明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



なんでも蛸の価格が高騰しているらしい、ヨーロッパ、中国、しまいにはアメリカ人も食べ始めたという。なんの為に蛸はあんな化け物じみた姿をしていると思っているのか。日本人以外に食われないためである。北斎に蛸を絡ませている時、最後に色を変えるまではほんとに気持ちが悪かった。北斎の描く蛸風に目を変えたが、実際はなんとも凶悪な目をしている。  父が亡くなる前、アメリカ人と結婚した妹が息子二人と共に家族で帰っていたので皆で食事に出かけた。妹の旦那は当時日系企業に勤めていて、しょっちゅう日本に来ては日本人と付き合いがあったからなんでも食べる。蛸の刺身もぺろっと食べてしまった。父が蛸は?という顔をしたが、追加注文することなく、蛸を食べる最後のチャンスを逃してしまった。すぐ亡くなると思っていなかったので、気が付いていた私も放っておいた。その時の父の表情を思い出すたび、北斎に絡ませながらも可笑しくて笑ってしまうのである。食いたい物は食えるうちに食っとけ、という話である。ただしヨーロッパ、アメリカ、中国人は今まで食わずとも困らなかったのだから、蛸の味など生涯知らずに死んでいけば良いと思う。 画廊に搬入してから考えるが、3作品に蛸登場は多過ぎると思う。まして2作品は、モデルを笑わそうとして作った、なんてここでしかいえない。

銀座青木画廊「ピクトリアリズム展Ⅲ』5月12日(土)〜5月25日(金)20日(日休)4月23日(休)

『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載8回『昭和残侠伝“唐獅子牡丹”三島由紀夫』

2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界』 youtubeより

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