おやじのつぶやき

おやじの日々の暮らしぶりや世の中の見聞きしたことへの思い

「Fermo Posta」(Tint Brass)(古きよき映画シリーズ。その48。)

2013-11-12 20:44:28 | Tinto Brass
 邦題「(ティントブラスの)郵便屋」。英題「P.O. Box Tinto Brass(私書箱ティントブラス)」。 1995年度作品。
 
 もうとっくに還暦を過ぎたスケベじいさん・ブラス監督なのだが、どういうわけか日本ではこの人の作品は、人気(私だけ?)。

 今回の映画の主人公(狂言回し)はティント・ブラス監督ご自身。
うしろには作品のビデオがずらりと。

 ポルノの巨匠・ブラス「大」監督のもとには、毎日、女性たちから大量のファン・レターが送られてくる。その内容には、彼女たちの赤裸々なセックス体験記が盛りだくさん。


 この映画はそんな女性たちの体験手記を、ブラス監督が映像化する、という設定のオムニバス形式。中には、ビデオを送りつける者もいれば、ひもみたいな男に連れられ、映画出演を売り込みに来るさえない女も登場する。・・・

 で、その合間にブラス監督と彼の秘書とのやりとりがおもしろい。若い秘書・ルチアのお尻や胸をブラス監督がさっと触ったり、裸を妄想したり、

 反対に、秘書が自分の股間をわざと見せびらかしたり、と・・・。
 この女優、めがねがよく似合う。


 H体験をオムニバス形式で映像化しているので、若い娘から年増までタイプも経験もさまざま。次々とそれぞれの願望や冒険やファンタジー、かなり怪しいムードのHシーン・・・。
 が、もうすでに20年も前のストーリー。今はもっとはるかに超えちゃったセックス環境。今思えばたわいないお話と言ってしまえば身も蓋もない。でも、先見の明があった、とここでは持ち上げておこう。

 明るい地中海でのできごと。軽快なバックミュージックが心地よい、そんな「第一話」から。


 こうしてPCでこっそり(?)観ているのはいいが、当時、劇場の暗がりで固唾を飲んで観ている観客を想像すると、また面白い、と言っては失礼か。
 もちろん皆が期待するのは、あの「シーン」。それを先刻ご承知の我が(今やこういう表現がふさわしい)ブラス監督。次々とはぐらかしていく。
 どのエピソードも明るい。しめったところはない。監督自身が楽しんでいるという趣向。


1.ミレーナ
2.エレナ
3.エリザベッタ
4.レナータ
5.ロッセラ
6.フランチェスカ
7.ヘバーナ
8.ルチア

 日本人の観光客も登場。円形劇場の廃墟で挑発する女性。

 サングラス越しにそれを垣間見、おもむろに肩にかけたカメラで撮影する若者。

 そこに男が登場して慌てる様。日本人をここまでカリカチュアされるとうーん! でも我が身を当てはめるやっぱりうーん!
夫が妻のバッグからこれを見つけて、妻の秘密が・・・。
 監督の、こんな趣味も。
わき毛フェチ。わざわざ黒マジックで強調。
テレホンセックス中に夫が戻ってきて・・・。
夫のギャンブルの賭けにされて出かける妻。
 女優たち。どこまでも明るく、楽しく登場する。そして、最後は、ブラス監督の象の鼻のように長くうねるあそこを大写しして、おしまい!
 当たり前ですが、本物じゃないです。笑ってしまうほどの大きさ。それが美人秘書ルチアの夢・願望の中に登場し、にょきにょきと動いて、あそこに風を送り、まさぐる。
まさに「鼻息」荒く・・・。
そして、バックに流れるのは、モーツアルトのオペラの二重奏。
 このあたりが、ただの無修正版・AVとは違う点。実は、期待するような本番のセックスシーンは添え物にすぎない。だから、この映画のジャンルは、「コメディー」。

こうして煙に巻く。
 「最高の」H体験告白シリーズ。

 最近の日本の週刊誌(文春に現代だが)。毎号のようにセックス記事。誰が読むのか、スケベ心を刺激するようなハウツーものなど、じいさんばあさんへのHばなし。女性のあそこがどうのこうのと、お盛んなようす。
 週刊誌などはもう数十年読んだことも開いたこともない。いったい今の世相はどうなっているの?

 ティント・ブラス監督。そうした日本にぴったりなのでしょうね。復古的な人気度、私の世界では、って勝手に思っているだけですが。これで、もう14作目。あと2、3本観てみよう。

※画像はすべて「XVIDEO。COM」より。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「Paprika」(Tinto Brass)(古きよき映画シリーズ。その47。)

2013-11-09 20:13:45 | Tinto Brass
 パプリカ(ハンガリー語:Paprika、学名:Capsicum annuum 'grossum')はナス科の多年草であるトウガラシ属トウガラシの一栽培品種。またその果実および果実から作られる香辛料のこと。肉厚で辛みが無く甘い品種。日本で流通する果実の多くは赤色や黄色、橙色であるが、紫色、茶色などの品種もある。また着色料(パプリカ色素)としても使われる。(「Wikipedia」より)

1991年製作。
 原作はかの有名な、ジョン・クリーランドの古典的官能小説「ファニー・ヒル」。
(「Amazon.co.jp」より)

売春禁止法が施行される前の、1950年代のイタリアが舞台。

A young country girl comes to town and works in a brothel in order to help her fiance get the money to start his own business. "Paprika" is the name given to her by the madam.

 まだあどけなさを残す少女ミンマ(デボラ・カプリオリオ)は、恋人ニーノのために生活資金を稼ぐ目的で、マダム・コレットが経営する売春宿・娼館の扉を叩く。

 「パプリカ」という名をつけられるミンマは、その豊満な肉体で、たちまちナンバー・ワンの売れっ子となる。楽天的で明るい性格の彼女は周囲から愛され、マダム・コレットや人情味のある娼婦たちからプロとしての心得や生き方を教わっていく。

 最初の客であるフランコの優しさに惹かれはじめたパプリカ。

だが、やはりニーノと結婚したい。そのニーノには他に女がいた。傷ついた彼女を慰めるフランコ。
 その晩、彼の自宅へと招かれたパプリカは、セックスの最中に“結婚しよう”と呟く彼の言葉を聞いて、私に会いたければ、店に来なさい、と言い放つ。

 売春婦を辞めて新たな職に就こうと、パプリカはローマへと向かう。その汽車の中で、彼女は同僚の娼婦のひもだったロッコと再会。レイプ同然で犯されるが、その男らしさに負けてしまう。

 彼女を再び売春婦にしようと目論むロッコから、パプリカはマダム・オリンピア(ルチア―ナ・チレネイ)の高級娼館を紹介される。
 マダム・オリンピアは大柄の女性で、働きやすい場所だった。そんなある日、彼女の伯父が客としてやってくる。口止め料としてたびたび小遣いをせびるようになる伯父。

 ある日、大貴族ブランドン王子からご指名がかかり、同僚ベバと一緒にお城へと向かったパプリカ。

彼らのゆがんだ実像を目の当たりにした2人。
 ところが、ベバが急死してしまう。

 パプリカは、このまま娼婦を続けていいものか迷う。さらに、妊娠してしまい、中絶までも。そんな折、船乗りとしているフランコから絵葉書が届いた。パプリカは娼婦から足を洗うことを決める。
 仕事を辞めてフランスのマルセイユで休暇を楽しんでいたパプリカは、フランコと再会する。愛を交わす2人。

 パプリカはフランコのために船を買ってあげて、結局、一文無しになってしまう。
 パプリカはイタリアへ戻り、場末の売春宿で働くことになる。周りには、夢も希望も失った中年の娼婦ばかり。

 彼女はミラノへと向かい、マダム・アンジェリーナの経営する高級娼館スペッキへ。そこで彼女は初老のバスチアーノ伯爵と出会う。
 女として、人間として辛酸をなめたパプリカ。再びマダム・コレットの店の娼婦達の中で、吹っ切れたように笑顔を振りまく。

船員フランコの乗る船に笑顔で手を振るパプリカ。・・・


 バックが、ブラスバンドの音色。また、しばしば用いられる曲(「ciribiribin」など耳にしたことのある楽曲)が軽いタッチで流れる。

 吹っ切れたパプリカを支えるような軽やかな旋律。いつものように、大小の鏡や幾何学模様などセンスのうかがわれる装置はなかなか。
 吉原などの花魁物、あるいは戦後の赤線地帯の娼婦達の姿を描いた日本映画。どちらも、淀んだ空気の中で、それをかえって糧としてたくましく生きる娼婦達の姿、それにかかわる、一癖も二癖もあるいろんな男達のようす、・・・。
 悲しみ、苦しみ、楽しみ、喜び、裏切り、闘い、葛藤、・・・時に、世に翻弄されつつ、生きていく女性像の描き方にはさほど変わりはない。
 一方で、ティントブラスの作品には、じめじめしたところがなく、おおらかな明るさが漂っている(もちろん、娼婦達の厳しい現実の姿から目を背けているわけではないが)。

