おやじのつぶやき

おやじの日々の暮らしぶりや世の中の見聞きしたことへの思い

読書47「海底八幡宮」(笙野頼子)河出書房新社

2009-10-31 22:03:34 | 読書無限
 ボンヤリ系装幀のもの二つ目。この作家の装幀は、ミルキィ・イソベという方。これまでは、曲線をあしらった、派手気味なものが多かったが、今回のはちょっと抑え気味。題名にあやかったものでしょうか。
 全体がブルーがかった地に、上部に題名の部分が華やかに彩られ、小さくローマ字書きまである。遙か彼方の世界をイメージしたものか。
 身辺雑記風に構成されていながら、実に小気味よい毒をあしらったもの。ますます笙野さん、相変わらずの粘着質で、実に冴えていらっしゃる感じ。好きな読者なら、登場人物が誰かが何となく分かるのが面白い。
 中身は、過激。文壇などマスコミに寄生して、あぶく銭を稼いでいる連中を、体制批判をおりまぜて、快刀乱麻する書。それでいて、「私」的世界もきちん(?)と描いている、いつものように文体がころころ変わるのが、読んでいて楽しみ。
 ところで、八幡信仰。宇佐八幡が総社。稲荷と並んで全国にはたくさん八幡様を祀る社がある。北九州の豪族宇佐氏の守護神だったが、数々の奇端を現して大和朝廷の西方の守護神となり、朝廷は、宇佐八幡に「八幡大菩薩」の号を贈った。大菩薩は仏教の号。神仏習合の流れを背景にして、宇佐八幡は鎮護国家・仏教守護の神として位置づけられます。
 八幡神は武家を王朝的秩序から解放するという、天照大神とは異なる世界を創る大きな役割があったため、武家が守護神として八幡神を奉ずることにもなる。
 一方で、八幡神は皇祖神として位置づけられ、天照大神とともに皇室を庇護したとする説があり、天照大神に次ぐ皇室の守護神とされてもいた。
 結局、「八幡様」、中世においては、武家(直接的には源氏系)の守護神としての立場と皇室の守護神としての役割という両面があったよう。
 その八幡宮を海底に存在させた発想は、いかに?
 笙野さん、神秘主義的になりすぎているのは、ちょっと気になります(マイナス面として)が、こここそが、彼女の依って立つ基盤なのだから、それはそれとして許容の範囲かな、とも思います。
 
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144 旧向島界隈

2009-10-30 06:34:42 | 歴史・痕跡
 墨田区立緑図書館は、よく利用する図書館です。昭和32年12月17日開館と言いますから、けっこう古い方ではないでしょうか。
 図書を借りるのも楽しみですが、墨田区の地域(郷土)資料や墨田ゆかりの文学者の草稿・書簡・画等を収集・保存しているのが、うれしい。
 毎月、郷土に関する文化講座、資料展示を行っていますが、1階ではコーナーが設けられていて、楽しみの一つです。3階では、文化講座。
 今月は、かつての「向島界隈」が展示されています。少し前にも紹介しましたが、小さくて限られたスペースの中、興味深い展示です。
 滝田ゆうさんの漫画や永井荷風の作品、玉の井のジオラマ、旧向島の絵地図などが展示されています。写真で紹介できないのが残念です。
 絵地図には、このところ少し執着していた京成電車・旧白髭線の線路跡も描かれて、地番や土地の特徴、建物の名前など実に細かにきれいに描かれています。
 そんな図書館からの帰り道、撮った写真がこれ。道が急に右カーブしています。
左側の直線の道との間が白髭線の線路があったところのようです。線路敷設のために道路を曲げた跡。線路は、右側の道路に沿って西に向かっていきます。
 gooの昭和22年の航空写真では、それがはっきり見えます。線路跡に沿って今でも家がちょうど貨物列車のように周りの建物の位置とはずれて建っています。 こういう風に昔を偲ばせてくれたのが、緑図書館の絵地図でした。
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143 東武線側からのスカイツリー

