写真制作を始めて、そのほとんどをまことを写す、という意味の写真に争い続けて来た気がするが、一回りして、また元の世界に戻ってきた。といっても戻る条件が、写真どころ陰影を与えられたことのない時代の人物である。変わることこそ生きている証ではあるが、鎌倉、室町時代の人物に、陰翳を与えるというテーマにたどり着くために年月を費やして来たということなのだろうか。考えても仕方のないことだが、只今制作中の最新作の完成が、もっとも楽しみである。作っている本人は過去の作品の方が良いと思ったことは一度もない。新作は目が慣れていないからだ、という可能性は大いにあるけれど。 今後、実景や陰翳を撮影しようと、デジタルやAIが盛んになろうと、主役は相変わらず粘土感丸出しの自作の人物である。これを変える気はないし、いずれ効いてくるだろう。