 主役の新人女優デボラ・カプリオリオの演技力(田舎娘から曲折を経てマダム的存在になっていく成長ぶり)が抜きんでている作品。

 ティントブラスの多くの作品の中でも、ストーリーもすっきりとしてわかりやすく(小説「ファニー・ヒル」をほぼなぞらえている)、めりはりのある文芸作品となっている。さすが、ティントブラス監督であった。
 その監督は、中絶のときの風采の上がらない医師として登場。


注:画像は、「XVIDEO.com」より。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「Trasgredire」(Tinto Brass)(古きよき映画シリーズ。その46。)

2013-11-04 17:42:25 | Tinto Brass


原題「Trasgredire」(イタリア語)
意味
1〈制限・範囲を〉超える,逸脱する。
2〈法律・規則などを〉破る,犯す,違反する,そむく。(道徳的に)罪を犯す。
(「en.wikipedia.org/wiki/Trasgredire」より)

英題「Cheeky」
意味
〈人・言動が〉生意気な,ずうずうしい。

邦題「背徳令嬢」
 ちなみに邦題「背徳令嬢Ⅱ」は、原題「MONELLA」。冒頭の自転車のシーンが抜群。


(「YouTube」より)
 こちらの方がまさにあっけらかんとした明るさ。二作とも「令嬢」という括りはおもしろいが。

Directed by Tinto Brass
Produced by Massimo Ferrero
Written by Tinto Brass,Carla Cipriani,Nicolaj Pennestri,Silvia Rossi,Massimiliano Zanin
Starring
Yuliya Mayarchuk(ユリヤ・マヤーチェク)
Jarno Berardi(ジャルノ・ベラルディ)
Francesca Nunzi(フランチェスカ・ヌンツィ)
Max Parodi
Mauro Lorenz
Music by Pino Donaggio
Cinematography Massimo Di Venanzo
Distributed by Cult Epics
Release date(s) Italy January 28, 2000
Running time 89 mn
Language Italian

Trasgredire (Transgressing or Cheeky) is a 2000 sex comedy directed by Tinto Brass, with Yuliya Mayarchuk in the lead role. Certain parallelisms are drawn between Nerosubianco (1969), another Tinto Brass film set in London.

《Plot》

In London, the beautiful Venetian Carla Burin (Yuliya Mayarchuk) is an intern at the front desk of an hotel. She is looking for an apartment to allow her boyfriend Matteo (Jarno Berardi) to join her there. The real estate agent, Moira (Francesca Nunzi), a lesbian, rents her a loft with a view of the Thames, with "intimate conditions."

When the hot-tempered, jealous Matteo finds a nude picture of Carla and letters from her former French lover Bernard (Mauro Lorenz), Carla and Matteo have a row on the telephone.

Angry at Mateo, Carla sleeps with Moira. Matteo, desperate, comes to London, where he finds Moira naked in Carla's apartment. He confronts Carla about all her past infidelities and refuses her invitation to perform fellatio on him before leaving.

After a walk in the park, where he sees lots of sexual activity, he changes his mind. Carla shows up with a written account of her infidelities, but Matteo declares he no longer needs to know.

(from「en.wikipedia.org/wiki/Trasgredire」)‎

注:画像は、「X-VIDEOS.com」より。

 ここまでくると、ポルノそのもの。
 何しろ、かの有名なロンドンの王立公園ハイド・パーク (Hyde Park)がどこもかしこもエロティックな公園だったとは!
ハイド・パーク全景(「Wikipedia」より)
(ま、何十年も前の「日比谷公園」や「皇居前広場」もそうだったが。)

 ノーパン、ノーブラ(トップレス)で闊歩する女性達。うさんくさい紳士淑女の皆さん、・・・。
 不動産屋の女性にいきなり胸を触られ、そのまま、・・・。
 社交場も何が何だかわけがわかない乱交パーティ。お釜は掘られるは、泣いてしまうは・・・。
 恋人の男も怒ってやってくるが、口のうまい女性にころりと降参、・・・。
 で、めでたしめでたし!

 何のためにロンドンくんだりまでやってきたのか?
 かの英国で、皆、早口のイタリア語で騒ぎまくる挙げ句の果ては・・・。
 Tinto Brassさん、ここまで徹底した「お尻フェチ」だと言うことなし。


 かつて、日本のエリート公務員が「ノーパンしゃぶしゃぶ」で騒ぎ回ったという出来事がありましたが、この映画、10年以上前の作品、どうやら時代が重なっていないか?

注:「ノーパンしゃぶしゃぶ事件」
 ノーパンしゃぶしゃぶは、ノーパンの女性店員が接客するしゃぶしゃぶ料理店。実体はエンターテインメント・レストラン、もしくは風俗店である。
 東京・新宿のノーパンしゃぶしゃぶ店が大蔵省接待汚職事件で大蔵官僚(当時)接待の舞台のひとつとなっていたことが報じられたことから1998年(平成10年)頃に話題となった。
 多くの店では床を鏡張りにして、覗きやすいようにしていたともいい、高いところにアルコール類を置くことで、女性店員がそれらを取ろうとして立ち上がることで、覗きやすくしていたともいう。また女性店員の上半身もスケスケの衣装やトップレスにしているケースが多いという。起源はノーパン喫茶にあると見られ、他にもノーパン焼肉などがある。
 1998年(平成10年)に発覚した大蔵省接待汚職事件では銀行のMOF担とよばれる行員が旧大蔵官僚の接待に東京・歌舞伎町のノーパンしゃぶしゃぶ店「ローラン(楼蘭)」を使っていたことがマスメディアに暴露され、話題となった(事件発覚後、その官僚の一人が不可解な自殺)。なぜ通常の風俗店でなく、こういう店を利用したかは、飲食費として領収書が落とせるというのが理由としてあげられる。
 現国会議員の岸本周平は、初当選前の2008年に、公務員時代に自費ならまだしも、接待で複数回利用して、大問題となり、後にブログで反省していると述べている。(以上、「Wikipedia」より)

 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「Miranda」(Tinto Brass)(古きよき映画シリーズ。その45。)

2013-10-19 12:02:38 | Tinto Brass


 第二次世界大戦後の混乱期の北イタリア。

 田園地帯の中に建つ「ジーノ亭」は、一階はレストラン、二階は客室という古いホテル。

 ミランダ(セレナ・グランディ)が戦争に行ったまま行方不明の夫の代わりに経営している。彼女は夫の帰りを待ちながら、次々と客を誘惑していた。
 彼女に誘われるかのようにやってくる男たちの中には、運送屋のベルト(アンドレア・オッチピンティ)や領事カルロ(フランコ・インテルレンギ)、テキサスから来た若者ノーマン(アンディ・J・フォレスト)などがいる。
ノーマンとの逢瀬を楽しむミランダ。外には小雪の舞う中で回る、広場の回転木馬。
カルロと。
 こうして男や女友達と自由奔放に(時にはちょっぴり真剣に、時には遊びで、時には危険に・・・)行動していたある日、戦争に行ったきりで行方不明になっていた夫ジーノの死亡通知が届く。

 そのショックと悲しみを徹夜で発散させて戻ってきた彼女を、優しく慰めてくれたのは使用人のトニー(フランコ・ブランチャローリ)だった。

・・・

 魅せ場を織り込みながら、しっとりとした雰囲気が漂い、北イタリアの田園風景ともマッチしている。
 ミランダを取り巻く気の置けない、人なつっこい(いろんな思惑を持ちながらも)男達、女達、村の人たち。・・・

 「ミランダ」役のセレナ・グランディは、奔放な女性で複数の男を誘惑して存分に楽しんでいる一面、けっこうナイーブな性格を持った女性像をうまく表現している。

邦題「ミランダ 悪魔の香り」
劇場公開日 1989年7月15日
 18世紀のカルロ・ゴルドーニの戯曲『ホテルの女主人』を、イタリアのティント・ブラスが監督・脚本・編集を手掛けた、とのこと。

