作り終わった作品に対して私は冷たい。頭の中の物を可視化し、やっぱり在ったな、と確認をし、撮影してしまえば役目は終わる。急遽某作家を撮影することになったのだが、眼鏡が出て来ない。久しぶりに作る。ジャズ、ブルース時代の楽器に比べれば楽だが、実に面倒である。背広の色も塗り直す。 仙人を作っているとつい浮世の諸々を忘れてしまい、とすべて仙人のせいにする。浮世のことはどうでも良い、という顔をしてはならない、というのが母の教えである。これで霞を喰って生きられたら私も仙人に近づけるのだが。空気を飲み込んで腹を膨らませられないか。これはすでに20代で試み失敗している。 月刊アートコレクターズ“いまこそ幻想美術”に日本初のシュルレアリズム小説といわれる室生犀星『蜜のあはれ』1カット。浮世離れした作品ばかりである。