山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

八ヶ岳稀少植物調査(2日目) 赤岳からキレット、権現岳を経て天女山へ

2011年07月12日 | 八ヶ岳・秩父山系
 平成23年7月2-3日

 赤岳の南に位置する権現岳、さらにその向こうの南アルプス。この山々の上に流れる天の川を期待していたのだが、赤岳山頂小屋の夜は一晩中雲が巻き真白な夜だった。夜10時に外に出てみたが何も見えない。

    赤岳山頂で記念撮影。これからキレットを超えて権現岳へ。

 朝は4時に目が覚めた。あたりがもう明るくなり始めている。外に出た人たちが「何も見えないよ」と会話している声が聞こえる。日の出時刻の4時半に起き出して外に出てみるが、霧で視界が20mほどしかない。日の出も全く見えない朝だった。朝食は5時半からだったが、私は注文せずに自炊で朝食をとる。6時、小屋を出発。赤岳山頂にある標柱のところで3人で記念撮影をした後、キレットを目指して下り始める。霧で視界が悪い中をただひたすら鎖とハシゴの連続する急斜面を下りる。途中にはチョウノスケソウやイワウメの群落、咲き始めたミヤマシオガマ、ミヤマキンバイ、ハクサンイチゲなど、岩の隙間にたくましく咲いていた。

    朝露に濡れるチシマアマナ


    霧に霞む八ヶ岳のお花畑


    真行寺尾根分岐部。霧に霞む。


    チョウノスケソウ群落  この花は傷みやすく、新鮮な状態を撮るのが難しい。


    シコタンソウ


    霧のキレットを下る。花は咲き始めたばかりのミヤマシオガマ


    鎖とハシゴの連続。左腕の疲れがしだいに増してくる・・・


    イワウメ大群落


    キレットのお花畑。ミヤマキンバイ、キバナノコマノツメ、ミヤマシオガマ、ハクサンイチゲなど。ミヤマダイコンソウはまだ葉っぱだけ。


    ミヤマクロユリ

 キレット小屋のあたりまで下りたところで一瞬青空が見え、赤岳が全容を現した。鋭く尖った岩峰がいくつも立ち並ぶその様相はいつも見慣れている赤岳とはずいぶん違って見えた。下りてくる最中は霧に巻かれて何も見えなかったが、振り返って見るとどこをどうやって下りてきたのだろうか。

    一瞬空が晴れ、全容を見せた赤岳。いちばん左が山頂。


    霧に霞む旭岳。このあたりで左腕が攣る。


    旭岳への崖のような登り。

 しばし休憩してツルネのピークに向うが、キレットの鎖とハシゴで左腕が相当疲れていた。痛みこそ軽いが、筋性疲労で力が入りにくくなってきていた。ツルネを越えて進むが、このあたりは至って穏やかな普通の登山道だ。しかし、旭岳に近付くにつれてまた道は険しくなり、急斜面の岩場を登ったり鎖があったりとアルペンルートに変わる。そして旭岳目前で休憩した際に、遂に左腕が攣ってしまう。頚椎症のために筋力だけでなく持久力が相当落ちてしまったようだ。腕をマッサージして再び登る。旭岳への崖登り、さらに岩場と鎖場が続き、最後に60段のハシゴが待っていた。途中で何度も左腕をブラブラさせて休みながら苦手なハシゴを登り、ようやく権現岳に到着した。どうやら今の左腕の状態では鎖・ハシゴ・岩場は3時間くらいが限界のようだ。
 先に到着していた2人には申し訳ないのだが、権現岳でゆっくり休ませてもらい、腕を十分にマッサージして出発する。あとは下りの鎖場が少しあるだけで、三ツ頭から天女山へのルートは普通の登山道だ。