オートバイ、ジープ、トラックなど車を駆使した映像がスピード感にあふれている。特に、夕暮れ、明け方、雨模様など、大きく広がる田園風景を背景に自然描写におもしろいものがある。
ファシスト残党を射殺するところに出くわす。
夜明け前を疾走するサイドカー。
曇った窓ガラス越しの向こうには、ミニチュアのような貨物列車。
雨。どんちゃん騒ぎの後。
 邦題の「悪魔の香り」というのは、いただけませんが。

ついでに、
「Tinto Brass Street Band」。同名のブラスバンド。ストリートミュージシャン。軽快なブラスの音色。リーダー兼ボーカル兼トランペッターは、携帯拡声器を肩にかけてマイクで歌う、というユニークさ。

※ 映像は、「You Tube」より。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「L'Uomo che Guarda」(Tinto Brass)(古きよき映画シリーズ。その44。)

2013-10-18 20:56:09 | Tinto Brass


 窃視することで性的快感を感じる青年教授をめぐるドラマ。

 美しい若妻の父親との背徳行為が明らかにされることで、少年期の性的記憶と重なって、より悩みを深めていく。

 1995年公開。



《ストーリー》
 ドド(フランチェスコ・カセール)は大学でフランス文学を教える青年教授。彼の妻シルヴィア(カタリーナ・ヴァシリッサ)とは別居中。
 同居している父アルベルト(フランコ・ブランチャローリ)はリハビリ中にもかかわらず、介護をしているメイドのファウスタ(クリスティーナ・ガラヴァグリア)にちょっかいを出すほど。それを快く思っていないドドは、二人のようすを覗き見する。


 大学での講義後、ドドに魅惑的な女子学生が接近してくる。

 彼女の裸体の写真がかざられた部屋を訪れ、写真を撮っているところへ、 彼女の友人の女性がやってきたことで、性的行為は中断させられるが、期せずして二人の緊密な行為(ドドが期待していた)を覗き見する。

 ドドはアルベルトが持つアパートの部屋の権利を譲渡してもらい、シルヴィアにそこで一緒に住もうと持ちかける。ところが彼女は自分には虐待的な肉体関係を結んでいる男がいると告白。ドドは彼の少年時代、父が娼婦相手のゆがんだ性行為を目撃した、という忌まわしい記憶がよみがえる。


 熱い日差しの中、ヌーディストビーチを歩くドド。男たちと性的快楽におぼれる女性たちの顔が、すべてシルヴィアの顔に。


 ファウスタから父の部屋に妻シルヴィアが出入りし、情事にふけっているのを見たと聞かされ、不安は現実に。

 ドドのアパートを訪れたシルヴィアは、自分の男とは義父アルベルトで、しかも二人の関係は結婚式の日からはじまっていたと告白する。夕焼けの差し込む部屋の中で、ドドとシルヴィアは激しい性行為。


 二人が部屋を後にして行く、その姿を覗き見する男の姿、・・・。



《スタッフ》
監督ティント・ブラス
脚本ティント・ブラス
撮影マッシモ・ディ・ヴェナンツォ

キャスト
フランチェスコ・カセールDodo(Edward)
カタリーナ・ヴァシリッサSylvia
フランコ・ブランチャローリArbert
クリスティーナ・ガラヴァグリアFausta

原題「L'Uomo che Guarda」(邦訳:見る人)英語「The Voyeur」(のぞき屋)。邦題「背徳小説」。

(資料参照:「株式会社キネマ旬報社」より)

 うーん!邦題の方が主人公の男女をめぐる話としては、適切かもしれない。が、主人公の男性の幼児期の性的体験(覗き)が後々まで影響していく、映画の中でも、ポラロイドカメラで撮ったり、他人の部屋を覗いて性的興奮を感じるシーン、またラストシーンなど、ストーリー的には英語の題名の方でよいのではないか。
 ま、それではストレートすぎるようですが。「背徳小説」まさに「物語」という内容ではなく、「背徳という小(さな)説(挿話)」くらいの意味でいいのかもしれません。

 ラストが凝っている。二人が部屋を去るとき、隙間から男らしき人物が(壁に描かれたような雰囲気)が覗いている。テロップもその画面を背景にして微妙に揺れている。かなりどきっとさせる演出。


 ただ作品を通じて感じることは、自由奔放に生きる女性達の描き方に比して、男性の描き方が今ひとつ。「カリギュラ」では俳優の独特の演技力もあって、その異常さ、狂気が描かれていたように思いましたが。
 この映画でも、主人公の葛藤がうまく表現されていない。ちょっとアンニュイな雰囲気は伝わってくるのですが。ただ、不断に見せる、原題に即したような「眼(まなざし)」が主人公の心の葛藤、ゆがみをうまく表現している。
 映像が性的、挑発的な描写に目を向けさせるあまり、主人公の人間的な存在感(屈折、疎外などにさいなまされる人間像)や妻、父親との人間関係の深み(追求)が中途半端に終わってしまった。
 奔放な女性(性)を描くことで一世を風靡した(している)監督、といってしまえばおしまいですが。
 それでも、けっこう魅力的な作品にはなっています。

 「垣間見」る、という行為、または「見る・見られる」関係が示す、文化(人類学)的意味、狭義における性的意味(あるいは性的に屈折した意味)を追求(残念ながら中途半端でしたが)した、おもしろさ。
 さらには大げさに言えば、人類史上におけるポルノという作品の持つ意味(意義)とは、をも合わせ持つ、そんな監督の挑戦的な姿勢を(シニカルな面を)感じました。



※「画像」は、すべて「You Tube」より。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「 MONAMOUR 」(Tinto Brass)(古きよき映画シリーズ。その43。)

2013-10-12 21:27:53 | Tinto Brass
 またまたTinto Brass監督の作品。2005年製作。

邦題:「ティント・ブラスの白日夢」

《キャスト》
Anna Jimskaia (Marta)
Riccardo Marino (Leon)
Max Parodi (Dario)
Nela Lucic (Sylvia)


《ストーリー》
 新婚の若妻マルチナは、巨乳と豊満な美尻の持ち主。性に淡泊な夫ダリオに満たされないまま、マルチナは日記をつける。

ベッドに潜り込んだマルチナは妄想する。

 夫が読んでいた官能小説を読みながら、自然と彼女の手は胸をまさぐり、絶頂に達する直前、夫が戻って来てしまう。

 再びみだらな妄想に。

 フラスコ画の掲げられた美術館。デジカメで執拗に自分を撮影するレオンに強引に迫られる。

 マルチナはパーティーで再会し、二人は暗がりで激しく求め合ったが、そこを旧友のシルビアに見つけられてしまう。シルビアは、マルチナにもっと夫を挑発するようアドバイス。

 帰宅後に夫からパーティーの件を問い詰められるが、マルチナは挑発する。夫も嫉妬心からマルチナに迫るが、途中で冷めてしまう。
 バルコニーに出た彼女は、自分の体を慰めていると、向かいの部屋から双眼鏡で覗く中年男。途中でレオンに変貌、熱い視線を感じる。

 入浴しながら再び妄想の世界へ。



 しばらくして、マルチナにレオンからメッセージが届き、さっそく、男の部屋を訪れる。男二人との淫靡な交わり。


 こうした自由奔放な妻に、怒りをついに爆発させた夫。そして、はじめて快感を得ることが出来たマルチナ。
 めでたし、めでたし!


