後藤和弘のブログ

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「トランプ氏は労働者階級の本音を公言し大統領へなる?」

2016年02月21日 | 日記・エッセイ・コラム
アメリカの大統領選挙の様子をインターネットで調べていると日本の新聞には出ないアメリカ社会独特の事情が掲載された記事があります。
昨年の日本のマスコミはトランプ氏は年が明けて2月になれば人気は急落して消えて行くと書きたてていました。
しかし2月の下旬になっても彼の支持率は下がるどころか増加しているのです。
これはどうした訳でしょう?
今日は2つのことを示したいと思います。それはトランプ氏を支持している人々の階層と、もう一つは彼のスローガンと公約の具体的な内容です。
アメリカの中央で活躍する政治家は高学歴で教養もあり、各州の知事などの経験者が多いと言われています。彼らのことを「エスタブリッシュ」と呼び、政界の成功者です。
それの対極にあるのが学歴の低い労働者階級です。しかしそれなりの年収があり生活には困っていない階層です。これを「中間保守派層」などと呼ぶようです。
オバマ大統領は高学歴で教養もあるエスタブリッシュです。その階層がアメリカを指導して結果、アメリカが衰退し、ロシアや中国にしたい放題をされているのです。
そのように考えるのが「中間保守派層」です。トランプ氏の選挙スローガン、「アメリカを再び偉大に」はこの中間保守派の胸を打つのです。
この事情を昨年、明快に解説したBill Schneider氏の文章の抜粋を以下に示します。
(1)労働者階級と高学歴エリート層の対立だ;Bill Schneider著
(http://jp.reuters.com/article/column-us-presidential-election-trump-idJPKBN0TR0O120151208 )2015年 12月 8日

現在、米国の政治において、われわれが目にしているのは階級闘争だ。だがそれは、民主党指名候補のサンダース上院議員が恐らく理解しているような、労働者階級と1%の最富裕層の対立とは異なる。これは、労働者階級と高学歴エリート層の対立だ。実際のところ、世界で最も裕福な一人であるトランプ氏がその急先鋒に立っている。
トランプ氏を支持する人たちを特徴づけているのは、イデオロギーでもなければ、年齢でも性別でもない。それは教育だ。CNNによる最新世論調査によると、共和党を支持する大卒有権者の間では、トランプ氏の支持率はわずか18%で4位だった。一方、大学を出ていない有権者の間では同46%で、2位以下に大差をつけて首位に立っている。
米国では現在、裕福であればあるほど共和党に投票する可能性が高くなっている。一方、学歴が高いほど民主党を選ぶ可能性が高い。こうした傾向は前回の大統領選でも見られ、共和党候補で実業家のミット・ロムニー氏対高学歴なオバマ氏という対決だった。

トランプ氏は白人の労働者階級の支持を集めているが、同氏は彼らの経済的関心にではなく、価値観に訴えかけている。
トランプ氏は反オバマ路線を行く。2012年にはオバマ大統領が米国生まれではないとの主張を繰り返し、大統領の出生に関して疑義を唱えた最初の共和党候補だった。
トランプ氏の支持者にとって、オバマ大統領は最も鼻に付くインテリとして映る。
オバマ大統領とトランプ氏は異なる知性を象徴している。つまりそれは、学術とビジネスという2つの違った世界の知性である。米国民はどちらを称賛するだろうか。
米国では、富に対する怒りよりも教育に対する怒りの方が根強い。
特に、高学歴のエリート層がリベラルな文化的価値観を強く主張するようになってからはその傾向が強い。
トランプ氏ほど政治的中立性に欠けた人はいないだろう。
銃乱射事件の容疑者に関する疑惑について、一部の人は人種差別を懸念して通報することを怠ったと同氏は主張。「政治的な中立性を気にするあまり、われわれは自分たちがしていることをまったく分かっていない」と嘆いている。・・・・以下省略。

この解説は長文ですが全文を読むとトランプ氏を支持す人々が意外に多いのではないかと考えられるのです。
高学歴で教養のある中央政治家を一般大衆は嫌っているのです。アメリカが衰退して行くのはこの教養のあるリベラルなオバマ大統領のせいだと思っているのです。
これではトランプ氏の支持率はますます増加する恐れがあるのです。
それでは彼のスローガンと公約はどのようなものでしょうか?

(2)スローガンと公約
(http://theplatnews.com/p=318 )2015年12月10日
選挙スローガンは「アメリカを再び偉大に」です。アメリカ人なら拍手喝采したくなります。
そして公約は大きく5つ挙げています。
1、米中貿易の改革
中国の人民元切り下げを止めさせ、環境基準や労働基準を改善させる。また知的財産保護やハッキングに対して厳しく対処する。「中国はアメリカの雇用とカネをかすめ取っている」と言い放っている。
2、退役軍人省の改革
退役軍人省の首脳部を総入れ替えし、退役軍人の医療制度を変革する。具体的には、退役軍人の病院での待ち時間を減らせるように仕組みを変え、増加する女性退役軍人の医療充実のため、女性医療を専門とする医師の数も増やすつもりだ。またオバマケアは大失敗だとし、自由市場原理で動く医療保険計画を提案している。
3、税制の改革
年収2万5000ドル(約300万円)未満の人の所得税を免除する。法人税率を15%引き下げ、多国籍企業が海外に滞留した所得は税率10%で国内に還流させることができるようにする。最低賃金の引き上げには反対し、労働コストの低い海外に移転した製造業の雇用を米国に戻すべきだとしている。
4、武器の所有権利
銃規制強化に反対し、銃購入時の身元調査の範囲拡大にも反対している。また銃乱射事件を減らすために精神医療に投資すべきだとしている。
5、移民の改革
オバマ政権が大統領令で導入した移民制度改革を撤廃し、数百万人に上る不法移民を強制送還する。ムスリム系米国人のデータベースを強化し、モスクを監視すべき。米国とメキシコの間に「大きな壁」を建てる(トランプ氏は以前からメキシコ人を強姦犯などと罵倒している)。

以上の5つの公約を見ると彼は排外主義的な思想が強いことが分かります。
ですから仮にトランプ氏が大統領になった場合、他国との関係は大きく変わると思われます。
現在の欧米諸国ではテロや移民に仕事を奪われる恐れや不安が高まっています。
トランプ氏はこうした国民の不満を率直に代弁している存在なのです。
実際、白人中間層を中心にオバマ政権の難民・移民受入政策や対ISへの対応に不満が高まっています。この状況を一挙に解決すると言うのがトランプ氏なのです。
これが人気を集めている大きな理由の一つではないでしょうか?
トランプ氏は早晩、失速するのか、このまま独走を貫き大統領になるのでしょうか?米国人はどちらを選ぶのでしょう?日本へも大きな影響があるので心配です。
今日の挿絵代わりの写真はドロドロした政治世界をいっとき忘れて晴れ晴れした気分になるようにとヨットの風景写真をお送りいたします。先日三浦半島の葉山マリーナと佐島マリーナで撮りました。

それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈りいたします。後藤和弘(藤山杜人)