人間は自由で平等だと言います。嘘です。貧乏な家庭に生まれた人は始めから困難な状況にあります。始めからハンディキャップを背負っているのです。人間の現実には不平等が付きまとっているのです。
しかし私は貧乏な家庭に生まれた人から学んだことが2つあります。一つは不撓不屈の精神の重要さと、二つめは常に感謝の気持を持つ重要さです。
貧乏な家庭に生まれた人には2種類の人がいます。上に書いた2つの精神を持てる人と持てない人です。
持てる人は成功者になり持てない人は貧乏に負けて不幸な一生を送ります。貧乏な家庭に生まれたために不幸になります。
私はこの事実をある夜間高校の教師をした時に生徒から学びました。
その夜間高校は東京の海に近い下町にあります。30人位の生徒がいましたが皆働いていました。中小企業で過酷な作業をした後で夜の学校に来るのです。
私は2年間だけ毎週1回その場末の淋しい学校で物理化学を教えていました。生徒の中には汚れた工員服の人もいます。しかし皆が熱心に聞いてくれます。眼が輝いています。顔に不撓不屈の精神がみなぎっているのです。
そして授業が終わると一斉に立ちあがって「有難う御座いました」というのです。本気で言うのです。
私は大学で教えていましたが授業が終わって有難う御座いましたと言われたことがありませんでした。大学では「退屈な話がやっと終わって、やれやれ」という顔をさることが多いのです。自分の講義の内容に自信が無くなるものです。
その夜間高校で私はいろいろ考えました。
学校に来てる人は偉いと思いました。その学校は国立校なので授業料は唯のように安いのです。貧乏な人へ勉学のチャンスを与えようとする文部省が明治時代から作った夜間学校なのです。
この学校に来てる人は幸いです。不撓不屈の精神と感謝の気持ちを持っているのです。
そして学校に来ない人の中にも行きたくても夜も働いている人もいます。家族の生活も支えなければならない人です。
そんな人が多いことをある生徒が私に教えてくれたのです。
この夜間学校のお陰で私は人間の偉さは学歴に関係がないことを知りました。
それから何十年たってから私に中学校しか出ていない友人が出来ました。その友人は独学で何でも知っています。
山林の中の一軒家に住んでいましたが生涯独身でした。どういう訳か私に好意を持ってくれて親切にしてくれます。
彼の家のコンピューター室に招じ入れてパソコンの使い方を丁寧に教えてくれました。こうしてブログを書けるのも彼に教わったからです。
そして彼は中学校しか出ていないと如何に世間が冷たいかを語ってくれました。私は学歴主義の間違いを徹底的に学びました。
そういう友人を私は誇りに思います。
こんなことを書いたのは以前に読売新聞の「時代の証言者」の中西 進氏の記事に触発されたからです。彼は有名な万葉集の学者ですが若い時一年間だけ夜間高校の教師をしていました。
家計を支える生徒たちが先生に感謝し先生を支える態度に涙する体験をしたそうです。
中西 進氏は「時代の証言者」という連載記事に夜間高校の生徒との交流を詳しく書いています。そして彼等に心底から感謝しているのです。
中西 進氏の万葉集に関する説明は明快です。特に万葉集と当時の中国の漢文学との比較論は独創的な上説得力がありました。
話がそれましたが今日の主題は貧乏な家庭に生まれた人の不幸です。しかしその不孝を克服するのは不撓不屈の精神と感謝の気持なのです。自分のささやかな体験にもとづいて書きました。
今日の挿し絵代わりの写真は小さな冬の花々の写真です。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈りいたしす。後藤和弘(藤山杜人)
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