    権現岳の長いハシゴ直下、ミヤマシオガマ満開。


    ようやく着いた権現岳。あとは下るだけだが、ここから先がまだ長い。


    権現岳山頂付近に咲いていたミヤマキンバイ


    ミヤマクロユリ群落


    霞む権現岳山頂と神社

 左腕を使わないでいると次第に腕の疲れがとれてきて、ようやく花を探す余裕が出てきた。登山道脇を首を振り振り歩いているとピンクの可愛らしい花、カモメランを発見した。さらに先頭を歩いていたAさんがとんでもないものを発見。ランはランだが、葉緑素を持たない腐生植物のラン、ヒメムヨウラン(姫無葉蘭)だ。初めて見たし、こんな植物がこのルートにあるとは思ってもいなかった。絶滅危惧種にこそ入ってはいないが、出会うことはきわめて困難といって良いだろう。三脚を出して存分に撮影させてもらった。

    カモメラン発見。山の中にも咲くのを知った。


    腐生植物ヒメムヨウラン。もう2度とお目にかかれないかもしれない。

 ひたすら天女山に向って下り、3時ごろに天女山到着。ここから先がまた大変で、八ヶ岳遊歩道は車を止めたところまで7kmほどあり、しかも緩い昇りだ。2人について行けず、またしても先に行ってもらうことにした。ほぼ中間点にある水場のところで2人は待っていてくれ、ここで最も健脚のKさんが先に行って車を回収し、美が森の駐車場まで迎えに来てくれることになった。私はしばし休憩させてもらい、ここで荷物を軽くすべく、カップソバを食べる。

    やっと到着、天女山駐車場。でもここから車まではまだ2時間以上かかる・・・

 遊歩道を歩いて行くと地獄谷へ行く林道に出くわし、この林道を歩いて美が森駐車場に着いた。10分と経たないうちにKさんが車でやって来た。歩けばまだ40~50分はかかるだろう。本当に助かった。
 初めて越えた八ヶ岳キレット、想定以上に大変な行程だった。首を故障して以来、いちばん過酷なコースとなり、現在の状態での限界も見えてきた。イチヨウラン、カモメラン、ヒメムヨウランという稀少種の収穫があったが、自分自身の体の限界がわかってきたことも大きな収穫だった。
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八ヶ岳稀少植物調査(1日目)、県界尾根から赤岳へ 平成23年7月2-3日

2011年07月12日 | 八ヶ岳・秩父山系
 平成23年7月2-3日

 山梨県山岳連盟では毎年山岳レインジャーと称して山梨県の稀少高山植物の調査を行なっている。私の所属する嶺朋クラブもその活動に参加しており、年3回のレインジャー活動に協力している。今回はその初回活動、もともとは6月11-12日の予定だったのだが悪天候のためにこの日に変更となった。決まったルートの指定は無いのだが、山梨県側のルートという規定がある。そこで今回は県界尾根を登って赤岳山頂小屋に1泊、翌日キレットを越えて権現岳に登り、三つ頭を経て天女山に下山。そこから八ヶ岳遊歩道を歩いて県界尾根の登山道入り口まで戻るというロングコースだ。果たしてこの左腕でこのコースを行けるのか?一抹の不安がよぎるが、それ以上に心配なのは同行する2人の足が速いことだ。おそらくは着いて行けないだろう。
 10時、サンメドウズスキー場の奥にある県界尾根入り口に集合する。既に駐車場はいっぱいで路肩に車を止めて出発する。しばらくは林道のような広い道を歩き、県界尾根の看板のところで右に曲がって尾根の側面を登る。急傾斜を1時間ほど登ると野辺山側の道と合流し、小天狗に到着する。時間は12時、ここまではひとまず順調だった。

    県界尾根登山道入り口


    急斜面を登る


    木の名前は知らないが、秋になるとおいしいグミの実が成るそうだ。


    尾根の分岐。野辺山側の登山道と合流する。

 小天狗で昼食をとり、さらに進む。ところどころ展望の開ける場所があるが、この日の山は雲におおわれて向いに見える真行寺尾根の下部が少し見えるだけだった。尾根の登山道脇にはコイワカガミやミツバオウレン、ゴゼンタチバナ、キバナノコマノツメなどが咲いていた。予想通り、私は2人のペースについて行けず、電話連絡をとりながら2人には先に行ってもらうことにした。小屋の食事は5時か6時ごろ、それまでに到着すれば良いので、私のペースでも十分に間に合うはずだ。

