山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

月と仙丈ケ岳  平成22年5月1-2日

2010年05月05日 | 南アルプス
 平成22年5月1-2日 天候晴れ

 天候に恵まれたゴールデンウィーク、皆様はいかがお過ごしでしょうか?
 当初は鳳凰山から早川尾根に2泊3日で入山の計画を立てていたのだが、狙っていたさそり座と天の川の位置にちょうど月が居て、天の川が写ってくれそうにない。ならば逆にこの月を使って撮影するに良い場所は・・・2年前に行った小仙丈ケ岳からの小仙丈カールを照らす月、さらに仙丈ケ岳に沈んで行く月が良さそうだ。仕事の都合もあって2泊は無理になったので、前日に仙丈ケ岳に行くことに決めた。
 小仙丈ケ岳にテントを張るので、あまり早く行っても登山する人達の迷惑になってしまう。バスは10時仙流荘発で行くことにして、7時過ぎ、甲府を出発し、高速を使わずに国道20号線から杖突峠、高遠を経て仙流荘に入った。9時半に到着したが、目の前をバスが出発していった。バス時間を間違えたのか?と一瞬焦ったが、バス時刻表を見ると出発時間は10時5分、登山客が多くて臨時便が出発したのだ。山梨県の芦安からのバスと違ってこちら側はゲート通過時間の規制がなく、乗客が多いとすぐに臨時便を出してくれてサービスが良い。山梨県側も見習って欲しいものだと常々思うのは私だけではないだろう。この季節はまだバスは北沢峠までは行かず、手前の歌宿(うたじゅく)というところから1時間少々歩かなければならない。このアスファルトの林道が意外と厄介なのだ。登山靴で硬い道を歩くと異様に疲れるのだ。

    まだ葉をつけていない木と甲斐駒ケ岳  南アルプス林道から。

 もともと足は速いほうではないが、林道をテクテクと歩き、まかりなりにも先行していた大ザックを背負う3人組を追い抜いた時、突然声をかけられた。女性の方ははっきり見覚えがあるが、男性は??? 笊ヶ岳でお会いした宮崎さんご一行だったが、旦那さんのほうは少し太られたのか、以前とだいぶ印象が変わってしまった感じがした。本日は北沢峠テント泊だという。きっと大ザックの中はアルコールとご馳走でぎっしりのことだろう。私は先に行ったが、北沢峠で休憩中に3人が追い付いてきた。近況やその後の山行の様子など情報交換したが、この人たちはやはりただ者ではなかった。瑞牆山から雲取山まで5月連休に大縦走、などという山行をやっている。そういえば、長崎の堀川さんたちご一行がそれとは逆コースをこの連休で歩いているはずだ。あのつわものたちは今頃どの辺だろうか?下山後に連絡をとってみることにした。宮崎さんたちとは明日仙丈ケ岳から下山する時にまたお会いする事を約束してここで別れ、私はアイゼン装着して小仙丈ケ岳を目指す。

    樹林帯の中の登り。雪は締まっていて歩きやすかったが、かなりの急登り。

 2年前に来た時は雪が多く、しかもズル雪で足を取られまくり、とてつもなく体力消耗して6時間近くかかってようやく小仙丈ケ岳に到着した。今回はそのときに比べて雪が少なく、何よりも雪が締まっていて足が沈まず、歩きやすかった。それでも、3合目あたりからの尾根道の急登りは、夏道と違ってかなり傾斜がきつく、体力を消耗する。数日前に雪が降ったそうで、前方に大きく立ち聳える真っ白な仙丈ケ岳に圧倒されながら、雪の斜面を一歩ずつ登って行く。1時20分、北沢峠出発し、5合目3時40分、そして小仙丈ケ岳5時40分と、私としてはかなり順調なペースで予定地に到着した。小仙丈ケ岳の一段下に4人のパーティーが一張、そして小仙丈ケ岳には3人の若者のパーティーがテントを張っていた。2年前は私一人だけだったので、何かあった時には心強い。

