仕事を止め引退すると時間が潤沢にあります。そこで日本のあちこちへ旅をすることにしました。何処に行っても旅館やホテルが立派で快適です。しかし地方や離島に行き注意深く眺めていると過疎化している所が多いのです。無残な廃屋が目につきます。そんな風景を見ると胸が潰れる思いがします。
過疎化は便利な都会へ移住するから起きるのでしょうか。故郷や親しい人々と別れるのが悲しくないのでしょうか。日本人の精神文化が変わってしまったのでしょうか。
今日は地方や離島の過疎化にまつわる問題を考えてみたいと思います。
さて私は山梨県北杜市の甲斐駒岳の麓に小屋を47年間持っていました。周囲には牧場や田畑がある農村です。47年間のあいだに、その農村が次第に過疎化して行くのです。若者が都会へ出て行って残った高齢者も次第に旅立っていきます。47年ほど前までは集落の家々にシバザクラが美しく広がって咲いていましたが、過疎化とともに消えて無くなってしまいました。村のよろず屋も店仕舞いしました。悲しい地方の過疎化です。
常に都会に住んでいる人々にとっては、そのような地方の過疎化の現実が分りません。しかし一歩農村や山村地帯へ行くと地方は活気が無くなっているのです。以下に写真を示します。今日の5枚の写真は全て自分が撮った写真です。
1番目の写真は私の小屋の上にある花畑です。年老いた農婦がまだ手入れを続けています。
2番目の写真は八ヶ岳の麓のソバの畑です。過疎の進んでいる地域です。
よく農村の若者が都会に出るのは就職口が地元に無いからだと簡単に言っている人がいます。それも理由の半分です。
しかし、もう一つの大きな理由は農村や山村では若者の個人の自由を認めない雰囲気があるからなのです。若者は地元の小学校や中学校、あるいは高校で個人の自由と平等が一番重要だと教わります。しかし住んで居る田舎社会の実態は江戸時代とあまり変わりません。私は47年間ほど甲斐駒岳の麓にある小屋に通って農村地帯の閉鎖的な文化を良く知りました。
若者達は大学だけは大都会でという希望で家を飛び出し、大学卒業後は都会で就職します。これこそ農村と山村が過疎化する原因の半分の理由なのです。
田舎には江戸時代から連綿と続く封建的な考えかたがあって人間関係が息苦しいのものなのです。
こんな過疎化は離島でも同じです。
3番目の写真は数年前に行った八丈島です。
調べてみると八丈島の人口が減る一方です。その上、同じ八丈島でも過疎化が進行して廃村になった地域もあるのです。
4番目の写真は八丈小島の写真です。この小島には2つの村がありました。過疎化で廃村になり無人島になったのです。
過疎化は田舎だけでなく都会の中でも起きています。
私の住む近所の団地でも同じ現象が起きています。昔出来た団地が老朽化して人が住まなくなったのです。
5番目の写真は人の住まなくなった公務員住宅です。私の家のすぐ北側にあります。一つの棟に2,3家族しか住んでいません。殆どは空き家です。
団地に住む人がいなくなったのでそばにあった商店街も消えてしまったのです。過疎化は都会の中でも進み、商店街も消えて行くのです。
私どもが1964年に引っ越して来た当時は近所に20軒ほどの個人商店がビッチリと並んでいました。賑やかな商店街だったのです。酒屋、肉屋、葉茶屋、菓子屋、化粧品屋、八百屋、蕎麦屋、中華料理屋、本屋、電気屋そして歯科医院まであったのです。
夏になると商店街祭りがあり野外舞台にお笑い芸人や歌手が来ました。夜になると酒屋は椅子とテーブルをそろえ生ビールを出しました。浅草でサンバ踊りがあった後に踊り子が裏の商店街祭りにも来ていたのです。それは楽しい夏の夜の思い出です。そんな商店街が消えてしまったのです。
以上のように都会の中でも過疎化して商店街が消えている場所があちこちに沢山あるのです。
廃村訪問記と写真が沢山掲載されたHP、「廃村と過疎の風景」http://www.din.or.jp/~heyaneko/haison.html をご覧下さい。
日本中に廃村や無人島がどんどん増加しているのです。
無人島化した離島一覧表は、「SHIMADAS」(日本離島センター刊)と「無人島が呼んでいる」(本木修次さん著,ハート出版刊)に詳しい情報が出ています。
日本には約3600位の島があります。このうち368の島に人が住んでいました。しかし昭和時代に入ってから68の離島が無人島になってしまい、現在、人の住んで居る島は300位だけになってしまいました。
離島だけではありません。北海道から九州まで廃村になった村落が非常に増加しています。
廃墟検索地図(http://haikyo.crap.jp/ck/912.html )というHPを見るとその数の多さに吃驚します。
このような現象が日本中に広がっているのです。日本の文化の変質が進行しているのです。
今日は地方や離島の過疎化にまつわる問題を書いてみました。皆様のお住まいの地方では過疎化はどうでしょうか。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)