《面倒くさい話はいいから、来るのか、来ないのかだけ、はっきりしてくれればいいから。》
《皆さん、お久しぶりです。お元気そうで何よりです。私を含め10名の参加、久々の盛会でありがとうございます。初めに常連の方が亡くなった、と いう報告からお願いします。》
A 去年来なかったんで、どうしたんだろうって話をしていたんですよね。あの方、来ないにしても必ず連絡してくる方だったんで。
《手紙が戻って来たわけじゃないしね。》
A 同じ町会なんで、亡くなった、っていう噂が去年の暮れにどこからともなく伝わってきてね。
《たまたま兄さんとお会いする機会があった、とか。》
A そう、実は一昨年の暮れから具合を悪くして去年の3月頃、亡くなったよ、弟にもかわいそうなことを、って。
何がかわいそうな、って分かりませんがね。だから、俺たち元気なかぎり、こういう会を開いてほしい、って幹事さんにお願いしたわけですよ。
《あの方は二次会でカラオケなんか行くと、必ずお金出してくれていたしね。しっかりと宴会の領収書は持って帰ったし・・・。
驚いた方も多いと思いますが、追悼の心を含めて、献杯! では、長老に御挨拶を。》
B いやあ、去年は脚を怪我してさ、失礼しました。今年は何とか。そう、もう82歳になるよ。身体のあちこちが痛んできてさ。
《またどういう具合に。》
B 足の甲のところをちょっと。
《ひねったんですか? 》
B そういうわけじゃなくて(足首をいじりつつ)。
《では、と聞いてもはっきりしないままですなあ。》
C 私なんか、二回、足の骨を折っているわよ。糖尿だし。
《それはお気の毒に。ところで、お宅の業界も24時間営業とか何とかペイとかあれこれ話題になって、大変そうですね。》
C 店の方は息子にすっかり任せっきりよ、看板娘の出番はもうなくていいの。
《いったいどこが看板娘なのかわかりませんが。》
A 死んだあの男も重い糖尿で、けっこう食べ物には気を遣っていたようだったよね。
C 私? 何にも気なんか遣ってないわよ、何でも食べちゃう、寝る前まで御菓子なんか食べて主人に怒られているけど。
そう、両親とも糖尿だったけど、80過ぎまで元気だったし。
D それでもあんまり良くないんじゃないの。食事には気をつけた方が、・・・。
C そうね、こんなに太っちゃうしね。でもいいのよ、気にしないの。
E いや、こっちはさ、緊急事態が起こったので、幹事に相談しようとしたら、けんもほろろで。
F そう、私にも連絡があったんだけれど、何だかはっきり言ってくれないんで、とか。
《こっちだって、他からの連絡はあるわ、パソコンで送らなきゃならないデータはあるしで、ばたばたしてたんだからね。》
E ま、解決したからいいけれども。
《(無言)》
D こっちには2回ぐらい留守電が入っていたけど、無視したわよ、面倒だから。家のことなんかなのかしらね。
《息子のことかも知れないけど。去年からまだ続いているんのかね、家を建てる件が。》
G 昼間は飲まないようにしているの。酔うと帰るのが面倒になってくるしね。
そうそう、今度さ、一泊で温泉に行きましょうよ、前やったみたいに。熱海辺りでいいじゃない、近いし。
《今、熱海は外国人観光客でけっこう賑わっているみたいだよ、それなら湯河原辺りが。》
D もうこんな年だし、身体のこともあるし、出かけるのもおっくうになって来たわよ。夫はどこか行こうよ、行こうよって言うんだけれど。
《ご主人と行くなら、僕と行こうよ。》
H 何、馬鹿なこと言ってるのよ。
F そういうハサミがあるんだ、へえ、食べ物を細かく切るためのハサミなのか。
E 歯が悪くてさ。持ち歩き用に。
《これは魚だし柔らかいよ。はさみを使わなくても大丈夫。これは固いから止めた方が・・・。お酒は適当に頼んで下さいね。》
E えっ、日本酒を置いてないの、ビールとワインと焼酎かあ、外国人がたくさん来るんだから置けばいいのにね。
H ほら、景色も見てよ。31階って何㍍なのかなあ。150㍍くらい。
F 腹がかなり出てきたみたいだな。吹き矢をやるといいよ、腹式呼吸なんで、健康にいいよ。ほら、動画見せるよ。
C あなたたち相変わらず仲いいわね。高校の頃だったか、あなたたちのデートに付き合わされたことがあったわ。覚えてる?
D 日比谷公園なんて、今どきのデートコースではないわよね。
H パートで、今、介護施設で働いているけど、現実は大変よ、大変。面倒を見る方も見られる方も。
I 年を取るというのは大変なことですね。なかなかころりと簡単に死ねないし、・・・。
《遠くに赤く見えるのは東京タワーですね。あそこが新宿。ほら、こっちには、筑波山が見える。》
B 俺の住んでいるのはあのふもとかな。
H そんな遠くじゃないでしょう、我孫子は。
B あれが荒川か。そのずーと向こうに見える緑の高台が国府台かな。
C えっ、反対側にもスカイツリーがあるの?
A それは鏡でしょ、鏡。自分の顔が見えるじゃない。
《夜の方がもっといいんだけれどね、デートには。ま、皆さんにはもう無縁でしょうが。》
・・・
《宴たけなわですが、そろそろお開きに。お勘定は男性は、・・・。女性は、・・・。みんな年金生活者だから、ワリカンで。》
F 幹事さん、ご苦労様。これから私が仕切ることにしますから。カラオケ?
G この人、最近、おへそが少し曲がってきているから。
I いや、前行ったファミレスでいいんじゃない。たしか橋渡った向こうにあったはずだよ。
・・・
《では、せっかくですから、ここで記念じゃなくて祈念撮影。はい、パチリ! 》
A そういえば、明日が七夕だよね。「かんごしになれますように」か。いいねえ、夢があって。
C もう暑いのは嫌だから、もっと涼しい頃にしましょうよ。ここまで来るの、大変なんだから。
H 今日は涼しいよ、けっこう。それに、あなた、太っているせいよ。
C でも、暑いのはイヤなの、どうしても。来年は、オリンピックもあるし、7月、8月は大変よ、人の行き来が。
H そんなことはないでしょ、ここ辺りは。
C でも、外国人がたくさん押し寄せてきそうだわ。
H もう、わがままなんだから。
《ご主人の三回忌が来年の9月末の予定ですか。》
C えっ、知らなかったわ、ご主人、亡くなったの?
G 長老と同じ年だったわ。
《じゃ、わかりました! 来年は、10月3日(土)にしましょう。》
B スカイツリーも、今日は曇り空だから、人も少ないね。
《12月の例会は、常連も来なくなったし、なしにするから。》
G でも、秋に温泉に行かない?
《計画しても何人も集まらないよ。》
G そうか。残念ね。
・・・
《では、みなさん、お元気で。向こうが東武の駅、北千住でJRに乗り変えればいいから。》
D 私? タクシーで錦糸町に行っちゃうから。じゃあ、バイバイ。
《『そして誰もいなくなった』(原題: And Then There Were None)(アガサ・クリスティ作)っていう感じ。飯でも食って帰ろう! 》
ところで、話の内容と人物が一致する方はどなたでしょうか? って、分かるわけありませんよね。
注:店内の写真は、「天空LOUNGE TOP of TREE」(東京スカイツリータウン イーストタワー31F)HPより。