 レオンは、さっさともう他の女性とデートに。


 いつものように、ブラスの音色に合わせて軽やかに進む。大きな鏡の部屋。幾何学模様のセット。陰影に富んだ映像。そして、美乳に美尻・・・。老いてますます盛んなTinto Brass様でした。
いつもお決まりになっているご本人登場。

 邦題の「白日夢」に当てはまるシーンは、二カ所(だと思う)。いや、すべてが夢の世界?
 谷崎潤一郎の「鍵」を翻案して映画化した監督。こうして谷崎潤一郎の「白日夢」になぞらえているのもおもしろい。

 邦画では1981年公開の、武智鉄二監督・佐藤慶、藍染恭子出演の「白日夢」。大島渚の「愛のコリーダ」と並ぶ「本番」映画らしい。二人の延々と続くセックスシーンがあるそうですが。

 もともとの谷崎の作品は、歯医者さんで歯の治療を受ける時、口を大きく開けて口の中をまさぐられ、独特の器具の音とからみあっての妄想がテーマだった、と。
 うろ覚えなので、念のため、「Wikipedia」で内容を確認しました。

 流行歌手・千枝子と青年画家・倉橋は歯科の診療室で治療を受けていたが、倉橋は麻酔を打たれ夢心地になる。次第に医師と看護婦の様子が変り、千枝子は医師に犯されてしまった。ナイトクラブに千枝子を訪ねた倉橋は千枝子に迫る医師の姿を見て、千枝子を救おうと決心。医師と千枝子がホテルへ向かうと倉橋は後を追った。千枝子が医師からの様々な拷問を甘受する姿がそこにあり、倉橋は何とも言えない気持ちで眺めていたが、逃げ出した千枝子の後を追った。しかし、倉橋がいくら千枝子を追いかけても、千枝子は遠くへと行ってしまう。あるデパートの屋上で倉橋は千枝子と偶然再会。ここでも医師が突然姿を現し再び千枝子を奪った。これは夢なのか、現実なのか。(「Wikipedia」より)

武智監督のものは果たしてどういうストーリーだったのか?
(「Amazon.co.jp」より)

注 「映像」は、すべて「You Tube」による。 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「Senso '45」(Tinto Brass)。(古きよき映画シリーズ。その42。)

2013-10-06 22:14:16 | Tinto Brass
「Senso」はイタリア語で「官能」の意。「45」は、1945年。

 カミッロ・ボイトの短編小説をイタリアの巨匠ルキノ・ヴィスコンティが映画化した「夏の嵐」を、ティント・ブラスがリメイクしたもの。

《あらすじ》
 1945年、第二次大戦末期のイタリア。上流階級の女性リヴィアは、夫との不毛で怠惰な日々を過ごしていた。そんなある日、夫と出かけた劇場で若いドイツ軍中尉ヘルムートと出会う。すっかり心を惹かれてしまったリヴィアは官能の世界に溺れてしまう。
 家庭では貞淑な妻を装い、情事の時には大胆に振る舞うリヴィア。そんなある日、ヘルムートを訪ねた時、若い女性とベッドにいる場面を目撃して、激しいショックを受ける。そして、ついに破局へ。


邦題「秘密」。

監督: ティント・ブラス
製作: ジュゼッペ・コロンボ
原作: カミッロ・ボイト
脚本: ティント・ブラス
撮影: ダニエル・ナンヌッツィ
音楽: エンニオ・モリコーネ

出演: アンナ・ガリエナ(リヴィア)
    ガブリエル・ガルコ(ヘルムート)

 48歳のアンナ・ガリエナ。イタリア上流階級の夫人役、最後には若い男に裏切られる哀しい中年女を演じ、肉体をさらけ出す熱演。


 エンニオ・モリコーネの音楽、哀切のこもった調べが見事にマッチ。

 ヴィスコンティの「夏の嵐」は、傑作との評価が高い。その内容は、
 
 1866年、オーストリア占領下のヴェネツィア。フェニーチェ歌劇場でオーストリア軍のフランツ・マーラー中尉(ファーリー・グレンジャー)と反占領軍運動の指導者ロベルト・ウッソーニ侯爵(マッシモ・ジロッティ)の決闘騒ぎが起こる。リヴィア(アリダ・ヴァッリ)は従兄のロベルトを救うため、フランツを桟敷席に招き、決闘の申し出を断るように頼む。決闘は免れたが、フランツの密告でロベルトは流刑になってしまう。
 フランツと再会したリヴィアは、彼に言葉巧みに言い寄られ、秘密の部屋を借りて逢瀬を重ねるようになる。
 やがて開戦、フランツに会えないまま夫とアルデーノへ行くことになった。
 そこへ突然フランツが現れる。リヴィアは、ロベルトから預かった義援金を渡し、フランツを除隊させる。彼を追ってヴェローナへ行くと、フランツは、口汚く罵った。ショックを受けたリヴィアは軍に事実を密告し、フランツは銃殺刑となる。(以上、「Wikipedia」による)

 時代を第二次世界大戦末期に移しましたが、ほぼ「夏の嵐」をなぞっています。満ち足りない日々を送る中年の女性が若い魅力的な男性に心身ともにおぼれていく、その果て。
ガブリエル・ガルコは、実に美男子。

 海のシーンなどは映像的に優れていました。


 後半のモノトーンの映像が効果的。全体として色調をあえて抑え気味なのがいい。

ラストのシーン(銃殺の場面)。

※映像は、すべて「YouTube」による。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「FALLO!2003」(TintoBrass)(古きよき映画シリーズ。その41。)

2013-09-29 20:41:59 | Tinto Brass
 この際だから、tinto Brass監督の作品を懲りずに紹介しよう!

Fallo!(From Wikipedia, the free encyclopedia)
DVD cover

Directed by Tinto Brass
Produced by Giovanni Bertolucci
Roberto Di Girolamo
Ugo Tucci
Written by Tinto Brass
Carla Cipriani
Massimiliano Zanin
Starring Sara Cosmi
Massimiliano Caroletti
William De Vito
Music by Francesco Santucci
Cinematography Federico Del Zoppo
Editing by Tinto Brass
Running time 104 minutes
Country Italy
Language Italian

Fallo! is a 2003 Italian film co-written and directed by Tinto Brass. The film is known in English as Do It! (English translation of Fallo!) and Private. It consists of a series of 6 independent vignettes.

1) ALIBI:
 Cinzia (Sara Cosmi) celebrates her honeymoon with her husband in Casablanca; he must give her the prize she covets, or she will have sex with a handsome Moroccan waiter.


2) MONTAGGIO ALTERNATO:
Stefania (Silvia Rossi) is the wife of distinguished TV news anchor Luigi (Andrea Nobili) who becomes enraged when she finds out her husband is having an affair with Erika (Federica Tommasi). She takes in a new lover in television director Bruno (Max Parodi). Includes a scene with brief finger penetration on Federica Tommasi and oral sex on Andrea Nobili.


3) 2 CUORI & 1 CAPANNA:
 The sweet Katarina Alto Adige (Raffaella Ponzo) will get paid to meet with the perverse Frau Bertha (Virginia Barrett) a German dominatrix in a small Tyrolean guesthouse. The scheme was concocted by her boyfriend, Neapolitan chef Cyrus (Stefano Gandolfo) so that they can open his own restaurant.


4) BOTTE D’ALLEGRIA:
 Raffaella (Angela Ferlaino) betrays her pedantic and talkative husband Hugh (Daniel Ferrari) after she learns of his many extramarital affairs.


5) HONNI SOIT QUI MAL Y PENSE:
 In the beautiful village of Cap d'Agde, Anna (Maruska Albertazzi), has leisurely fun with Mrs. Helen (Grazia Morelli) and her husband, Scottish satirist Mr. Noel (Antonio Salines).


6) DIMME PORCA CHE ME PIAZE:
 Venetian Rosy (Federica Palmer) is on her honeymoon with her husband in London, and agrees to a dare that she must have sex in public.


 邦題は、「桃色画報」。原題の「ファッロ (Fallo)」 は、人口162人のイタリア共和国アブルッツォ州キエーティ県のコムーネ(共同体)の一つ。(「Wikipedia」より。)??? 性の世界は、男と女の(むしろ、女主体の男との)共同作業ということ。TSUTAYAにも一般向け(年齢制限もなく)にありました。
 例によって、ブラスの軽快な演奏で始まる、もちろん軽いタッチの6つのエピソード。女性美謳歌で、開放的。
 最後がおもしろい。「覗き見」されているのに気づきますます燃える二人。覗き見を気づかせる御仁は、Tinto Brassご自身という落ち。


 どうも英語のあらすじ・解説、ちょっと内容と違っているような気がするが。
 あくまでも、明るくおおらかなつくり。6人(6組)6色の色恋騒動。ブラス作品の、どこで登場した、見た女優が勢揃い(狂言回しの男優達も)。
 それぞれ、色彩感覚がおもしろい。特に、室内での装飾が。5話は、日本の扇子をイメージしたような雰囲気がどっきとするほど、決まった! 他も、なかなか見事な舞台設定。電車ごっこの時のバックのポスターなど、細かいところまで遊びの精神が満載。

※映像はすべて「YouTube」による。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「Salon Kity」(Tinto Brass)(古きよき映画シリーズ。その40。)

2013-09-28 23:24:43 | Tinto Brass
サロン・キティ(ドイツ語: Salon Kitty)

