明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



手足を人間と合成する予定の1作目だが、被写体の爺が暑いだ寒いだすべったの転んだの、と能書きが多いのを思い出した。先に造形しておいて、それに合わせるより、爺を先に撮影して、それに合わせて造形した方が良い、と考えた。 7年前定年を迎え、昼間から飲んだくれて暇そうだし、身長が163センチの三島由紀夫と同じくらいだったので、浜松の航空自衛隊に連れて行って、展示してあるF-104の操縦席に三島を乗せるにあたりスケール代りに座ってもらったり、『潮騒或は真夏の死』では、浜辺に寝転がる三島の、海水に接している部分だけ爺で撮って人形の三島と合成したり、60代にしてはしおれている手足を柳田國男の手足として使った。本人を知る人からすれば、民俗学の大家、柳田國男先生の手足に、なんて人物を起用するのだ、といわれてしまいそうだが。 酔っぱらって救急車に9回、パトカーに2回乗っている。最近の相撲界の騒動で報道されているたった数針の怪我や、医療用ホッチキスなど、この人物の騒動を見慣れている目には、でかい図体して何を大げさな、と思えてしまう。 今回先に人物を撮っておこう、と思ったのは制作中の人物が180センチくらいの身長だったので、プロポーションのことを考えると造形した物に合わせてもっと曲げろ伸ばせよ、いうより、爺に合わせて造形すべきだろう、と方針を変えた。よって2作目に予定していた立像をまず先に作ることにした。

2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界』より

月刊ヘアモード12月号 no・693
不気味の谷へようこそ第9回 脳内イメージを表す人形写真

※『タウン誌深川』25日“明日できること今日はせず”連載5回「芭蕉の実像」

HP

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