せいぜい金魚を眺めて過ごすくらいしか、策といえるものは何もなかったが、それでも、なんとなく、それらしきイメージが漂い初めている。 人形を作る場合、表情は作らない。最たる物は能面だが、その方が見る人の想像の余地があり、勝手に表情をイメージして貰える。撮影に際しても、表情を演出することが出来る。そういう意味では、魚と鳥は、眼を見開いたままでまったく表情がない。そこが眺めていて想像をかき立て、金魚自体というより、自分内部の声に耳を澄ます効果となる。若沖が鶏をモチーフに選んだのもそんな面白さであったろう。