朝寝床でボンヤリと“ストーンズのチケット誰に頼んだっけ?”受け取った記憶がない。懸命に考える。コンサートはいつだ?ここの町会では段ボール回収は第四水曜日の一回だけと決まっている。間違えて今月捨て損ねてしまった。壁に掲げるカレンダーがやっぱり必用だ。時間にして五分くらい悩んだ感じの末、そうか、ストーンズのチケットなど誰にも頼んでいなかった。 これは夏に朗読ライブが迫って来た頃から始まり、引っ越しの準備をしている最中がひどかったが、するべき事をあれもこれも忘れているのではないか、とそれは半分目が覚めながら連日苦しんだ。これを寝床でなくやらかすのも近いかもしれない。 私が今から恐れているのは、あれを作り損ねた、作っておくべきだった、と死の床で苦しむ事である。これは私の性格からしてポックリいかない限り回避する事はできないであろうが、少なくとも、いつまでも生きているつもりで、同じような事を続けていては行けない。なので実在した作家を新たに作ることは止めないと、後で苦しむ事になるだろう。この頻繁に起こる起き抜けのスケジュールミスの苦しみは、死の床でのスケジュールミスの苦しみを予兆ささているように思われてならないのである。
【タウン誌深川】〝明日出来ること今日はせず〟連載第17回『引っ越し』