 1930年代から1940年代にかけてドイツの首都ベルリンにあった高級娼館。1939年から1942年にかけての時期は、SD(親衛隊(SS)内部におかれた情報部)が経営を乗っ取り、諜報目的で運営していた。
 要人たちが使うような高級娼館を諜報活動に使うというアイデアは、親衛隊幹部で情報部門を掌握していたラインハルト・ハイドリヒによるものだが、実行に移したのはその部下のヴァルター・シェレンベルクだった。ハイドリヒやシェレンベルクのアイデアは、ドイツ各界の要人たちや各国外交官らを酒と女性でもてなし、枕元で女性に対してナチ党や政府への率直な意見や不満、自国の内密の情報などを打ち明けるのを傍受して、不満分子を摘発したり機密情報を得たりするのに役立てようというものだった。娼館にSDのエージェントを浸透させるという案に対し、シェレンベルクは娼館そのものをSDが乗っ取り経営することを主張した。
 乗っ取りの対象となった高級娼館サロン・キティは、シャルロッテンブルク区ギーゼブレヒト通り(Giesebrechtstrasse)11番地にあった。この地区はベルリン西部の裕福な階層が暮らす地区で、サロン・キティの主な顧客はドイツ各界の高位の人物や、各国の外交官などであった。爛熟したヴァイマル文化の残る1930年代初頭以来、この高級娼館を経営していた女主人(マダム)は、1882年生まれのキティ・シュミット(Kitty Schmidt, 本名 Katharina Zammit)という人物であった。キティ・シュミットは、ナチ党の権力掌握以来、他国へ亡命しようとする人々をひそかに助けつつ、自らもイギリスの銀行へ送金を続けていた。彼女自身もついに国外へ逃げようとしたが、1939年6月28日、SDのエージェントによりオランダとドイツの国境で逮捕され、ベルリンのゲシュタポ本部へと送られた。
 シェレンベルクはキティ・シュミットに面会し、サロン・キティをSDに使わせてナチ党の諜報活動に協力するか、SDへの協力を拒否して強制収容所へ送られるかの二者択一を迫り、防諜活動への協力を強いた。
 SDはサロン・キティを「改装」の名目で一時閉店し、その間に大量の盗聴用マイクロフォンを全館に仕掛けた。マイクからの送信線は地下室に引き込まれ、そこから顧客たちの話の傍受・監視を行う部屋へと続いていた。
 この娼館でエージェントとして働く女性を確保するため、ベルリンの道徳警察(風紀警察、Sittenpolizei)が逮捕した多数の娼婦の中から、頭がよい、多国語を理解する、思想的にナチス寄りなど、エージェントの素質がある者20人を選出した。彼女らは7週間にわたり厳しい思想教育や訓練を受けた。その中には各種の軍服の見分け方や、他愛のない会話から機密を収集する方法などもあった。彼女らは顧客を相手するごとに報告を行うことが義務付けられた。一方で、隠しマイクが部屋毎にあることについては知らされていなかった。
 1940年3月、サロン・キティは営業を再開した。キティ・シュミットは、何事もなかったかのように営業を続けるよう命じられた。ただしある特定の種類の客に対してのみ、普通の顧客には見せない20人の女性の情報が載った冊子を見せるよう指示された。もし店に来た客がキティに「私はローテンブルクから来たのだが」という合言葉を言えば、彼女は20人の女性の情報が載っている特別な冊子を出し、客はその中から一人を選んで夜を共に過ごすことになっていた。
 ナチ党や政財界の要人、軍部の高官、駐ドイツ外交官らの間に、「サロン・キティでは、要人だけの特別な合言葉を言えば、一般人には紹介しない選り抜きの女性を紹介してくれるらしい」という話が広がり、サロン・キティは人気のある店になった。
 サロン・キティの傍受担当者は要人たちの会話数千件分の録音を行っている。顧客の中にはイタリアの外務大臣ガレアッツォ・チャーノがおり、彼はベッドで、アドルフ・ヒトラーの今後について見通しは暗いと率直なところを語っている。親衛隊大将ヨーゼフ(ゼップ)・ディートリッヒは一晩で20人全員の相手をしたいといい徹夜の乱交を繰り広げたが、何一つ秘密めいたことは口にしなかった。
 ラインハルト・ハイドリヒは何度かサロン・キティに行って「査察」を行ったが、彼は自分が女性を相手している部屋のマイクの電源は切らせていた。
 第二次世界大戦が進むにつれ、サロン・キティの顧客は減少していった。1942年7月には連合軍の空爆で、サロン・キティが入っている建物に爆弾が落ち、同じ建物の地階への移転を余儀なくされた。1942年の終わりにはSDはサロン・キティでの諜報活動を終え、もし秘密を洩らせば報復を行うと脅したうえで経営をキティ・シュミットに返還した。20人の女性もサロン・キティに残ることになった。
 サロン・キティは戦後営業を再開し、経済の復興とともにふたたび人気の娼館となった。1954年にキティが没した後はその娘が跡を継いだ。キティは結局、戦中の活動については語ることはなかった。
 SDが娼館の経営を乗っ取り要人に対する諜報に使った、というサロン・キティの話は、Peter Norden が小説にし、ティント・ブラスの監督、ヘルムート・バーガー(ヴァルター・シェレンベルクをモデルにした「ヘルムート・ヴァレンベルク」役)とイングリッド・チューリン(マダム・キティ役)の出演で、『サロン・キティ』というタイトルで1976年に映画化された。日本ではポルノ映画として、『ナチ女秘密警察 SEX親衛隊』という題名で劇場公開されている。
(以上、「Wikipedia」を参照。)

 そこで、その映画を。1976年の作。70年代にはやった、邦題からも分かるように、日本での公開当時はナチスを題材にした、エロ・グロ映画というくくり(実際、ナチス・ファシズムはまさにマゾとエロ・グロの世界だと思えます)となっていた。手に取って、借りて観るのもちょっとが臆するものだが、たしかに中身はそういう部分もあるが、全体的にはナチスと呼応したのムッソリーニ・ファシズム体制を歴史に持つ、ブラス監督の初期の意気込み(ファシズムへの批判)が感じられる作品となっていて、単なるエロ・グロ映画ではありません(と思いました)。

《あらすじ》
 1939年、ベルリン。ナチ親衛隊の将校バレンベルグ(ヘルムート・バーガー)は、上官ビオンド(ジョン・スタイナー)から、容姿に優れ、肉体的に健康で、ドイツ国民として健全な思想を持つアーリア系の白人20名を集めることを指示される。女性の中には、若い少女マルゲリータ(テレサ・アン・サヴォイ)も含まれていた。マルゲリータは裕福なブルジョワ家庭に生まれ育ったお嬢様だったが、ヒットラーの国家社会主義に心酔し、国家の理想のためなら、と自ら志願した。

 体育館に集められた女性たちは次々と服を脱がされ、若くて屈強な兵士たちとの集団セックスを命じられる。
音楽隊が軽やかな曲を奏でる中、乱交が始まる。映画カメラも回っている。

 それぞれの女性たちは個別の部屋へ移動させられ、小人、レズビアン、老人などを相手に性の奉仕を強要され、そのようすを厳しくチェック、選別する。
 さらに、バレンベルグはベルリン市内の高級娼館「サロン・キティ」のマダム(イングリッド・チューリン)を無理矢理、支配下に置き、親衛隊公認の高級娼館としてリニューアル・オープンすることとなる。


 しかし、そこには訓練した娼婦たちをスパイとして送り込み、彼女たちが見聞きした顧客たちの個人情報をデータとして集めるという目的があった。さらに娼館内部に盗聴器を仕掛け、娼婦との会話を傍受していく。サロン・キティの常連客には大物政治家や軍幹部も多い。彼らの性癖を含めた秘密情報を入手することで弱みを握り、必要に応じて政治的な交渉や脅迫の材料にしようという目的だった。
 そうした中、マルゲリータは客のハンス・レイテル(ベキム・フェミュ)という兵士と親しくなる。ハンスはナチス・ヒトラーに対する強い反感を抱いていた。


 ショックを受けるマルゲリータ。彼女はハンスの言動をウソの報告書として作成し、バレンベルグに提出する。しかし、ばれてしまい、ハンスは反逆罪で処刑されてしまう。
 一方で、しだいにナチズムのほころびは表面化し、模範的な国家社会主義者を自負していた娼婦のスーザンが狂死する。


 ある日、マルゲリータはハンスのことを口汚く罵る兵士を射殺してしまう。銃声を聞いて駆け付けたマダム・キティは、兵士の自殺として虚偽の報告をする。

 マルゲリータは実家へ戻ることとなった。しばらくして、マルゲリータの実家へマダム・キティがやって来る。そこで初めて、マダムは娼館が親衛隊のスパイ活動に利用されていることを知らされた。また、マダムがナチスのシンパでないことを知る。


