以前にNHKテレビの日曜美術館で版画家で絵本作家の手島 圭三郎さんが詳しく紹介されていました。
私はその版画の数々に魂が奪われました。北海道の森に棲むハクチョウ、シマフクロウやキタキツネ、ヒグマ、エゾシカ、リスの版画です。何よりも版画が美しいのです。力強くてしかも繊細です。美しいだけでなく手島 圭三郎さんの哲学や自然崇拝の宗教観が感じられるのです。下絵を大きなベニヤ板に貼り付けると彫刻刀でグイグイ彫っていきます。北の大地のエネルギーが乗り移ったかのような力強さと、生き物たち・自然界に対する愛情と畏敬の念を込めて。色彩を乗せる時も迷いは全く感じられません。北海道の大地に同化してしまったかのような色使いです。感動しました。
今日は版画家で絵本作家の手島 圭三郎さんのことをあらためてご紹介致したいと思います。
父が鉄道員で転勤が多く主にオホーツク海沿いの農漁村を転々として育ちました。1957年、北海道学芸大学を卒業し20年にわたって中学校教師を務めます。その後、版画家として独立したのです。
1981年に日本版画協会展に出展したシマフクロウの版画が福武書店の編集者の目にとまり、絵本作家としてデビューします。シマフクロウ、キタキツネ、ヒグマなど北海道の動物を題材とした作品を次々と発表します。作品はアメリカ、ドイツ、スイス、デンマーク、スウェーデン、中国、韓国でも翻訳されています。
児童むけの『おおはくちょうのそら』のある読者が書いた書評を以下にお送りします。
『おおはくちょうの 厳しくも悲しい物語 生きるとは 涙しながら』
(https://www.ehonnavi.net/ehon/107797/%E3%81%8A%E3%81%8A%E3%81%AF%E3%81%8F%E3%81%A1%E3%82%87%E3%81%86%E3%81%AE%E3%81%9D%E3%82%89/ )
北海道の湖、おおはくちょうが冬を過ごすために北の寒い国から
やって来ました
そして 春になると生まれ故郷にかえるのです
おおはくちょうたちが 元気に大空を飛んでいきます
お父さんを先頭に・・・ でも6羽の家族のおおはくちょうたちは 出発できないのです。子どもが病気で 飛ぶことができず
湖に残っていたのです
子どもが元気になるまで 北の国に帰るのを遅らせたのです
ところが・・・ 子どもの病気はよくならず ますます 弱っていくのです
悲しいことです
しかし お父さんはとうとう 旅立つことを決意するのです
悲しい声で泣いています・・・・・
しかし家族のことを考えた末のお父さんの決断だったのです
飛び立った 家族は 一人残した 病気の子どものことを思い戻ってきました
しかし・・・・
病気の子どもは とうとう 息を引き取ったのです
どんなに 悲しく涙したことでしょう
そして 家族は生きるために北の国へ飛び立つのです
一緒に帰れなかった子どものことを思って・・・・
はくちょうの家族は大空に死んだ子どものはくちょうの姿が大きく見えたのです
なんと かなしいお話でしょう
しかし 生き物はこういう家族との別れをどれだけ経験していることでしょう
生きることの厳しさを この絵本から しみじみと感じ涙しながら読みました
手島さんのお話は すばらしい
そして おおはくちょうのすばらしい手刷りの版画が 見事です!(感動しました)
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今日は版画家で絵本作家の手島 圭三郎さんのことをご紹介致しました。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)
===参考============
手島圭三郎の受賞歴:
- ボローニャ国際児童図書展グラフィック賞、ニューヨーク・タイムズ選世界の絵本ベストテン:『きたきつねのゆめ』[2]
- Fiera di Bolognia Graphic Prize (special mention), 1986
- New York Times Best Illustrated Books, 1987
- ALA Notable Book, 1987
- 絵本にっぽん賞:『しまふくろうのみずうみ』[2][3]
- Japan Prize for Outstanding Picture Books, 1983
- ALA Notable Books, 1988
- ニューヨーク・タイムズ選世界の絵本ベストテン:『おおはくちょうのそら』, NY Times Best Illustrated Books, 1988[3]
- 厚生省児童福祉文化奨励賞:『カムイチカプ』
- 北海道功労賞(2017年)