシーンが続く。目が離せない。
脱北に成功する事例と失敗した事例の両方が語られる。いずれも多数のブローカーが絡んでいる。実にうさん臭い。
必見のドキュメンタリーだ。
ソウルに住む牧師が脱北に関与している。脱北と言うと北朝鮮から国境を越えて中国に行くことだけを想像する。ただ、この牧師は中国からは出禁になっている。脱北に失敗して中国で拘束されると北朝鮮に強制送還される。失敗して拘束された人たちへの当局からの仕打ちは半端じゃない拷問だ。結局,中国に渡った後、車で長距離の移動をして,ベトナムに渡りその後ラオスに移動する。最終的にメコン川の国境を渡りタイに渡る。タイに行かないとラオスも北朝鮮の友好国だけにとらわれると強制送還される。
命がけの脱出である。まずは北朝鮮から中国に移動すること自体が大変だ。容易に川を渡って中国に渡る人たちが多かった時期もあったようだ。現場の監視が厳しくなり脱北の難易度が極めて高い。国境を渡ってもその先には高い山がある。この映画の映像はコロナ前の脱北だ。コロナになった後は中国からベトナムに行くこともできず,牧師のところに脱北の希望がずいぶんと来ていても、なかなか着手できないようだ。
映画の中では,北朝鮮のリアルな街頭映像が何度か出てくる。
本当に貧しそうだ。よく韓国映画で北朝鮮の街路を映し出している映像と大きく変わらない。
もともと朝鮮戦争の休戦後はむしろ南より北の方が豊かだった時代もあった。日本統治時代に,北朝鮮エリアで開発した日本の産業プロジェクトが多く、北朝鮮がそれを無償で継承できたことも影響している。日本統治が朝鮮発展に寄与したことも多い。1970年代後半から,韓国が驚異的な経済成長を遂げる。逆に北朝鮮はソ連の崩壊に伴ってそれまで潤沢だった援助が受けられなくなった。そこで大きな差がついた。北朝鮮の指導者は,ひたすら核開発に向かう一方で,国民の生活は無視されている。
この映画を観て初めて知ったこともいくつかある。中国から大陸を縦断してベトナム、ラオス経由でタイに行って7ヶ月過ごしてから韓国に行くという脱北ルートは初めて知った。あと、金日成主席は当然日本統治下の朝鮮で育ったと思っていた。ところが、幼い頃から中国で育ったので、北朝鮮建国でスピーチする時には朝鮮語が不得手で特訓したなんて話も初めて知った。
ひたすらおかしいのは,脱北している家族の80過ぎの老婆がこの場に及んでもまだキムジョンウンのことを若くして英雄とするスピーチをすることだ。「キムジョンウンの周りが悪い。みんなで国を豊かにしなければならない。」とまで言う。狂っているとしか思えない。一種の宗教みたいなものだろう。北朝鮮では聖書は禁止されているらしい。聖書に載ってるような神話のような話が,北朝鮮でも同じように作られてそれが国民に信じられている。ただ,天皇を神様とした戦前の日本も大して変わらないんじゃないかと自分は感じる。ハイエクが「隷属への道」で語る全体主義の残酷な世界が北朝鮮にはエスカレートして存在する。
この老婆が脱北に成功して韓国で生活しているときの顔立ちは,脱北途中の顔と全く違っていた。いい顔つきに変わった。ただ1つだけ疑問だったのは,数多いブローカーへの報酬が一体どこから出ているのかがよくわからなかった。失敗した事例の時に,脱北させようとした母親とブローカーとの電話のやりとりを聞くと,特殊詐欺に騙されている老人たちを思わせるようなやり取りにしか見えなかった。それでもすがるのであろう。