2009-10-29 19:52:54 | つぶやき
 東武伊勢崎線・業平橋駅直下からのスカイツリー。圧倒するような高さになっています。手前に見える防御壁のようなものは、ホームと線路を覆うような形で作られています。工事期間中だけのものなのか、永久的なものなのかは、定かではありません。
 写真を撮った辺りは、ちょっと古めの都営住宅が、何棟か建っているところ。曳舟川通りにはまだまだ昔ながらの街並みも所々に残っています。
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読書46「正弦曲線」(堀江敏幸)中央公論新社

2009-10-28 21:50:44 | つぶやき
 実に味のある装丁の本に出会った。全体的にぼうっとした感じで、背表紙も薄い色合い。書名も著者名も定かでない。そしてその書名・著書名は、背表紙だけ。
 人目を引くような装丁が多い中で、きわめて異質な出来合いになっている。
 表紙箔は、恩地孝四郎「ライチー・一枝」よりとなっている。
 ライチーは、ムクロジ科の常緑高木の果樹。中国南部原産で熱帯・亜熱帯地方で栽培される。「ライチ(ー)」は、広東語での読みを片仮名表記したもの。英語のlycheeは、広東語風にライチーとも、北京語風にリーチーとも発音する。
 花は黄緑色で春に咲く。果実は夏に熟し、表面は赤くうろこ状、果皮をむくと食用になる白色半透明で多汁の果肉があり、その中に大きい種子が1個ある。
 上品な甘さと香りから中国では古代より珍重され、楊貴妃が華南から都長安まで早馬で運ばせた話が有名(そうした贅沢が高じたために唐が国難に襲われた、という)。
 現在は中国南部、台湾、東南アジア、日本国内では沖縄など、そのほかオーストラリア、フロリダやハワイでも栽培され、日本にも輸入されている。
 以前、貰って食したことがあった。緑のいぼいぼの緑の皮をむくと、乳液風の白い果実が出て来る。大きな種があった。独特の甘さと微妙な食感があった。
 そのライチーの実が、いくつか枝に実っている。それがぼかし絵のように描かれている。
 題名の「正弦曲線」は、三角関数・サイン、コサイン、タンジェントのうち、サインを正弦と漢字では書く。正弦曲線は、サインカーブ。緩やかな曲線を描く。作者の言葉では、「端正な抽象化の匂いがある。」
 内容は、かつての映画との出会いや詩への出会いなどを元にした、エッセイ集。一つ一つが味わいのある小品。几帳面な作者らしく引用もしっかりしていて乱れは乱れのままに心模様を淡々と語っていく。
 それとよくマッチしてある装丁であった。今時これでは本屋さんでは見過ごされてしまうかも知れない。
 近所の図書館。そのためかどうか、わざわざ背表紙に題名と作者名のラベルを貼るという無粋なことがしてあった。
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142 今朝のスカイツリー

2009-10-27 23:52:15 | つぶやき
 台風一過、久々の爽やかな晴天。四つ木橋から見たスカイツリー。中央奥に朝日を浴びて輝いています。
 その左手に見えるのが、曳舟に建てられた高層賃貸住宅。これも、けっこう目立ちます。自転車で行き交う人々もまぶしい太陽の下、通勤に通学に心なしか軽快です。小松川橋からも建築中のスカイツリーが見えるようです。もうあちこちでその姿が確認できます。
 夜は、真っ暗で何も見えません。今からライトアップしたら、名所になるのではないでしょうか。でも、運転中に気を取られそうで、それこそ一大事。
 ところで、写真の右側上空、南西方向、四つ木橋の橋脚の上の方に、銀色に輝く丸い物体が見えます。
 拡大しても、ちょっと正体不明。あんな所に、丸く輝くものはあるはずもないし・・・、もしかしたら、UFOですか。他に気づいた方がいたら、教えて下さい。10月27日午前7時45分過ぎ頃です。
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ヒトラーユーゲントと批判する谷垣は何者?

