明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



ホームの母に頼まれた荷物があった。昨日送るといって送らなかったので、今日は送らなければ、と思ってはいた。最近の宅急便は人出不足で集荷が午後4時の一回きりらしい。立像の北斎を仕上げていて、なかなか腰が上がらない。気がつけば30分過ぎていた。小学校の図書室で、始業のチャイムが鳴っていても図書室から出て来ず、しばらく図書室出禁になってしまったが、未だに同じことをやっている。教師の声が聴こえていないのでは、と担任の薦めで母に耳鼻科に連れて行かれた。母と買い物に行くと、手を繋いだまま小さな声で私の名を呼んで試すのだった。一度、近所まで来ていただいた方を随分待たせてしまい、20分前まで気にしていたのに、と反省して作業中用の目覚まし時計を買ったこともある。母には噓の言い訳をして、明日は必ず送るといっておいた。 しかしその甲斐あって?北斎を作りながらアイデアが浮んだ。『寒山拾得』にはもう一人、豊干という僧侶が登場する。いつも虎に乗っていたり、虎をソファがわりに寝ていたりする。豊干は作る予定はないが、もし作るとしたら虎はどうする?エドガー・ポーの『モルグ街の殺人』では多摩動物園のオランウータンを殺人鬼に仕立てたのは面白かった。しかしどうも今回は物語上の人物で、上野動物園の虎ではピンと来ない。ホントとウソのブレンドの妙が感じられない。と思ったその時、名案が棚からボタモチのように湧いた。このアイデアを使うためだけに虎と豊干を作っても良い。そして時刻は4時半になっていた。

※2016年深川江戸資料館での朗読ライブ映像。
『人間椅子』
『白昼夢』
『屋根裏の散歩者』
ピアノ嶋津健一 朗読田中完

2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界』 youtubeより

『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載6回「夏目漱石の鼻」

HP

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