国際関係は実に複雑です。関係する国々の経済力や軍事力だけでなく国内政治の事情や国民感情によっても左右されるのが普通です。
昨年まで長い間、日韓関係の懸案だった慰安婦問題がウソのように消えてしまいました。日韓米の軍事同盟の邪魔になるのでアメリカが韓国と日本へ働きかけ一件落着したと言われています。
この一件落着の前に、韓国の朴槿恵大統領が北京の習近平国家主席を訪問し親密ぶりを見せました。
中国が伊藤博文を暗殺した安重根の記念室をハルピン駅に整備したのです。その上、上海にある朝鮮亡命政府の建物も整備したのです。日本が朝鮮を併合した時に、それに抵抗した李承晩たちが上海に逃れ亡命政府を作った時に使っていた建物です。
北京を訪れ習近平国家主席に大歓迎された朴槿恵大統領が遠路わざわざ上海まで行って朝鮮の亡命政府の建物を訪問し中国へ感謝の意を表したのです。
大げさに言えば韓国はすっかり中国に取り込まれてしまったのです。
この行動を黙認していたアメリカには中国が韓国の働きかけで北朝鮮の暴走を止めるかも知れないという思惑もあったとも言われています。
ところが朴槿恵大統領の北京訪問と上海訪問の後で北朝鮮は水爆実験と人工衛星の打ち上げをたて続けに行ったのです。
北朝鮮は中国の意見を一切無視して水爆実験と人工衛星の打ち上げを実行したのです。そして、北朝鮮の軍事力が韓国よりも優位にあると誇示したのです。
中国が北朝鮮に影響力が無いことが明らかになって怒ったのは朴槿恵大統領です。頼りにしていた習近平国家主席が何も出来なかったのです。
日本のマスコミによると、朴槿恵大統領は非常に感情的になり、中国を憎み始めたことになっています。
事の真偽は私には分かりませんが、ここで冷静に、そして客観的に中国と北朝鮮の関係を考えてみましょう。
北朝鮮と中国はお互いに大使館を設置していて常に外交交渉をしています。アメリカも日本も韓国も北朝鮮には大使館がありません。正式な外交ルートが無いのです。ですから北朝鮮へ何か意見を言うとすると中国に頼み伝えて貰います。勿論隠れた交渉ルートはあるでしょうがそれらはどうも無力のようです。
このような状況では中国は北朝鮮をアメリカ、日本、韓国との外交交渉に利用するのは当然です。なにせ北朝鮮と話が出来るのは中國だけなのです。北朝鮮は中国の外交の有力な切り札として使えるのです。
ですから北朝鮮が中国の言うことを聞かない不肖の末弟でも中国は絶対に手放しません。
中国と北朝鮮はともに共産党独裁の国です。欧米諸国には分からいようないろいろなルートで緊密につながっていると考えられます。
ですからこそ中国は北朝鮮への制裁措置に反対なのです。
私は1980年代に何度か遼寧省に行ったことがあります。そこは北朝鮮に近い中国の東北地方です。そこに朝鮮自治区が沢山あるのです。その自治区の多くは北朝鮮系だと思うのが自然ではないでしょうか。
日本に在住する在日の人々も韓国系と北朝鮮系と分かれているのです。
話は飛びますが私共がよく散歩した小平市の玉川上水の傍には立派な朝鮮大学校があり多くの大学生がスポーツに興じています。それを見る度に、ああ、日本は自由な民主国なのだという感慨をおぼえます。
話はそれましたが、今日主張したいことは、「中国の言うことを聞ない北朝鮮でも、中国は絶対に手放さない!」ということです。
それは中國にとってアメリカ、日本、韓国、そしてアシアン諸国との外交交渉のとき利用できる「切り札」なのです。
勿論、「切り札」としての有効度は問題の性質によって左右されることは当然です。しかし韓国にとっては常に有効な切り札ではないでしょうか。困った問題です。
今日の挿絵は記事の内容とは関係ありません。昨日行った多摩センター駅前の三越の花売り場で撮った花の写真3枚とその前の商店街の風景写真2枚です。商店街の色彩が幼児の遊園地のようなので吃驚して撮った写真です。商店街も時代によって変わっていくのですね。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈りいたします。後藤和弘(藤山杜人)