写真は悠々とハンガリーを流れるドナウ河(Wikipedea,ハンガリーより引用)
盛田常夫氏の新刊 「ポスト社会主義の政治経済学」 がこの12月中に日本評論社より発刊されます。盛田常夫氏はBYOOLというSNSの会員でネット上の友人です。
盛田氏はハンガリーに何十年も住んでいて社会主義体制が資本主義体制へ変革する様子をハンガリーの内側から観察し、研究を深めてきました。先日、一時帰国されて講演会を開催しました。講演の内容はハンガリーの社会の変化と実生活の変化を具体的に説明したもので興味深い内容でした。
一国の社会体制が共産主義から市場原理にもとずいた資本主義へ変革することは容易な事ではありません。我々日本人の想像を絶する混乱と不幸な出来事が起きます。それをハンガリーはどの様に克服しつつあるのでしょうか?特に昨年以来の金融危機のダメージが大きかったのです。東ヨーロッパといっても国々によって体制変換の様子が大きく異なるようです。
そのようなハンガリーの体制変換を理論的に考察し歴史学的な専門書にまとめ上げた力作です。お問い合わせは日本評論社の方へお願いいたします。なお、BYOOLというSNSへ入会すると送料無料で自宅へ送付してくれるサービスが使えます。このSNSは良質な会員が揃っていますので、この際ご入会することをお勧め致します。(終り)
補遺:「ポスト社会主義の政治経済学」の内容・目次
1.体制転換の哲学
国民経済計画の不可能性 体制転換(移行):何から何へ 配分と交換 社会の自己崩壊 社会主義は自立した社会構成体か アポトーシス型社会とネクローシス型社会 社会転換のアポリア 「移行」と「転換」 社会転換のイデオロギー ポスト社会主義のイデオロギー
2.ポスト社会主義の経済システム-国家資本主義と国庫資本主義
「漸次的」改革か、「急進的」改革か 体制転換のアポリア 資本の原始的蓄積 直接投資による再民営化 体制転換のエポック 国庫資本主義:生産と分配の非対称性 経済システムは収斂するか
3.借り物経済とゲストワーカー現象
借り物経済 資金調達と直接投資 産業分野による差異 ゲストワーカー現象:多国籍企業との共生現象
「甘え」の構造-体制転換貴族 借り物経済のマクロ分析
4.経済危機下の中欧経済-ハンガリー危機を分析する
危機の勃発 危機の構造 危機の原因 危機のコスト 危機の効用 危機の将来
5.ポスト社会主義の政治システム-オポチュニズムとポピュリズム
戦時のイデオロギーと平時のオポチュニズム 「左翼」-「右翼」分類の陳腐化 政治倫理の欠如 ポピュリズム 民族主義 遅れてやってきた政治の転換
6.歴史評価と統治の正統性
ホルン元首相叙勲騒動 ホルンの経歴と役割 平和的移行と統治の正統性 歴史的偶然と個人の役割 ナジ・イムレ処刑の評価 正統性の形式と実体
7.独裁権力下の個人と倫理
政治的転換の二つの型 「タブー」をめぐる抗争 治安警察との関わり 映画:Taking Side(対峙) 治安警察と粛清事件 ノエル・H・フィールド事件からライク粛清へ 狂気と化すスターリン主義 56年動乱への道 「父と子」
8.ポスト社会主義の社会分析-役人主権の変化と継続
「コメコン商品」:安かろう悪かろう 医師主権 役人主権 「コメコン事務所」 情報伝達の欠如と顧客軽視 公営企業の仕事振り 規律を欠く国会、けじめのないエリートたち
9.ポスト社会主義のイデオロギー:ネオ・リベラリズム
旧体制を引き摺る医療制度 「1ユーロ」をめぐる国民投票 複数保険制度-医療保険民営化構想 「コーヒーと紅茶」:政府案への批判 映画:Sicko 複数保険イデオロギー
10.コルナイ経済学をどう理解するか
経済学は科学か、それともレトリックか コルナイの理論的軌跡 レトリックとアナロジー 理論と政策
コルナイ経済学の特質: 理論か、それともイデオロギーか 結びに代えて__