明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



朝T屋に行くと、奥さんの代わりに、いつもは10時過ぎに昼定食の準備に下りてくる主人のHさん。先日50になったという。「これを機会に外に飲みに行くの止めようと思って」。「どのくらい?」「5年くらい」。「ウソだろう?」「ホントだって。だけど、お祝いとかあったときは別だよ」。 中学卒業まで裸足だった運送会社のKさんが来る。昨日、今日と、飲みすぎと寝不足で会社を休んだらしく顔色が悪い。「Kさんちょっと飲みすぎなんだよ」。定年真近のKさんにHさんが説教。横で訊いていると、虎が狼に説教しているようである。いや目糞が鼻糞に、が近い。 帰り際、Hさんから今晩満月だと訊いた。来週早々締め切りのアダージョに、丁度満月を入れようか決めかねていたのである。「Hさん、今晩さっそく満月でお祝いだろ?」
帰宅後着彩を始める。細々と部品はあるが、ほぼ黒ずくめなので、時間はそれほどかからなかった。夕方完成。続いて、マンションの屋上に続く階段に三脚を立てて撮影。階段の高さによって、様々な光の状態を選べる場所があり、丁度50センチ前後の人間を撮影するのに最適である。すでに撮影済みの背景に合わせて構図は決めてあるので、フィルム1本で終了。現像に出している間、ほぼ満席のK本にて30分だけ過ごす。1カットを選び、フィルムのスキャニングに麻布十番の田村写真に行くが、休み。あとで訊くと、急遽写真展のレセプションに出席ということであった。これで今日はやることがなくなってしまったが、これは、アダージョの表紙に、今晩の満月を入れろ、ということだと解釈する。  明け方に一時間ほど寝ただけなので、T屋で飲んで寝てしまおうと行くと、朝、いつも夜勤明けで飲んでいる、タクシー運転手のTさん。すでにベロベロである。T屋の客は、酔っ払っては、オチもない話をする客がほとんどだが、生まれも育ちも深川のTさんは、話をしていて楽しい。 地獄に行っても、鉄砲で鬼を4人は倒せる、といっていたN大射撃部出身のTさんは全日本で14位になったことがあるそうだが「20人くらいしか出場してないんだけどさ」。と笑っている。「麻生の太郎は、俺より幾つも上だけど、大会に、いつもいー女連れてんだよ」。「三橋達也も射撃やってましたよね?」「達っちゃんは良い人でさ、俺ら学生に・・・」ロレツが回っていないが、大会を見学に来た学生に、あっちの草むらで煙草吸ってこい、といってくれた、といっているようである。幼い頃、洲崎パラダイスの遊郭の女達に可愛い、と拉致され、見つかった時は、ほっぺたが口紅の跡だらけだった、というTさんに三橋が出演している『洲崎パラダイス赤信号』勧めておいた。 T屋に置いてあるアダージョの谷崎特集を見て、「石塚さんの作ったタニさんは、どうでもいいんだけどさ、この三味線の彼女が良いんだよなァ」。「来週1冊持ってきますよ」。屋上で満月を撮影し本日終了。

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