2009-10-27 06:37:28 | つぶやき
 27日の朝日新聞朝刊によると、鳩山首相の所信表明演説を批判するついでに、谷垣氏は首相を拍手や歓声でたたえた民主党議員についても「ヒトラー・ユーゲント(=ナチス・ドイツの青少年組織)とか(のように)ね、ヒトラーの演説に賛成している印象を受けた」と批判した、という。
 政治的立場が異なる党派に対してはいくら酷評してもいいが、ヒトラー組織を持ち出して批判することは、野党第一党の総裁としていかがなものか。鳩山首相をまったく無批判に受け入れている態度が気に入らず、その民主党議員に対して揶揄するなら、もっと別の言い方・・・。
 これまで、拍手喝采で、首相演説を大歓迎していたのは、どこの政党だったか。批判的なヤジに対して、威圧的に対応していた議員達はどこの政党に所属していたのか。
 政敵を「ファシスト」「ナチス」呼ばわりし、今回の鳩山体制・民主党政治に対して国民の恐怖心を煽りたてること、政治的立場を失わせようとすることは、政策論議の場として意見をたたかわせる国会にもっともふさわしくない発言だ。まして「印象」という逃げ道を用意して発言するのは、最も卑劣なやり方だ。
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時代がかっていて、ちょっぴり心配だ

2009-10-26 22:42:21 | つぶやき
 急に寒くなりました。先週の金曜日くらいは、まだ肌寒い程度でしたが、土曜日曜と特に今日はぐっと寒くなりました。台風の影響もあるのでしょうが、北風が強い。ビル風も強く感じます。
 何だか秋を通り越して、いきなり冬になった感じ。夏から秋、そして冬という季節感がなくなって、夏から冬。冬から夏という、日本の四季が二季制になってしまったかのよう。近年はそんな感じがしませんか。
 半袖から厚手の長袖へ、毛布一枚から掛け布団へ、どうも年寄りにはこたえます。まして、インフルの大流行となれば・・・。
 さて、民主党・鳩山さん。政権奪取の意気込みが強すぎて、どうも表現について行けません。曰く「無血の平成維新」・・・
 鳩山さんが、今日の午後、衆参両院の本会議で就任後初の所信表明演説を行いました。たまたまラジオのスイッチを入れたら、何か重大事件が起こったのか、鳩山さんが例の政治資金の件で急に辞めたのかという、上ずった声が流れて一瞬びっくりしました。
 夕刊では、今回の政権交代による鳩山内閣の取り組みを「無血の平成維新」と位置づけ、国民生活と弱者を重視した「友愛政治」の実現に向けた決意を表明した、とのこと。
 首相は「変革の本番はまさにこれから」だと、初の国会論戦に臨む決意を表明。「戦後行政の大掃除」を実行する考えを冒頭で掲げ、官僚依存から政治主導、国民主導への転換を目指し、無駄遣い排除や天下りあっせんの全面禁止、情報公開の徹底を推進。
 「税金の使い道と予算編成のあり方を徹底的に見直す」として、財政構造の転換を図る考えを強調しました。
 それにしても、「無血の平成維新」とは、なんて時代がかった表現でしょうか。
武力革命によって政治支配を実現した(暴力革命)のではなくて、議会制民主主義のあり方のもと、正当、公正な選挙によって選ばれた政権交代だということを言いたかったのでしょうが、それにしてもまたぞろ「維新」とは、これまた時代錯誤的です。
 明治「維新」という強烈な「革命」印象。それを受けて、戦前から軍部の跳ね上がった青年将校達のスローガンは、「何とか維新」などと世情からももてはやされました。挙げ句の果てが、敗戦。
 戦後も何かあれば、「○○維新」と称して保守・右翼連中が声高に叫んでいました。それをこともあろうに、鳩山さんが堂々と国会の場で言い放つとはどうもいただけませんね。このままでは、ちょっと心配です、その高揚した、気負いぶりが。 昨今の季節感覚のように、オールorナッシングみたいで、ほどの良さがなくなっていると、ついて行けない年寄り、子どもが増えてきますから。
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141 175㍍を超えた東京スカイツリー

2009-10-24 23:15:22 | つぶやき
 孫。ちょっと見ない間に何か成長した感じが。背も伸びて、重たくなって、言葉遣いも達者になって・・・。それもわずか数日でも、と思うのは大げさですか。  ま、そのうち生意気になって、大人たちの心配をよそに大きくなっていくのでしょう。気がついたら、見上げるほどの背丈にもなって・・・。
 スカイ・ツリーがまさにそんな感じ。
 我が子の、孫の成長を見ているかのよう。他人の孫ならなおさらその成長ぶりに驚くやら、うらやましいやら、そんな感じもありそうな・・・。
 ギャラリーも朝に夕に増えて、川沿いに何人もの人が写真を撮ったり(携帯やらデジカメやら)集まっては見上げています。空にはたぶん撮影でしょうか、ヘリコプターが旋回しています。赤の他人でも自然と会話が弾んでいきます。不思議な効果がありますね。
 写真は、そんな何日か前の、錦糸町駅の北側の街並みから撮ったものです。存在感が充分ありますね。
 