 バレンベルグに憎しみをもつマルガリータは、マダム・キティと謀り、反ナチ的な言動をバレンベルグに言わせ、それをテープに録音した。それによって、バレンベルグは部下の手によってあっけなく射殺される。

ラスト。爆風で吹き飛ばされる娼館。

(あらすじは、angeleyes.dee.cc/なかざわ ひでゆきさんのHP記事を一部、参照しました。)

 随所に監督の才気を感じさせる。生きた豚を切り裂く場面。その周囲で笑い興じるナチス将校と女性達。遺体の公開。女性へのサディスティックなナチス将校。ヒトラーの映像にオーバーラップさせながらの発狂シーン。裸体のバレンベルグへの銃殺(「カリギュラ」のラストシーンとも重なる)。・・・。
オープニング。けだるいバック音楽に合わせて歌う、マダム。半身男性、半身女性の顔、コスチューム。うまく反転させながら歌うという凝った演出。展開を通じ、イングリッド・チューリンの妖艶な演技も見物。
現代的な様式美。
これ以降、多用される鏡を用いた映像効果。
 
 硬軟両様を見事に使い分ける監督。軽いのりの「ポルノ」作品ばかりではないことに気づかされる。

※「画像」は、すべて「YouTube」より。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「COSI FAN TUTTE」(Tinto Brass)(古きよき映画シリーズ。その39。)

2013-09-21 21:16:01 | Tinto Brass


 冒頭、モーツァルトの『コジ・ファン・トゥッテ』(伊:Così fan tutte)K.588(モーツァルトが1790年に作曲したオペラ)序曲から始まり、現代風にアレンジした曲に変わり、再びモーツアルトに。随所に『コジ・ファン・トゥッテ』の曲が流れる、という趣向。
 オペラの正式なタイトルは「Così fan tutte, ossia La scuola degli amanti(女はみなこうしたもの、または恋人たちの学校)」。
 姉妹の恋人である二人の男が、それぞれの相手の貞節を試すために仕組んで互いの相手を口説いたら、二人とも心変わりしてしまった! はたしてことの成り行きは? てなことらしいが。
 タイトルの原語(イタリア語)の意味は「Così このように fan する tutte すべての女性は」。
 今や、『フィガロの結婚』、『ドン・ジョヴァンニ』『魔笛』の3大オペラにこれを加えて4大オペラと呼ばれるほど。日本でもけっこう上演されているようです。
 もちろん、わがイタリアの巨匠・TintoBrass監督。先刻ご承知の上でのエロチックコメディーの仕立てに。

邦題「背徳小説 第二章 ALL LADIES DO IT」(1992年)。「Così fan tutte」は、 英訳にするとこうなるわけです。
監督: ティント・ブラス
製作: ジョヴァンニ・ベルトルッチ
脚本: ティント・ブラス
撮影: シルヴァーノ・イッポリティ
音楽: ピノ・ドナッジオ

出演: クラウディア・コール
    フランコ・ブランチャローリ

 みだらな性の快楽に溺れてゆく人妻の日常を描くエロティック・ロマンス。ダイアナは、気品のある外見とは裏腹に、飽くなきセックスの快楽を求める淫乱な人妻。彼女にとっては、夫の嫉妬すら性的な刺激に結びついてしまうほど。ダイアナは、男たちを集めて自分の尻をさわってくれるように頼むなど奔放な生活を楽しむが、結局、元の鞘(まさに字義の通り)に収まる。
 (以上、「映画 MOVIE-FAN」movie-fan.jp/1992/00036165.html参照)


 妻の自在闊達に比べて、夫はいかにも優男という設定が目立つ。言い寄ってくる男性も軽くあしらわれる。それでいて、戻るところはその「優しい」夫の元。そこで、夫も一安心。しかし、その後はまた相変わらず、・・・。

 
 あいにく日本語版は、手に入りにくい。TSUTAYAにあるはずもない(はず)。英語なら何とか分かるがイタリア語となると何とも・・・。しかし、内容が内容(ないよう)で、これで「カリギュラ」「鍵」など4作目となると何とか分かってしまうのが、我ながらおそろしい。
 部屋の装飾から窓外の風景、白黒トーンの配色、例によって大小の鏡、・・・洒脱な演出を楽しめます。寝室などのセットはいつも同じようですが。バックに流れる音楽は凝っています。

 お決まりは、トイレとお風呂とベッドシーン。社交場でのダンスシーン。・・・。窓外に見える厳かな教会の建物。美しく開放的な地中海の海べ。太陽。心地よい風。・・・。

 ちょっとエッチな牧師さんとカメラや双眼鏡を持つおじさん。そして、あきれた顔をするおばさん、おじさん。そして、上半身も下半身も透け透けのお嬢さん。・・・。

例によって、監督も登場。

 ※画像は、すべて「YouTube」より。

 今度は、本家本元のオペラを視聴することにしないと、・・・。あっ、今までこの年まで、モーツァルトさんのオペラにはまったく無縁であったことに気づいた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「CAPRICCIO」(Tinto Brass)(古きよき映画シリーズ。その38。)

2013-09-12 22:53:48 | Tinto Brass
 またまたイタリア・ポルノ映画界の巨匠、TintoBrassの監督作品(1987年公開)。「カリギュラ」に続いて。

 「カプリッチョ」。「奇想曲」「綺想曲」「狂想曲」とも訳される。イタリア語では、「気まぐれ」を意味する、らしい。音楽でも、カプリッチョは、形式に縛られない、気まぐれな曲想・性格を示す作品がある。

 小さな島の港町カプリ。1947年。

 3年ぶりにバカンスでイタリアを訪れたフレッド(アンディ・J・フォレスト)とジェニファー(ニコラ・ウォーレン)のアメリカ人夫婦。倦怠期を迎えた二人にはそれぞれかつての愛人と再会するという思惑を秘めていた。フレッドは、さっそくユネスコの調査旅行にかつての恋人ローザ(フランチェスカ・ドゥレーラ)を同伴し、調査そっちのけで楽しむ。



 一方、ジェニファーは、野戦病院で強引に自分の処女を奪ったチーロ(ルイジ・ラェッツァ)の思い出を回想し、島の男との逢瀬を楽しみながら連絡をまっていたが、偶然、祭りの場で再会する。
 だが、子どもの発熱をきっかけに、フレッドもジェニファーも過去の愛が幻想だったことに気付く。

 ストーリー(たわいない内容)よりも、イタリア中部・地中海のさんさんと降り注ぐ太陽の光と海のきらめきと静かに眠る古跡、ステレオタイプ化された(押しも押されぬ巨匠?が意識的にそうしているのだが)、人のよさそうで(ちょっといかがわしい)好色なイタリア人の笑顔、獲物をさがす目、・・・。随所に流れるジャズ(というか、「MONELLA」のときと同じくブラスの音色)のテンポが小気味よい。
 野戦病院の描写など軽いのりすぎますが、けっして侮れない、と。男優がいかにもアメリカ人っぽいところがご愛敬。


 カプリ島は、ティレニア海に浮かぶ島の1つ。ナポリの南約30kmに位置する。また、ベスビオ火山やポンペイなどともここから数十km程度しか離れていない。小さな島だが、風光明媚な土地として知られ、イタリア有名観光地の1つ。また、ローマ皇帝ティベリウスが統治期間の後半を過ごしたことでも知られる。
赤い○がカプリ島。北方にナポリ。
 マリーナ・グランデには、ナポリやソレントなどからの観光船が発着する島で唯一の港がある。また、島の周囲にはファラリョーニと言う奇岩が存在する。島の周囲の大部分は断崖絶壁となっているので、海岸近くに存在する奇岩に陸から近づくのは難しいものの、島を周遊する観光船が運行されている。マリーナ・グランデと高台にある島の中心地カプリは、ケーブルカーで結んでいる。
 なお、島の高台を中心として、島内随所には各界著名人などの別荘が点在している。また、島の特産品としてレモンが有名だが、このためリモンチェッロなどのレモン酒やレモンチョコレートなどの土産品が販売されている。
 カプリ島の周囲はかなりの部分が断崖絶壁に囲まれており、波打ち際には半ば水中に埋もれている海蝕洞の「青の洞窟」(Grotta Azzurra)がある。
 この洞窟には、洞窟のある入り江から手漕ぎの小船に乗って入って行くことができる。内側に入ると外からは予想もできない数十メートルの広大な空間が広がり、水中に伸びている穴を通して水面から洞窟全体が紺碧の光を帯びて、神秘的な雰囲気を持つため、人気ある観光スポットとなっている。
 アンデルセンの出世作となった恋愛小説『即興詩人』では、この洞窟が重要な舞台となっている。森鴎外の翻訳では、「琅玕洞」(ろうかんどう、琅玕=翡翠のこと)と訳された。
(以上、「WIkipedia」を参照)