    雪原の向こうの北岳  久しぶりの間近でのご対面。やはり格好良くて凄い山だ。


    雪の紋章と富士山

 テント設営し終えた頃に、中央アルプスの上に真っ赤な夕陽が沈んでいった。真っ白な雪原を照らす夕陽が美しく、日が沈むまで雪の上に立ち尽くして見入っていた。おそらく、今シーズン最後の雪山になるであろう。

    白い雪原と西に傾く陽  小仙丈ケ岳直下の真っ白な雪原、圧倒される景色。


    雪原を照らして沈む夕陽  左側が仙丈ケ岳山頂。

 テントに戻って夕食をとり、すっかり暗くなった午後8時、再び外に出る。冬の大三角形が仙丈ケ岳に沈んで行く時間だ。ちょうどおおいぬ座のシリウスが山頂近くに沈んで行くところだった。若干霞が出て、星空は鮮明ではなかった。次は10時。今度は北岳側、富士山の左横辺りから月が昇ってくるはずだ。テントの換気窓から外を覗くと、もう月が昇ってきていた。北岳は良く見えているが、富士山は霞の中に沈んでいた肉眼では確認できない。撮影してみると、かろうじてその姿だけは確認できる。手前の雪原を照らして昇る月が美しく、この雪原を入れながら撮影した。

    白き仙丈ケ岳と冬の大三角形  山頂に輝くのがシリウス、オリオン座は半分近く沈んでいる。


    雪原を染めて昇る月  WB日陰で赤い月を強調。


    雪原を照らして昇る月  WB白熱電球で青い月を強調。


    月光照らす仙丈ケ岳  昼間太陽の光で見るのとはまた違う、夜の女王の神秘的な美しさが漂う。


    月光照らすテント場の情景  (テント場ではありませんが・・・テント無いと凍死してしまうので。)

 ここで一端眠り、次に起きたのは3時半。風が強くてテントがバサバサと揺れ、熟睡したとは言えないがとりあえずは寝た。薄明の時間、今度は月が仙丈ケ岳に傾き出す。薄明の青い空に浮かぶ月と真っ白な小仙丈カール、これが今回描いていた絵だ。心配していた雲もなく、絶好の条件でこの絵を見ることができた。そして日の出、真っ白な小仙丈カールをピンク色に染めながら日が昇った。南アルプスの女王と呼ばれる美しいカール地形の仙丈ケ岳、圧倒される大きな山容と真っ白な雪、そしてピンク色の化粧と月のアクセサリー、言う事無しの素晴らしい情景を目にする事ができた。

    月光と南アルプスの女王  薄明の青い空と月、白いカール、描いていた絵そのまま。


    頬を染める女王と月のアクセサリー


    日の出


    朝の高峰たち


    雪屁張り出す雪原  隣にいた3人組はもう出発している。
  
 ここから山頂までは1時間半くらいで行ける。私の横にいた若者たちは農鳥岳を目指すらしく、朝6時にはもう出発していった。山頂まで行く時間は十分にあったのだが、目にした情景にもう十分満足し、この日は山頂に立ち寄らずにテント撤収し、速攻で下山した。歌宿のバスは確か10時だったはず。7時10分、下山開始。雪の斜面を早足で駆け下りるように下山する。3合目の下あたりで宮崎さんたちとすれ違い、再び軽く山談義して別れる。北沢峠8時45分到着、装備をはずして小休憩し、9時に北沢峠出発、辛い林道歩きだ。早足で歩いたが、歌宿に到着したのは10時5分、バスに乗り遅れた~、と思ったが、何故かまだバスが止まっている?? 10時は北沢峠のバス出発時間で、歌宿は10時15分発だったのだ。ラッキー! 今回は山の神様が祝福してくれたようだ。

    嗚呼、愛しき南アルプスの山たちよ!  素晴らしい景色をありがとう。山の神様に感謝。

 甲府盆地の空はもう春霞で星空が見られるような状態ではなくなってしまっている。しかし、標高2800mのところではまだ澄んだ空気できれいな星空が見られる。いつまでもこんな空が見られる環境であって欲しいと願う。
コメント (7)
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