1992年に佐世保市にハウステンボスがオープンしました。
オランダのベアトリクス女王が住んでいたハウステンボス宮殿(森の中にある宮殿)を忠実に再現、建設し、その周囲に中世オランダのレンガ造りの町並を再現した広大なテーマパークです。
運河の風景と建物の風景がオランダなのです。11年前にも訪れています。風景は変わりませんが、内容は大きく変化していました。大人向けの雰囲気が無くなり、子供向けのキャラクターや子供連れが喜ぶ店が沢山あるテーマパークになっていました。
話は飛びますが、福島県の山の奥に「ブリティッシュ・ヒルズ」があります。中世イギリスの建物と内部の装飾や家具を展示し、イギリスの料理やお菓子を供する店もあります。中世の領主の館の内部に入り家具や生活用具にさわり、図書室では中世のイギリスの羊皮紙の表紙の部厚い本を手に取ることが出来ます。このブリティッシュ・ヒルズには昔のイギリス文化が濃密に詰まっていて、それを実感できるのです。
昔の生活文化に関するイギリス人の主義、主張が感じられるのです。
それに比較するとハウステンボスにはオランダの文化はこうだという主張が感じられません。
運河と建物の風景だけは忠実に再現されています。しかしそこには教会がありません。政治の舞台になった市庁舎もありません。豪華な商工組合の会議室もありません。有名な芸術家の生まれた家もありません。ハンザ同盟関連の建物もありません。
森の中の宮殿に入るとまず売店と喫茶室があり、階段を上ると少し当時の衣装や室内が展示されています。フランスを中心にした香水の展示会もあります。説明文には「宮殿の外観を忠実に再現」とありました。
ハウステンボス開業以来、私は時々オランダ特有の文化とは何かと考え込んでいます。江戸時代を通してオランダは長崎へヨーロッパ文化を注ぎ込みました。
しかしそれはヨーロッパ全体からの実用的な文明でした。オランダ特有の文化は何だったのでしょうか?別に実用的な文明を軽く考えているわけではありませんが、不思議な気分です。せめて当時の絵画をさりげなく展示してある建物があっても良いと思いました。オランダへがあちこちから輸入したガラスや陶器を集めた展示館はありますが、独自の文化を示すものが無いのには失望しました。
今回、再びハウステンボスを訪れ6時間にわたって歩き回りました。
ホテルヨーロッパは11年前に比べて欧米人のスタッフの数が減り、豪華さも薄らいだ感じがします。
売店にある本、「18年連続の赤字を1年で解消した」の著者が腕を振るった結果でしょうか。
アムステルダム広場ではイタリアの歌手が唄い、サキソフォンでアメリカの流行歌を吹いています。その前のテーブルで、私はイギリスのチップス・アンド・フィッシュでアサヒの生ビールをゆっくり飲み幸せな時間を過ごしました。
オランダ料理を肴にオランダから直輸入のハイネケン・ビールが飲みたかったのですが、一切ありません。何度か尋ねましたが、ボーイさんたちはイタリアンやフレンチ店を紹介してくれます。そして佐世保バーガーという巨大なハンバーガーを勧めるのです。土産物を探しましたが世界中から集めてめてあり、オランダのものはワッフル、チーズと木靴しかありませんでした。
広大なハウステンボスの名誉のために言えば、その中にある数多くの屋内の見世物は、その独創的な仕掛けや、感動的な演出が驚異的です。非常に優れています。それらはアメリカ的で実に楽しいものです。
騒々しいジェットコースターや危険な乗り物がありません。観覧車とメリーゴ-ランドだけはあります。静かで良いです。家内と6時間も歩き回ってもまだ時間が足りないくらいでした。
それにしても、オランダを感じさせるものは奥の宮殿の外観と運河と建物以外あません。
ハウステンボスとはそのような広大なテーマパークなのです。そのテーマは運河の風景。建物の景観。質素な森の中にある宮殿。そして1600年にオランダから来航したデ リーフデ号の姿。などなどです。そのような風景を撮った写真を以下にお送りいたします。ようするにテーマはオランダの風景なのです。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)
・中心にある高いドムトールン塔からの俯瞰写真です。ハウステンボスの四分の一以下しか写っていません。
・運河にある船に乗ってハウステンボスを巡りました。
・上がデ フリーデ号を再現した帆船です。
・上のようにあちこちに運河が巡っています。
・上がオランダの女王が住んでいた森の中の宮殿です。ドイツやフランスに散在している宮殿のほうが豪華な感じがします。
チューリップ畑の向うに大きな風車が見えます。夕方の農村風景です。