明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



昨年末、ブルースハープ(ハーモニカ)の草分けにして第一人者である妹尾隆一郎さんが亡くなった。昨晩、フェイスブックの書き込みを見ていて、ひょいとヤフオクを検索したら『ブルースのすべて』が出ていて即落札。私の人生を変えた1冊である。人に貸したまま帰って来ず、見るのは30年以上ぶりであろう。怪獣、妖怪、プロレスラー図鑑のようにブルースミュージシャンが載っていたが、ジャズマンとはあきらかに異なるヘアスタイル、プロレスラーのような芸名。そして面魂。そのビジュアルに打ちのめされた。これがきっかけにブルースファンとなる。そしてブルースブームの到来。街の普通のレコード屋にも並ぶという有様で、残っている高校時代のノートの悪戯描きは、プロレス、ボクシング、相撲、そしてブルースマンだらけである。その数年後、自分の陶芸用窯を作るため、溶接工をしていたが、暇つぶしに悪戯描きの延長のように粘土で、架空の黒人ブルースマンを作り始め、それが最初の個展につながった。『ブルースのすべて』には妹尾さんによるブルースハープの吹き方、妹尾式ハープ譜というのが載っており、半音、いわゆるベントが始めて出来て、すぐ近所の同好の友人宅に走った。 高校時代、東京でも東の土俵際生まれからすると、中央線沿線は、フォークやブルースマンが毎日酔っぱらって喧嘩していると思い込んでいたが、実際出かけるようになり、特に始めて妹尾さんにお会いしたとき、若いミュージシャン等と飲みながら割り勘の会計をされてるのを見て驚いた。なにしろ『ブルースのすべて』とともに“始めての人” である。その後お宅にお邪魔したり、我が家にも来ていただいたが、どうしてもあがってしまった。そういえば、私の最後のジャズシリーズの個展にも来ていただき、突然、ハーモニカを吹いていただいた。それは客が居ようと居まいと続き、その様子を写真に撮った記憶があるが、私がへたくそで、ギャラリーでサンドイッチをむさぼり食べてる人にしか見えなかった。
 

※2016年深川江戸資料館での朗読ライブ映像。
『人間椅子』
『白昼夢』
『屋根裏の散歩者』
ピアノ嶋津健一 朗読田中完

2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界』 youtubeより

『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載6回「夏目漱石の鼻」

HP

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