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東京都の教育事情

2009-10-23 23:53:05 | つぶやき
 最近の話題(どうもやっていることがちぐはぐな感じが)。
〈その一・小学校教員採用を地方で〉
 すでに夏休みに選考試験を終えて、合格者を発表したはずなのに。地方でもやらないと不足が出て来るように。今や小学校教員の採用倍率は2.6倍。実質は辞退者もいるから2倍を切っているのではないか。どうしてこうなってしまったのか?
 あまりにも厳しい管理体制の中で苦労する、今の東京都の学校現場の実態を受験生は、よく知って敬遠しているのじゃないのかな。
〈高校推薦入学制度見直し〉
 教育委員会の席上、元副知事が推薦入試制度に異論。次回に再検討。曰く「推薦で入るのは甘い。もっと競争原理を入れるべきだ」と。今や国公立大学を含め、多くの大学、推薦入学制度が定着している中で、都立高校は見直しへ。この時期に変更されたんじゃ、受験生は大変。思いつきの発言は、大混乱のもとだ。
〈高校の臨時増学級〉
 見通しの甘さから来年は、1600名以上の定員増を。該当した普通科高校はてんやわんや。何しろ俗にいう、中堅校かちょっと下のレベルの普通高校。低倍率の高校で定員を増やしたら、ますます大変。
 どうせなら希望者が多い、日比谷、青山、西、国立など進学重点高に定員増をすれば、私立に流れる上位層も取り込めるのに。
 昨日今日の教育委員会のやっていることは、よくわからんぞなもし。
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読書45「禁じられた江戸風俗」(塩見鮮一郎)現代書館

2009-10-22 20:40:06 | つぶやき
 鳩山政権。改革というよりは「革命」的展開とも。次々とマニフェストを実行に移すために次々と発信。たしかに勢いはある。自公政権の積年の膿を出すべく奮闘中といったところか。
 自公。「郵政民営化」一本で大量当選したはずが、それだけではなくて、一気呵成にやりたい放題、そのあげくに、国民不在の政権たらい回しで、国民にそっぽを向かれ、自壊。
 民主党も成果を競い合って、気がついたら国民生活不在、地域破壊になっては元も子もない。
 「改革」という大義名分のもと、錦の御旗を振り回しての強引な政権運営では、またしても「国民生活」の安心・安定にはほど遠い政治になってしまう。「国民生活第一」と掲げた以上、この視点に立った政治を行ってほしいものだ。
 「改革」と言えば、江戸時代の三大改革。享保、寛政、天保。
 中でも、「天保の改革は一握りの自己過信の強い政治家がおこした強権政治にすぎない。」というのが、今回の筆者の主張。改革とよべるものではないし、こうした一種の恐怖政治を「改革」と呼ぶのは読者をだまくらかすことだ、と。
 江戸のアンダーグランドの世界、人々の生き様を一貫して見つめている筆者の現代民主主義社会、別名「代議制」、議会制民主主義制度に置かれている現代市民への警告にもなっている。
 「改革」という名の横暴がまかり通っていった、その先には、新たな別の恐怖政治が待っているかもしれない。
 庶民のささやかなファッションや華美(食べ物、髪型、風俗、娯楽・・・)を徹底的に禁止した社会は、ファシズム以外の何物でもない。気がついたら、そうならないよう。
 老いてますます意気軒昂な書でした。
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読書44「戦中派不戦日記」(山田風太郎)講談社文庫

