葛飾北斎は、深川江戸資料館の杉浦日向子のコーナーに一年間貸し出し、昨年11月に終わったが、返却されないままであった。私も引っ越しなどあり、いつでも良いや、とそのままにしておいたのだが、作りたくなると、どうにも押さえ難くなる、よく口がもう豚カツになってるので、なんて人がいるが、今日は口が三島ではなく北斎になっている。昔は材料を買うのに翌朝まで待てずに、室内アンテナを切ってしまったり、色々しでかしたが、作りたいのに作れない、というのがカンシヤクの元である。催促すると18日に持って来てくれる、というのだが、我慢できない。かといって、わざわざ取りに出向かなければならないのも。北斎は通常より重たい。そこでどうせ持って帰ってから作るために首を引っこ抜くのだから、と出かけ、首だけ引っこ抜いて帰って来た。これで安心、始められる。 ところが私の欠点が露呈する。棚ぼたのようにイメージが落ちてくるのは良いが、そこから構図が固まって動こうとしないのである。北斎が描いている最中のつもりが、右手を膝に着いている。北斎が左利きであればよいが絵描きとしてそれなりの特徴であるから、私の耳に入っているだろう。実に困った。 私が憧れ続けているのは、スケッチブックを前に、ああでもない、こうでもない、と悩む事である。下手にスケッチなんかしようとすると、最初のイタヅラ描きで決まってしまうので、うかつに鉛筆も持てない。さてどうする。 Eテレで室生犀星のヨーカン好きをやっていた。