ヤマザキマリさんの「偏愛ルネサンス美術論」(集英社新書)が面白そうだったので、書店で購入。
表紙
(カバーにある本書の紹介)
大ヒット漫画『テルマエ・ロマエ』のヤマザキマリを、ただ古代ローマと風呂が好きなだけの漫画家だと思ったら大間違い。実は一七歳で単身イタリアに渡り国立美術学校で美術史と油絵を学んだ筋金入りの美術専門家なのだ。そんな彼女が初の美術論のテーマに選んだのは、偏愛する「ルネサンス」。しかしそこは漫画家。あの大巨匠も彼女にかかれば「好色坊主」「筋肉フェチ」「人嫌い」と抱腹絶倒のキャラクターに大変身。正統派の美術論ながら、「変人」をキーワードにルネサンスを楽しく解読する、ヤマザキ流芸術家列伝!
(筆者略歴)
ヤマザキマリ
漫画家。1967年東京都生まれ。1984年よりイタリア国立フィレンツェ・アカデミア美術学院で美術史と油絵を学ぶ。1997年漫画家デビュー。2008年連載開始の『テルマエ・ロマエ』が空前の大ヒットとなり、2010年のマンガ大賞、手塚治虫文化賞短編賞を受賞。評論、エッセイの著書も多数。
(感想など)
ミケランジェロやレオナルド・ダ・ヴィンチをはじめルネサンス時代(14世紀~16世紀)の芸術家は、とっつきにくく、作品もあまり馴染みがないのですが、フィリッポ・リッピ(1406~1469)から話が始まる本書で、ルネサンスが身近に感じられました。
ヤマザキマリさんは、イタリアで絵画の修行をしており、各地で本物の絵や建築物を観たり模写しているので、説明が具体的でわかりやすく、興味が最後まで持続します。画家の選択は、好みなどが入っていると思いますが、却って、名前などが後に残ります。
イタリア料理の「カルパッチョ」は、画家のヴィットーレ・カルパッチョ(1455頃~1525頃)の名前に因んだものだということは、初めて知りました。ダンテの「神曲」が、現代でも朗読されているなど、イタリア居住ならではのトピックスも入り、活きがよくて、面白い本です。
(以下気になった絵など)
フィリッポ・リッピ(1406~69)「聖母子と二天使」。『恋する「お坊さん」がすべてを変えた』と記し、リッピは、ルネサンスの始まりを象徴する画家だと著者は位置づけています。
ラファエロ・サンティ(1483~1520)「大公の聖母」。下段は、「アテナイの学堂」の一部。
上段に、アントネロ・メッシーナ(1430頃~1479)「受胎告知の聖母」。
ヴィットーレ・カルパッチョ(1455頃~1525頃)「聖十字架遺物の奇跡」。『ヴェネツィア・ファッションの伝道者』と著者は記し、遠近法が上手なことにくわえ、人物のキャラクターの描き分けが見事で、漫画的な感覚のある絵と評しています。
(著者が描いた画家の似顔絵)
各章の扉には、著者が描いた似顔絵が掲載されていて、親しみも湧きます。
(カバー裏に記載された本書に登場する芸術家たち)
【ヤマザキマリ ホームページ】
Home - Mari Yamazaki (yamazakimari.com)
次の本もかなり面白かったです。
原田マハ・ヤマザキマリ著「妄想美術館」(2022年1月発行、SB新書)