2009-10-21 23:59:27 | つぶやき
 ドナルド・キーン氏の本に触発されて、改めて山田風太郎氏の「日記」を読み直した。昭和20年(1945年)1月1日から12月31日まで。8月15日をはさんだ克明な記録。敗戦から戦後の大転換。激動の時代にあって、たしかにある意味では冷静に、ある意味では過激につづっている。まさに23歳の医学生のありのままの心情。
 昭和20年1月1日。薄曇りのち晴れ。「運命の年明く。日本の存亡この一年にかかる。祈るらく、祖国のために生き、祖国のために死なんのみ。」
 東京においても米軍による空襲が日常化している中で迎えた新年。午前中から飲みに出かけ、酔って帰ってきた筆者は、「午後より家にてまた飲み、夕ついに嘔吐して泥の如く眠る」とある。これ以後、書かれている内容は、空襲の惨劇の見聞が多くなっている。その間の授業と読書・・・。実に活発にあちこちを歩き回っていることが分かる。
 「過去のすべての正月は、個人国民ともにそれぞれ何らの希望ありき。目算ありき。・・・しかも今年に限りてかかる目算立つる人一人もあらざるべし。」連日連夜の空襲で疲弊している市井の人々の姿を目の当たりにする。
 「ただ全日本人が夢遊病者のごとく、この凄烈暗澹たる日本の運命を、両手にて支え、一切他事を思う余裕なきが、この正月の気分なり。」
 3月10日の下町大空襲。空前の惨状に、復讐を訴える。「・・・さらばわれわれもまたアメリカ人を幾十万人殺戮しようと、もとより当然以上である。眼には眼、歯には歯を以てしよう。この血と涙を凍りつかせてきゃつらを一人でも多く殺す研究をしよう。・・・全日本人が復讐の鬼となってこそ、この戦争に生き残り得るのだ。」と。
 一方で、大学では医学部の授業は、試験もあったりして、惨劇があった後とは思えないほど、淡々と日常のように行われている。
 運命の8月15日。「炎天。帝国ツイニ敵に屈す。」とだけ記された。翌日は、かなり大量の文章を書いている。「われわれは、鋼鉄のような日本人、不撓不屈の意志力持った日本人を創造しよう・・・」高揚した気分がひしひしと伝わってくる文体。今読むとかなりの違和感を持つ文章ではある。彼は最後に書く「戦いは終わった。が、この一日の思いを永遠に銘記せよ!」
 後、青年・山田誠也は、「山田風太郎」として作家デビュー。「忍法帖」シリーズなど独特の作風で一世を風靡する。東京大空襲の日、敗戦の日に誓った激しい「復讐」心は、どのように昇華されたのであろうか。
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読書43「日本人の戦争」(ドナルド・キーン)文藝春秋

2009-10-20 22:20:34 | つぶやき
 以前、山田風太郎の「戦中派不戦日記」を読んだ。講談社文庫から出たこの本は、昭和20年1月1日から12月31日まで、満23歳の、一医学生がつづった激動の昭和20年の日記である。山田の後書きによると、小学校の同級生男子34人中14人が戦死している。筆者は、医学生ということで兵役を免除された。その事実からこの日記は「傍観者」の記録ではなかったか、と。
 一方で、その山田の日記から、筆者は、「山田は日本の勝利を心から望んでいたし、勝利以外の終戦は想像することさえ拒否していた。東京空襲を目撃した後も日本は降伏すべきではないと言う確信は揺るぐことがなかった」と総括する。「二人の世界観は、根本的に違っていた」とも。
 また、医学書などそっちのけで、英米やフランス文学などを濫読していた山田に対して、キーン氏は、読書によってその人の世界観が形成されるなどというのは勘違いで、山田は自由の重要性を少しも感じていないことは不可解である、とも。たしかに山田は日記中でも、一貫して、アメリカに対する復讐をヒステリックなほど叫んでいる。このへんのキーン氏の分析は興味深い。
 「作家の日記を読む」との副題を持つこの本に登場する作家は、山田風太郎をはじめ、高見順、伊藤整、内田百、平林たい子、永井荷風・・・。この中では、荷風の日記は読んだことがあった。徹底した「反戦」「軍部批判」に貫かれている。
 他の作家達の日記の多くは、戦争批判や体制批判とはほど遠い。
 8月15日。この日を期に転換した作家たち。荷風のように戦争中は自ら発表しなかった姿勢の一貫性。
 いずれにせよ、後から(戦後になって)回想したものよりも、戦争という惨禍と変化の時代に日本人であるとはどういうことかが日々記録されていることに真実の声を見いだしている。
 なお、荷風の日記は、戦後書き直されたという説、「軍閥への憎悪や占領軍に対する好意を強調した」という意見も紹介している。
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JR西日本だけの問題か

