明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



田村写真にてオイルプリントのワークショップがあるとのことでプリントも頼みたいので顔を出す。受講者は今回も1度目でなかなかの出来映え。テクニック的には上級者コース?のブラシの使い方を伝授。塗布するゼラチンを厚くすることでハードルを下げることができた石塚式オイルプリントであるが、ユーチューブを観た海外の人からも「あんたのやり方はいやに簡単だな。何でだ?」と不思議がってコメントを貰った。柔らかいブラシによる触るか触らないかの“産毛タッチ”?による最後の仕上げはゼラチン層の厚い石塚式ならではのブラシの使い方で、ネットで初めて海外のブロムオイルの老作家が、大きなブラシを逆手に持ち、ドカドカと乱暴にブラシで叩きながらプリントしているのを観て、手本もなく、何も知らずにやってきて、私独自のプリント法を得ていたことを始めて知った。電動大工道具にブラシを取り付けてドカドカやる輩までいる有様で呆れ返った。もう1つ。数年前に考えた修正法は、今まで失敗だ、と数々のプリントを捨ててしまって後悔している。こうなると、やはりオイルプリントの簡単な指南書を作ってみたい。私が参考にした明治、大正時代の指南書は、「私の秘法を伝授しやうと思ふ」。などとぬかしておいてたいした秘法ではない場合が多いのであった。 手透き和紙にプリントしてもらった『ゲンセンカン主人』についで『明治の寄席前の三遊亭円朝』(仮)も三度目の正直で田村写真にてプリントし直しをお願いした。写真の身も蓋もない所から脱却しようと今年に入ってジタバタしていたが、私も案外律儀な所があり、白黒はっきり付けて、とつい思ってしまうのだが、もともと浮世絵、日本画の自由さに惹かれていたのに常識からなかなか逃れることが出来ず、ようやくテーマごとに使い分けてもいいではないか、と思えるようになった。遠近法については『ゲンセンカン主人』。陰影法については『明治の寄席前の三遊亭円朝』。ようやく結論を得た。


オイルプリント

2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界』より

月刊ヘアモード12月号 no・693
不気味の谷へようこそ第9回 脳内イメージを表す人形写真

※『タウン誌深川』25日“明日できること今日はせず”連載5回「芭蕉の実像」

HP
 

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )