後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

ブログ文化(4)「菊と刀」の日本人の行動規範は、ブログの隆盛に影響を受けない

2008年06月29日 | 日記・エッセイ・コラム

「菊と刀」は文化人類学者、ルース・ベネディクトによって1946年に出版された不朽の名著である。学問的客観性を基盤として日本文化と日本人の本質を解明している。

戦後この本を読んだ日本人は驚愕した。敵国アメリカが、これほど深く日本人を研究していたことに。

日本人の性質は菊のような優美なものを愛する一方で、刀の殺伐を大切にしている複雑な人々である。

そして日本人の行動を律するものは「恥の文化」であると結論している。

この本の学問的独創性は素人の日本人にも理解できる。学術書が素人にも分かる。そうのように書ける人は天才である。(凡庸な学者は「素人に理解できない一般向けの本」を出版する)

本の内容は多岐にわたり、深淵であるが、日本人の行動規範に関する部分のみを要約すると以下のようになる。

他人の目から見て恥ずかしいような行動は絶対にしない。武士道を大切にし、封建時代から現在へ続く「階級性」や生活習慣を守ることが美徳である。

冠婚葬祭に際しての日本人にとっては、恥ずかしくない程度の金額を支払うことが重要だ。金額と自分の立場のバランスを考える。適切でなければ恥である。発言は分を超えていないか?目立つ意見は言わず、曖昧に微笑んでいれば無難にことがすむ。他人から批判されるようなことはしない。すべての行動は、こんな判断基準で決める。

社会生活における人間関係では上司は部下の世話をし、部下は上司へ忠義を尽くす。たとえ、上司が間違っていても、敢えて自分の意見は言わない。そういう人が会社の中で尊敬される。後輩は先輩へ忠義を尽くし、若者は老人へ敬意を払う。こうしていれば他人から笑われない。戦争中には天皇陛下を神と思い、自分の命をささげる態度を取れば、それが最高の正義であった。

日本人の全ての行動規範は「他人から見て恥ずかしいことはしない」、「他人から批判されることはしない」という基準で決まる。そして、本音と建前は別だ。本音は人前では絶対に言わない。

ルース・ベネディクトが研究の対象として、アメリカ本土で会った当時の日本人捕虜は上記のような行動規範で行動していた。

1936年生まれの筆者のまわりにいた日本人は、皆な、まさしくこのように行動した。義理人情を大切にして、他人様に笑われないようにしなさい!と言われて育った。ルース・ベネデクトの観察は客観的で正確な結論を出している。

何故、日本へ来たことの無い彼女がこんなにも明確に日本人を活写できるのであろうか?吃驚した記憶がある。このような日本人の行動規範が消滅したのだろうか?

いささか長くなったので、その解答は続編で出す。(続く)