 この映画は、1947年、第二次世界大戦直後に設定されているので、上のような華やかな観光地ではまだなかったと思います、が。
 ここなども含めて、監督としては観光案内映画ではないので、まったくカット。しかし、音楽へのこだわりはかなりあって、バックに流れる軽いタッチのものにとどまらず、イタリアの街中で、普段、奏でられる音楽などを聞かせている。

 のびのびとした自然という明るい雰囲気がある一方、稲妻など陰陽を織り交ぜたメリハリのある作り。衣装にもこだわりがありそう。また、この監督は、巧みに鏡(大きな、小さな、円形、くすんだ、入り組んだ・・・)を小道具として必ず登場させる。それによって奥行きが深くなる印象。

※「映像」は、すべて「YouTube」より。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「Caligula」(Tinto Brass)(久々の「古きよき映画シリーズ」。その36)

2013-08-14 19:12:02 | Tinto Brass
 『カリギュラ』(Caligula)は、1980年のイタリア・アメリカ合作映画。当時のペントハウス誌社長ボブ・グッチョーネが46億円の巨費を投じて製作。ローマ帝国皇帝カリギュラの放蕩や残忍さを描いた重厚な歴史超大作。が、実態はハード・コア・ポルノとも。
 監督はイタリアポルノ映画界の巨匠ティント・ブラス。主演はカリギュラ役のマルコム・マクダウェル、皇帝ティベリウスのピーター・オトゥールほか、サー・ジョン・ギールグッド、当時すでにシェイクスピア女優としての地位を築いていた演技派女優のヘレン・ミレンなど豪華キャストの上、脚本家にはゴア・ヴィダル、製作はフランコ・ロッセリーニという布陣。後で付け加えられたハードなポルノ・シーンはボブ・グッチョーネがペントハウスのモデル達を使って別撮りしたとされ、主要キャスト陣は関わっていないという。それどころか、当初はこの作品がポルノになることは出演者たちには全く知らされていなかったという。

《あらすじ》
 ローマ帝国初代皇帝アウグストゥスの曾孫カリギュラ(ガイウス・シーザー・ゲルマニクス)は、妹であり愛人のドルシラと郊外で慎ましく暮らしていた。ところが成人を迎える頃、カリギュラは第2代ローマ皇帝・ティベリウス(カリギュラの大叔父であり法律上の祖父)にカプリ島まで呼び出され、そこで彼が見たものは異常性愛に溺れる皇帝、貴族と退廃しきったローマ帝国のの姿であった。
 ティベリウスは自分の実孫ゲメルスを後継者にしたいがため、呼び寄せたカリギュラに毒を盛ろうとする。 難を逃れたカリギュラだったが、すぐにティベリウスは病に罹り仮死状態となってしまう。

 カリギュラは、皇帝の指輪をティベリウスの指から外して自らの指にはめて悦に入るが、直後蘇生したティベリウスから指輪を返すよう迫られ、その場に現れたカリギュラの親衛隊長マクロが、カリギュラに代わってティベリウスを絞殺する。
 こうして、カリギュラはローマ帝国の第3代皇帝となった。ドルシラからの助言もあって、皇帝即位に大功のあった親衛隊長マクロが自分を凌ぐ権勢を得ることを警戒し、第2代皇帝ティベリウス殺害を理由にマクロを公開処刑する(巨大芝刈り機を使った処刑シーンは有名)。

 カリギュラは最愛の妹ドルシラと結婚しようとするが、ローマの法律上どうしても兄妹では結婚できない。そこで、カリギュラは、聖女の泉に召集した巫女の中から、淫乱で離婚歴のあるカエソニアを妻に迎えた。
 カリギュラは、自分が出席した兵士の結婚式で新郎・新婦を共にレイプするなど、ますます異常性を現し始める。さらにゲメルスに無実の罪をかぶせて処刑し、貴族たちから反感を買うことになってしまう。

 最愛のドルシラが熱病に罹り亡くなってしまったショックから、カリギュラはいよいよ狂気への歯止めがなくなり、まさに末期的、異常・狂乱の様相になる。


《キャスト》
カリギュラ:マルコム・マクダウェル
ティベリウス:ピーター・オトゥール
ネルバ:ジョン・ギールグッド
マクロ:グイド・マンナリ
ドルシラ:テレサ・アン・サヴォイ
カエソニア:ヘレン・ミレン
カエレア:パオロ・ボナセッリ
クラウディウス:ジャンカルロ・バデッシ
(以上、「Wikipedia」を参照)

 35度以上もある猛暑の時に、クーラーの効いた涼しい部屋で観る、というこの落差。が、これまたこの映画らしい。暑さしのぎ、暇つぶしにと観ていても、エログロ満載。長い!くどい!ストーリーはどうなっている!・・・
 俳優陣も、主役以外は?(カリギュラはなかなか迫真の演技)。豪華メンバーだが、ネームバリューばかりで今ひとつのりが悪い! 

 舞台セットが大がかりで、壮大な劇空間をつくっている。あえてそうさせているのだろうが、まさに虚実入り交じってのドラマ。しかし、群衆劇としてはアメリカ映画の大作級。

 裸、裸、裸、エロ・シーンが随所にあり、食傷気味。しかし、本筋とは関係がなさそうに挿入されるエロ・グロ場面を除けば、物語的にも、映像的にも見応えがある。特にカリギュラの心理描写・狂気の果ての悪行、周囲の貴族連中の権謀術数・・・。
 暴君の行き着く果ての「狂騒」劇。結局は、暗殺されてしまう。
 感情の赴くまま、その気分で気にくわない連中を次々と消し、その虐殺シーンに快楽を覚えるカリギュラ。後半、実の妹(愛人)が死んだことで、いよいよその狂気に歯止めがかからなくなっていく。この暴君を暗殺しようとするも、なかなかできずにいた貴族たち。あげくのラストシーンは、衝撃的。



 大がかりなセット(古代ローマの宮殿、円形舞台、競技場・・・)のもとでの展開。歴史劇、群衆劇として見所の多い内容だった。今もハードポルノ映画としてくくられるのにはもったいない印象(あまりローマ古代史を知らないせいもあっておもしろかった)。 

 「狂騒」のうちにいつしか亡国の因を積む暴君の存在。強大なローマ帝国の暗黒の歴史の一面を垣間見た思い。待てよ、大昔の、外国の話にとどまっているだろうか?

 この映画から生まれた言葉。
※「カリギュラ効果」 禁止されると、かえって余計にその行為をやってみたくなる心理のこと。一例としては、「お前達は見るな」と情報の閲覧を禁止されると、むしろかえって見たくなるなどの心理が挙げられる。
 上記の映画『カリギュラ』が語源で、過激な内容のため、ボストンなどの一部地域で公開禁止になったことで、かえって世間の話題を惹いたことにちなむ。
 この効果は、広告宣伝やテレビ番組でも利用されている。例えば、テレビ番組で、「ピー」などの効果音を付けて発言を聞こえなくしたり、モザイク処理をかけて映像の一部を見えなくすることにより、いっそう視聴者の興味をかき立てるなど。(以上、「Wikipedia」を参照)

※「画像」は、すべて「emfplix.com」より。

 ところで、ティント・ブラスの作品はこれで3作目の紹介となった。「あなたもすきね」ということ?