2009-10-18 20:16:39 | つぶやき
 朝日新聞18日付朝刊社会面。
 JR西日本は、宝塚線(福知山線)脱線事故の調査情報漏洩(ろうえい)など一連の問題を受け、17日「おわびの会」を開いて、被害者に問題の経緯を説明し、謝罪したが、参加者からは、同社の企業体質を問う厳しい声が相次いだ、という。 もともとこの会合は、非公開で行われた。さまざまな被害者感情などの事情があるにせよ、報道陣はその内容や感想など、出席者から聞くしかなかった。そういうやり方がいいのかどうか、社長以下幹部が、説明資料等によって事前・事後にきちんと記者会見をすべきものではないか。 
 JR西の事故被害者に対する説明会は、今回で8回目。同社はそのたびに、「被害者への精いっぱいの対応が最優先」と言い続けてきた。それがすべてまやかしであった。会社組織の自己防衛にしか、幹部の視点がない。
 「これが誠心誠意と言えるのか」「表向きは『精いっぱいの対応』と言いながら、裏では自分たちのことばかり。そんな幹部ではJR西は変わらない」。被害者は失望感を口にしたという。
 これが、「鉄道」という公共事業でなければ、例えば「雪印」のように責任者の辞任にとどまらず、消費者からのNO!などによって、経営が行き詰まっての「倒産」という事態に発展するだろう。国鉄以来の親方日の丸、国鉄一家、天下り体制、官尊民卑、さらに政界癒着(長年の自民党政権下での)・・・。
 「あなたはなぜ社長になったのか」と問われた山崎氏は「企業防衛に考えがいってしまったのは事実としか言いようがない。おわびするしかありません」と答えるのがやっと。「企業防衛」というより、「自己保身」しか頭にない連中が幹部の会社って何?
 かつて、山一証券が倒産したとき、記者会見で、当時の社長が「社員の皆さんには責任がない」といって落涙したことがあった。それをふと思いだした。そういう意識すらない。まさに地に落ちたエリートの惨めな姿。取締役にしがみついていて、もしこの間の不祥事が公にされなかったら、いつまでもその地位にいたにちがいない。
 さらに、「公表前の調査報告書が社内にあって、おかしいと言う社員はいなかったのか」そう追及した男性に対し、山崎正夫前社長は「私の知る限りいなかった。当時の社内はそういう状況でした」と力無く答えた(「嘘」くさい演技だったに違いない)。
 事故当時、社内研修のやり方に、外部から厳しい批判があったが、内部告発すらなく、声を上げる社員はほとんどいなかった。そして全ての責任を死んだ「運転手」のミス等に押しつける、ともみられる言動に終始していた。
 負傷者の家族の女性は「『犠牲者の無念を思うとやるべきではない』と言える人がなぜいないのか。そんな会社は信用できない。今までで一番腹が立つ」と憤りをあらわにした。
 同社をめぐる一連の問題の発覚が、国土交通省の発表だったり、報道だったりした点にも批判が集中。「ずっと言わないつもりだったのか」と質問が飛ぶと、土屋隆一郎副社長は「検察の捜査を通じての指摘を、我々が申し上げるべきかどうか悩んでいた。結果的に後手後手になってしまった」と釈明した。バカ言ってるんじゃない。「悩んでいた」という言葉は、もっと重いもののはずだ。悩み苦しみ、その果てに、自ら生命を絶つ人もいるのに。これほど「軽い」ものだったとは。
 大学生だった長女(当時21)を亡くした参加者は、終了後、「言い訳だけの集会だった。JR側からは、これからの取り組みについての話があったが、本当にできるのか信用できない」と話した。こうなったら、会社それ自体を潰すしかない、と思ってしまう。そして、これまでの政治家の責任はないのか、とも。
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読書42「おかしな科学」(渋谷研究所X+菊池誠)楽工社

