明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



引っ越した後も、しばらくは通い慣れたホームセンターに行ってしまうのは三十年前と一緒である。探すくらいなら、と深川のコーナンへ。 深川に越してからも、以前住んでいた辺りのホームセンターに時折出かけていた。そこは父も何かというと通っていたセンターであった。 私は男が人知れず工作する姿に何故だがツンと来るところがあり、例えば高校の同級生の部屋に、なんのためだかマッチ棒が井桁に積まれているのを見ただけで、一人そんな事をしている彼の後ろ姿を想像してしまうのである。これは工作とはいえないけれど。あれは父が亡くなって数年後だったろう、父も通ったホームセンターに行き、木材着色剤を選んでいたとき、日曜大工好きな父も良く買っていたな、と思ったら、工作する男の後ろ姿とは父の事だったのか、と急に気が付き、葬式でも涙一つ出なかつたのに急に泣けてきて止まらず。ぺンキ見ながら滂沱の涙というおかしな事になり、買い物もそこそこに出たが、駅までの道中も涙が止まらなかった。亡くなった父に関して涙したのは、あの時だけだったろう。私は未だに孤独というと、工作する男の背中を思ってしまう。私の制作中の後ろ姿もおそらくあんな感じになっているはずなのだが。

【タウン誌深川】〝明日出来ること今日はせず〟連載第17回『引っ越し』
『石塚公昭 幻想写真展き続ける作家た18年7/25~9/2 リコーイメージングスクエア銀座ギャラリーA.W.Pyoutubeこ2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界


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