明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



工芸学校で卒業制作に私が作った徳利が届いた。見るのは実に四十数年ぶりである。私が陶芸家を目指していた形跡は、岐阜の陶器工場で働いていた時に、製品の皿に勉強のため筆描きした梅に鶯と、洋食器風の模様を描いた物だけである。それが卒業制作三本のうちの一本を持っていてくれた同級生が送ってくれた。ちなみに年上の女性である。と書いておくと、多少趣が加わるかもしれない。 青春の思い出が、幽界から立ち上るかのようである。試作に終わったが、これで勢い良く注いでもハネないぐい飲みを作ろうと学校の便器をじっと眺めた。頭の程度が知れるが、ただ落ち着いて注げば良いだけの話である。私の山賊的体質は今に始まった事ではないのであった。 本日たまたまお酒の頂き物が届いたので、私と違ってまっすぐに陶芸家の道を進んだ同級生達が作ったぐい飲みを出してきて並べて順番に注いで飲んだ。件の徳利はというと、間違った道に進まなくてつくづく良かった、とただ眺めるだけである。誰がこんな空っぽなのに、酒が入っているかのような重い徳利を使うか!という話であった。



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工芸学校で卒業制作に私が作った徳利が届いた。見るのは実に四十数年ぶりである。私が陶芸家を目指していた形跡は、岐阜の陶器工場で働いていた時に、製品の皿に勉強のため筆描きした梅に鶯と、洋食器風の模様を描いた物だけである。それが卒業制作三本のうちの一本を持っていてくれた同級生が送ってくれた。ちなみに年上の女性である。と書いておくと、多少趣が加わるかもしれない。 青春の思い出が、幽界から立ち上るかのようである。試作に終わったが、これで勢い良く注いでもハネないぐい飲みを作ろうと学校の便器をじっと眺めた。頭の程度が知れるが、ただ落ち着いて注げば良いだけの話である。私の山賊的体質は今に始まった事ではないのであった。 本日たまたまお酒の頂き物が届いたので、私と違ってまっすぐに陶芸家の道を進んだ同級生達が作ったぐい飲みを出してきて並べて順番に注いで飲んだ。件の徳利はというと、間違った道に進まなくてつくづく良かった、とただ眺めるだけである。誰がこんな空っぽなのに、酒が入っているかのような重い徳利を使うか!という話であった。

【タウン誌深川】〝明日出来ること今日はせず〟連載第17回『引っ越し』

 

『石塚公昭 幻想写真展き続ける作家た18年7/25~9/2 リコーイメージングスクエア銀座ギャラリーA.W.Pyoutubeこ2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界


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