大覚禅師こと蘭渓道隆は、生前描かれた国宝の坐像を見ると華奢なようで肩幅が広い。そのバランスで全身を作ると、すらっとした人物に作りたくなる。建長寺には『径行図』という立ち姿が残されている。それを見ると背は低い。頭部の感じから、私同様、国宝の頂相をもとに後年描かれた物だろう。しかし頂相が描かれ七百数十年経っている私と違い、容姿、背の高さなどについて伝わっていただろう。つまり背の高さのわりに肩幅が広い人物と判断し、芯材を大きくカットした。 ジャズ、ブルースシリーズから作家シリーズに転向した時、長らく黒人のバランスに馴染んできたので、澁澤龍彦を作りながら、これは昭和3年生まれの日本人なのだ、といい聞かせながら、脚を3回ほど切断したのを思い出した。