    ところどころ展望が開けるが、この日は雲がかかって山は見えず。


    登山道脇に咲いていたゴゼンタチバナ  4葉と6葉があるようだ。

 標高2,430mの大天狗には13時50分に到着。この頃にはもう2人の姿は全く見当たらない。眺望を期待していたのだが、大天狗の山頂は木が邪魔になってあまり良くなさそうだった。(霧で景色見えなかった。)登山道周辺にはミツバオウレンとコイワカガミの群落が広がっており、白とピンクの絨毯になっていた。

    大天狗山頂  眺望はいまひとつ。


    大天狗のコイワカガミ群落


    大天狗のミツバオウレンとコイワカガミ群落  白とピンクの絨毯。


    ヤマザクラがまだ残っていた。


    霧に霞むダケカンバの森

 この先がこのルートの核心部となる。傾斜がきつくなり、森林限界を超えるとそこには足場の悪い鎖場が待っている。足をかけるところが少なく、鎖にぶら下がるようにして登るのだが、その途中で稀少植物のムシトリスミレを発見。鎖を抱え込みながら体を固定してなんとか撮影、2株見つけた。さらにその上の大岩にはいろいろな花がついていた。コイワカガミ、ミヤマキンバイ、ミヤマダイコンソウ(まだ葉だけ)、イワウメ、ハクサンイチゲ、チシマアマナ、そしてまだ花の咲かないムシトリスミレなど。長野県側と違って歩く人が少ない山梨県側ルートだけあって、手付かずでそのまま咲いているという感じだった。

    鎖場から県界尾根を振り返る。


    鎖場のところで見つけたハクサンチドリ


    希少植物ムシトリスミレ


    大岩のところに咲いていたチシマアマナ

 その先も鎖場が続くが、今度は傾斜が緩いので難無く登れる。左手は痛むには痛むがあまり酷くは無い。そしてようやく赤岳が見渡せる県界尾根上部に出たのは午後4時だった。もう2人は小屋に到着している頃だろう。見上げる赤岳は鋭く切り立っていて、今までに見てきた赤岳とは少し様相が違う。三脚を出して撮影準備をしているとあっという間に雲に巻かれて赤岳は消えてしまった。20分ほど待ったがとうとう姿を現さず、あきらめて山頂小屋目指して再び登り始める。

    鎖場の上部から見上げる赤岳  鋭く尖って格好良い。(あの上が山頂ではない)


    鎖場と赤岳山頂小屋  もう少し、されどまだ遠い。花はイワヒゲ。


    最後の登りの途中から見る横岳と赤岳展望荘


    小屋のすぐ下にあったミヤマシオガマはまだ蕾がついたばかり。モヤモヤした綿毛が可愛らしい。

 途中で電話連絡が入り、夕食は5時半からだという。十分に間に合う時間ではあるが、山頂直下のルートもまた大変な道で、ハシゴと鎖が何本も続く急傾斜の道だった。ひたすら休みながら、明日に疲れを残さないように登り、5時15分、ようやく山頂小屋に到着した。アルペン気分満点の面白いルートだったが、最後の登りはちょっときつい。
 さて、このルートで見つけた目玉の稀少植物は、ひとつは前述のムシトリスミレだが、もうひとつ、イチヨウランを発見した。イチヨウラン自体はおそらくは探せばあるのだろうが、ほとんどが1~2本ポツポツと咲く程度だ。しかし、この株は7本がかたまって咲いていた。こんなにたくさん並んでいるのを見たことがある人はほとんどいないのでは?この日一番の収穫だった。(2日目に続く)

    イチヨウラン(一葉蘭)


    7株も固まって咲いていた。こんなにたくさん咲いているのを見たことがありますか?
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