 さらに、この「カリギュラ」のヒットに便乗し、臆面もなく「カリギュラ2」(これはポルノ)とか「新カリギュラ」(「2」と同じなのか?)などのあやかり作品・続編があるらしい。さすがにそれを観る機会はなさそう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「Monella1998」(Tinto Brass)(古きよき映画シリーズ。その31)

2013-04-05 19:39:33 | Tinto Brass
 「YouTube」で発見した、痛快な作品、といってもジャンルはポルノ。「MONELLA」は、イタリア語で「悪漢」。英語吹き替え?版では「FRIVOLOUS LOLA」(軽薄なローラ)。英語版で視聴しました。

《あらすじ》
The story takes place in northern Italy in the 1950's. Lola and Masetto is about to get married. Masetto wants to keep Lola as a virgin until they are married. But Lola is impatient to remain in chastity until the wedding night. She wants to be sure that Masetto is a good lover, before she commits herself into marriage. She does everything to trick Masetto into breaking the moral tradition.
《批評》
There are a lot of people who get turned on by voyeuristic shots - shots of the vagina from the rear, transparent clothing etc. Tinto Brass is the ace director for such movies. Monella is full of such shots. Lots of people think that his movies are nothing but XXX, I differ in their opinion.
All of us enjoy sex; priests and human rights people have made sex a taboo, so the general public think that showing such movies is not good to the society. In reality, it's the image that is present in people's mind. If the open up and think about this in the director's point of view, they will enjoy this movie to the fullest.
Tinto Brass had vision, he knew people are turned on by such movies and he directed it to such perfection that you will be his ardent fan,
I find all of his movies fascinating- 'caligola', 'le chaive', 'monella' etc...
Tinto is a great director, almost upto the ranks of Sergio Leonne who is famous for western spaghetti.
This movie is a must watch. Lola is an young women who is very horny. All she wants to do is to loose her virginity to her boyfriend, so that she can go about have sex with others and enjoy life. The whole movie is about her escapades.
I love the clothing she wears in the movie, no bra, takes of her panty in almost every scene. Beautiful shots of her fabulous breasts and vagina. Really, Tinto has done a wonderful job on this one.
 以上借り物のあらすじと批評でした。ですから引用文中の「I」は、私ではありません。念のため。(映像は、「YOUTUBE」より)
年寄りが鼻の下を長くして見る、というようなものではなく、あっけらかんとした映像にかえって圧倒されるほど・・・。
若い二人はパン屋で働いています。隙をみては抱き合う二人。でも、いつもローラの思惑通りにはいかない展開に。
積極果敢なローラ。戸惑う彼氏。
夢見るローラ。手がどこにあるのかはお楽しみ。
 このシーン(けっこう長い)のバックに流れる曲が「ビー・バップ・ア・ルーラ/ジーン・ヴィンセント Be Bop A Lula Gene Vincent」 (1956)。一世を風靡した曲。プレスリーなどと共に、ビートルズなどロックンロールシーンに大きな影響を与えたロックンロールの名曲です。

Well, be-bop-a-lula, she’s my baby
Be-bop-a-lula, I don’t mean maybe
Be-bop-a-lula, she’s my baby
Be-bop-a-lula, I don’t mean maybe
Be-bop-a-lula, she’s my baby love
My baby love, my baby love
・・・
 
 ジーン・ヴィンセント (Gene Vincent、1935年2月11日-1971年10月12日)は1950年代後半にアメリカ音楽文化を変えたロカビリーを代表するひとり。この曲は、今でも口ずさめる歌詞です。これがバックに流れているのですから、推して知るべし。懐かしいジュークボックスでのシーンなど、1950年代の時にはやった、開放的な音楽が流れる中でのローラの挑発が随所に。
オープニングとラストには人の良さそうなおじさんが
(どうもティント・ブラス監督自身のようだが)
指揮するブラスの音色が響く。イタリアらしい雰囲気の広場を行き交う人々。
結婚披露パーティ。青空の下、老いも若きも男も女も牧師さんも踊りに興ずる。
よりを戻す二人。
フラフープが登場したり、懐かしいツィストだったりして・・・。人々のおおらかな気質が軽快な曲に乗ってよく表れています。人間、いくつになってもこうでなくては・・・。
あれ、花嫁さんの下半身?
すかさずシャッターチャンスを逃さない。

 映画の中で使用された曲。

・NON,JE NE REGRETTE RIEN
・IN THE MOOD
・LET'S TWIST AGAIN
・FOLLE BANDEROOLA
・NESSUNO
・VORRE ISAPERE PERCHE ・・・
 他に主題歌「MONA MONELLA」。歌っているのは、主役のANNA AMMIRATI。
 監督のティント・ブラスは、以前投稿した「THE KEY」の監督でもあり、イタリアポルノ映画界の大物。かのポルノ大作「カリギュラ'Caligula'」の監督としてつとに有名。この作品は、何だかのびのびと描いている印象。

『カリギュラ』(Caligula)は、1980年のイタリア・アメリカ合作映画。当時のペントハウス誌社長ボブ・グッチョーネが46億円の巨費を投じて製作した。表向きはローマ帝国皇帝カリギュラの放蕩や残忍さを描いた重厚な歴史超大作であったが、実態はハード・コア・ポルノである。 この映画の撮影はアメリカ映画協会(MPA)を通さず秘密裡に行われ、ニューヨークでは劇場を一館買い取って公開されて大ヒットを記録した。
 なお、この映画が基となりカリギュラ効果という用語が作られた。
 監督はイタリアのポルノ映画界の巨匠ティント・ブラス。主演はカリギュラ役のマルコム・マクダウェル、皇帝ティベリウスのピーター・オトゥールほか、サー・ジョン・ギールグッド、当時すでにシェイクスピア女優としての地位を築いていた演技派女優のヘレン・ミレンなど豪華キャストの上、脚本家にはゴア・ヴィダル、製作はフランコ・ロッセリーニという布陣であった。しかし撮影現場はトラブル続きで不協和音の連続だったという。後で付け加えられたハードなポルノ・シーンはボブ・グッチョーネがペントハウスのモデル達を使って別撮りしたとされ、主要キャスト陣は関わっていないという。それどころか、当初はこの作品がポルノになることは出演者たちには全く知らされてなかったという。・・・(以上「Wikipedia」による。)
 この次はこれを観てみたい。ただ2時間以上の大作でエロ・グロ・残虐性にあふれていて、途中でギブアップする人もいるようですので、はたして・・・。そもそも「TSUTAYA」の普通のコーナーに置いてあるのかしら?

 (付)カリギュラ効果とは、禁止されると、かえって余計にその行為をやってみたくなる心理のことである。一例としては、「お前達は見るな」と情報の閲覧を禁止されると、むしろかえって見たくなるなどの心理が挙げられる。
 ローマ帝国の皇帝カリギュラをモデルにしたアメリカ映画『カリギュラ』が語源で、過激な内容のため、ボストンなどの一部地域で公開禁止になったことで、かえって世間の話題を惹いたことにちなむ。
 この効果は、広告宣伝やテレビ番組でも利用されている。例えば、テレビ番組で、「ピー」などの効果音を付けて発言を聞こえなくしたり、モザイク処理をかけて映像の一部を見えなくすることにより、いっそう視聴者の興味をかき立てるなど。(以上、「Wikipedia」より。)
 戯曲「夕鶴」(木下順二作)でも、機織りの姿を見てはいけないというのでかえって見てしまって女房が鶴になって去って行く、というのがありました。

 明日明後日は、大型台風並の大荒れの空模様。泊まりがけで出かけます。この映画の主人公のように大粒の雨に濡れても素肌のままでいいような、そんな明るいようすの雨風ではなさそうです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「La chiave THE KEY」(Tinto Brass)(古きよき映画シリーズその28)

2013-03-13 22:48:09 | Tinto Brass
 イタリア映画(1983年作) 。
《スタッフ&キャスト》
監督:ティント·ブラス
原作:谷崎潤一郎

脚本:ティント·ブラス
音楽:エンニオ·モリコーネ
出演:
ステファニア·サンドレッリ:テレサロルフ
フランク·フィンレイ:ニノロルフ

 映画の舞台は、ヴェネツィア。イタリアファシスト政権の時代、第二次世界大戦宣戦布告の前夜。 高齢の美術教授とヴェネツィアの中心部にある小さなゲストハウスを持つ彼の若い妻の物語。
 夫は、彼の貪欲な性的空想を書き記した日記を隠している引き出しの鍵を床の上に妻が見つけ出すようにわざと残す。妻は、鍵を見つけ、引き出しを開き、日記の内容を知る。

妻の裸身の写真を娘の恋人に現像させ嫉妬と興奮を覚える夫・・・自分の恋人とも関係する母親、それに敵対心を持つ娘、

さらに嫉妬に狂う夫・・・、4者の絡みの中で、話が進んでいくが、教授は、高血圧のためにセックス・ゲームの間に倒れて死ぬ。



 最後の場面。教授の棺がゴンドラで運ばれていく中、ファシスト政権によって宣戦布告が発表される。

 4者の関わり、話の展開は、原作に忠実な印象。
 谷崎潤一郎の「鍵」をもとにした映画で、日本でも何度か映画化されている。そのイタリア版。内容は、自由奔放で屈折した性的関係を描いているが、ポルノ映画に近い。上映当時も賛否両論。かえって話題になったという。
 日本では、川島なお美、柄本明、大沢樹生、辻香緒里が出演した作品が話題になった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする