明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



先日、つい自分が何を作るのか以外に関心がない、というようなことをうっかり書いてしまったが、母は治らないなら、せめて正体がバレないように上手くやれ、と私に教え込んだと思う。もちろん具体的にそうは言わなかったが。 亡くなった父は心臓が悪く、何回目かの入院を控え、私に今まで好きなことをやって来たのだから家業を手伝えといった。すると何やらコソコソやっているのを聞きつけた母は、台所から出て来て何を今さら言っている、と父を怒った。朝ドラで借金してまで娘に好きな事をやらせようという母親を見ていてそのことを思い出した。有難いものである。たまたま知り合いが7年も個展をやっていないのだから、と画廊を紹介されたのが2ヶ月前であった。楽器を作るのが嫌で、いざとなればキャンセルをと考えていたが。父の弱り具合を見ると、冗談じゃない、ともいえず、これだけは決まっているのでやらせてくれといった。それにしても7年のうちの2ヶ月である。決めていなかったらどうなっていたか。そして、やれることは全部やってやれ、と初めて写真を展示した。父は無事帰って来たが、のんびりしてはいられない、と翌年作家シリーズに転向した。 あの時の母の気持ちを元気なうちに聞いてみたいが、母は、私が子供の頃、将来とんでもない人間になるのではないか、と憂いていたことは間違いない。あの日の母に私は勝手に感謝しているが、母としては、その挙げ句が、たかだか可愛らしいお人形を作ることに落ち着いたことで、不幸中の幸い、と実はホッとしていたのではないか?と思うのである。



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