明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



無酸素でエベレストに挑戦した登山家が亡くなった。私は子供の頃、登山家は何かの調査をしていると思っていた。危険を顧みず偉い人達だ、と。それがただ登っているだけと知り、私が高所を好まないこともあり、以来、何故連中が変態扱いされないのか不思議である。親不孝といっても、人形作って死んだ人は聞いたことがない。それはともかく。 明日は会場で北斎を撮ってみよう。今回の個展では、北斎は『蛸と画狂人葛飾北斎』と『赤富士』の2点しか考えていなかった。北斎は部屋が散らかると片付けることなく転居した。こんな人物を制作するのに、私程適任な人間はいないだろう。理由は書かないでおく。私が制作した北斎は、床屋でも行ったように髪や髭は綺麗にサッパリしている。散らかった画室で不精髭を生やし、制作に没頭する北斎。昼であったら窓から遠くの富士山が見えるのも良いだろう。行灯の妖しい光の元、モデルを前に春画用スケッチに没頭する北斎。陰影を排除して制作していると、反動でそんな光で制作したくなるのは会場にお出での方にはお判りいただけるだろう。思いっきり妖しい北斎を制作するのに、私程適任な人間はいないだろう。書きたいが理由は書かないでおく。 制作時間の残りを考えると、これからは思い付いた物をいちいち作っている訳にはいかない。何を作らないか、がより肝腎になっていくだろう。そもそも北斎だって作る予定でなかったのに、蛸に絡まれる北斎を思い付いて手を出してしまった。しかしやってはいけない、という心持ちが制作に拍車をかける場合があるから気をつけないとならない。

銀座青木画廊「ピクトリアリズム展Ⅲ』5月12日(土)〜5月25日(金)20日(日休)4月23日(休)

鴨沢祐仁とイナガキタルホの世界:5月19日(土)~6月3日(日)12時~19時/月曜休み
場所:ビリケンギャラリー 東京都港区南青山5-17-6-101
TEL 03-3400-2214

『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載8回『昭和残侠伝“唐獅子牡丹”三島由紀夫』

2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界』 youtub

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