2009-10-17 17:43:51 | つぶやき
 どうも最近は読書熱も冷めがち。ちょっとゆっくり読む時間が・・・。たまに図書館に出かけて借りてくるものが多い。
 この間の日曜日。図書館脇の道に車を停めておいて、ほんの20分。その間に、駐禁のシールが貼られていた! かなりショック。例の自転車の二人連れに見事にやられてしまったわけ。
 それでいて借りてきたのが、今回の本など、実に軽薄本。あまり触手を動かすものがなかったので、借りてみただけ。何だかいまだに気分が晴れない。
 というわけで、今回紹介する本は、実に高価な書籍。実際、中身の割には1500円+消費税、とはかなり高すぎる! ま、800円くらいが適当な価格かも。 
 取り上げているのは、巷でもてはやされるエセ「科学」商品やらブーム。ちょっと古い内容が多いのが残念。マイナスイオン。血液型、波動、水さんありがとう、ゲーム脳などなど。
 本人達は至極真面目だが、どうもその軽薄さと底の浅さが気になるところ。柳田理科雄さんにくらべると、ちょっと落ちる感じ(失礼)
 わざわざ自己紹介で、批判した血液型を載せているのも、ご愛敬か。わざわざ書店で大枚を払って買う気にはなりそうもなかった。
 それにしても、15000円は痛かった! こんな本のために払うことになったと思うと(これがホントの八つ当たりというやつ、いや、ばちあたりというやつ)
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カルザイの延命に寄与するだけ?

2009-10-16 18:20:44 | つぶやき
岡田外相、アフガン訪問 米大統領訪日確定/給油継続どう… 進まぬ支援策決定(産経新聞) - goo ニュース
 鳩山新政権。次々と政権公約を実行に移そうと必死に動いています。なかにはどうかと思う(時期尚早)ものもありますが、その実効性や評価について、巷でも話題が尽きません。マスコミも連日の報道。そのスタンスも面白い。
 この間の総選挙。有権者の意識は、10年間の自公政権の、国民生活無視、やりたい放題、好き勝手な政治にうんざりして、怒りを「政権交代。」で民主党に。それほど、民主党のマニフェストを支持した結果とは思えません。
 が、民主党、マニフェスト実現に向けていかに頑張るか、閣僚も党内も競い合っています。自民党(公明党が、どういうわけか、つぶれてもおかしくなかった自民党の延命に手を貸しましたが)の政官癒着、しがらみ政治打破は、実に小気味よい感じすらします。
 新聞でも、「産経新聞」は鳩山政権に対して「野党宣言」。徹底して反民主キャンペーンを行っています。やることなすこと、批判・ケチつけ・揚げ足取り・・・に奔走。読者に民主党に対する不信感・不安感を煽っています。
 ま、その主張に支持する方が、それぞれ、好きな新聞を読んでいるのでしょうから、ご勝手にどうぞ、ということですが。このアフガン問題も同様。どうするんだ、何も成果がないじゃないか、と。
 むしろ、今のアフガン情勢をふまえれば、徹底した不正・インチキ選挙によるカルザイ大統領当選(これすら確定していないし、国際世論も、厳しく批判)。国内でも支持が低迷、アメリカの庇護の元、その傀儡政権担当者たる自らの延命を図るしかないこの男に、今、会いに行くちょっと(かなり)おっちょこちょいの岡田さんに、はっきりと苦言を呈するべきでしょう、どのマスコミも。「空気が読めない」は、誰か?
 アフガンに介入して、ソ連は崩壊、アメリカも泥沼。テロ組織・アルカイダ殲滅のためにアフガンを軍事制圧してみたものの、いまだにっちもさっちもいかなくなっている。
 生活苦や反米からタリバンに流れていくアフガン国民(といっても部族中心主義で、西欧的な近代「国民国家」などという概念は持っていない)。金も人もまさに垂れ流し状態で一向に解決していない。
 アメリカの対テロ「戦争」メンツのために、日本はこれ以上、お金も人も犠牲を払うことはない。軍事的支援(給油)を止めて、民生でいう方向は正しいが、それも相手の国に、国民から正当に選ばれた政権があってのこと。そのことにけじめをつけずに、のこのこと出かけていく政治的・国際的センスを疑う。自公政権の盲目的、対米従属よりはましかもしれない。的外れに論評する産経よりは・・・。

 
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