明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



NHK教育に中村吉右衛門がでていて、初代の吉右衛門の話をしていた。思い出して箱の中をごそごそやって、初代の直筆サインが入った写真を引っ張り出す。達筆とはいえず、何か色々書いてあるが、全く判らない。確か初代の娘が嫁ぐ時に、男の子を二人産んで、一人は吉右衛門にする、といったのではなかったか。新藤兼人の『藪の中の黒猫』(68’)を映画館で観たのは、小学生の時であった。兄貴の染五郎に較べて不細工で、などと思っていたものだが、今ではよっぽど良い。  その頃、歌舞伎界の大名跡だとも知らず、海老蔵ってヘンな名前、と思ったのを覚えているが、松本幸四郎の『王様のレストラン』『のだめカンタービレ』を観たあとK本に行き、たまたま女将さんが海老蔵の話をしていたが、なんかヘンだな、と思ったら、当代の團十郎のことを、まだ海老蔵、といっているようであった。いや、ひょっとして十一代目團十郎の“海老さま”かもしれない。女将さんのことだから、それも有得る。私にしたところで、未だに幸四郎を染五郎、勘三郎を、勘九郎といってしまいそうになるし。  幕末から明治に生まれた役者の芸談というのはやたら面白く、七代目松本幸四郎の『藝談一世一代』(昭和二十八年)を読んだばかりだが、それも入っていたが、探していた七代目市川中車の『中車芸話』が入っている日本の芸談(九藝出版)シリーズが届いた。昔の雑誌を見ると太閤記の光秀の、中車の独特のポートレイトが気になっていて、八百蔵時代の色紙も入手済みである。それにしても、昔の役者の構えの良さといったらなく、気になるポートレイトがあると、つい買ってしまうが、入手しやすい割りに印刷ではなく、プリントであるところが嬉しい。歌舞伎など判らなくとも、物のバランスが多少判れば違いが判る。有名無名係わらず面白いが、やはり有名な役者に限って、その分構えが磐石だったりする。

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