明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



ここ数年、私が図書館で浮世絵や日本画ばかり観ながら、なんとか写真でこんなことができないものか、と考えていた時、ポイントとなる陰影や遠近法について考えていると、日本と西洋の狭間にいたのが葛飾北斎と娘の応為であった。北斎は西洋の遠近法をかなり研究していたと思われ、同時代の浮世絵師と比べると、その正確さは抜きん出ている。画法においても自分なりに油絵の具を制作を試みていたり。美人画においては北斎が自分より上手いといった娘の応為は、たしかに光と陰の描写において、当時の常識からいって別次元の作品を残している。明治期の寄席を画像で再現し、そこに三遊亭円朝を立たせた時、寄席から漏れる灯りを円朝に当てるかどうか、当てるとしたらどのように、どのくらい当てるべきか、と思い悩んだ時に、参考にしたのが応為作品であった。しかし、江戸の旧時代から新しい表現を模索していた北斎親子に対し、デジタルカメラを道具としている私は、親子が脱却しようとした時代の表現を、という妙なすれ違い方であった。結局、自分のしようとしていることすら把握していなかった私は、主役であったはずの円朝をどかし、わずかに寄席の看板に円朝の名が残るのみいう結果となった。その後、新版画の川瀬巴水のようにテーマによって陰影、光の扱いを使い分ける、という方法しかない、と考えるようになっている。 意外とあっさり『鏑木清方作三遊亭円朝像へのオマージュ』ができてしまった時は、自分で作っておきながら良く解っていなかったが、自分はどういうことをしようとしているのか、ということを考えるために当ブログを書くことが役に立っている。

月刊ヘアモード12月号 no・693
不気味の谷へようこそ第9回 脳内イメージを表す人形写真

※『タウン誌深川』25日“明日できること今日はせず”連載5回「芭蕉の実像」

※深川江戸資料館にて九代目市川團十郎像を展示中。11月12日まで。

HP

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