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日常よく使われる英語表現を毎日紹介します。毎日日本時間の午前9時までに更新します。英文執筆・翻訳・構成・管理:上杉隼人

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毎日更新! GetUpEnglish Updates Every Day! Since April 1, 2006 (c) 2006-2025 Uesugi Hayato(上杉隼人)

MONKEY NEW WRITING FROM JAPAN VLUME 1 2020(2)

2020-10-08 08:47:26 | M

 MONKEY NEW WRITING FROM JAPAN VLUME 1 2020が発売になり、興奮して読んでいる。

 10月4日のGetUpEnglishでも紹介したが、翻訳の質がものすごく高い。

 https://blog.goo.ne.jp/getupenglish/e/3b5f1c08b4c075c235afa79ab85bd8a3

 英日の翻訳の高さは日本人でもわかるし、指摘できるかもしれないが、日英の翻訳の高さは、日英翻訳者の数がぐっと少ないからか、ほとんど指摘されることはない。

 わたし上杉隼人も実は英日翻訳だけでなく、日英翻訳もかなりするし(むしろそちらのほうが多いくらいだ)、英語で文章を書いたり(映画の脚本も書く)、インタビューもしたりする(あまりに下手な英語なので、これはやらないほうがいいと最近は思う)ので、MONKEY NEW WRITING FROM JAPAN VLUME 1 2020は非常に驚き、感動している。

 岡本かの子の「鮨」を収録しているのだが、これがまたすばらしい訳だ。

「鮨」岡本かの子

 東京の下町と山の手の境い目といったような、ひどく坂や崖の多い街がある。

 表通りの繁華から折れ曲って来たものには、別天地の感じを与える。

 つまり表通りや新道路の繁華な刺戟に疲れた人々が、時々、刺戟を外ずして気分を転換する為めに紛れ込むようなちょっとした街筋――

 福ずしの店のあるところは、この町でも一ばん低まったところで、二階建の銅張りの店構えは、三四年前表だけを造作したもので、裏の方は崖に支えられている柱の足を根つぎして古い住宅のままを使っている。

 古くからある普通の鮨屋だが、商売不振で、先代の持主は看板ごと家作をともよの両親に譲って、店もだんだん行き立って来た。

THERE’S A PLACE IN TOKYO that can be described as a kind of boundary, an area full of cliffs and hills that divides the wealthy and working-class neighborhoods.

  As soon as you veer off the main street, it’s as though you’ve entered a new world.

  And that is why, even people have had enough of the city and its excitement, they sometimes wander down these backstreets for a change of place, to get away from it all.

AT THE FOOT OF ONE OF THESE CLIFFS was a small sushi shop called Fuku. While the storefront had been redone with copper only three or four years ago, the back of the two-story structure was ― with the exception of the repaired supporters against the cliff wall ― the old residence it had always been.

  Fuku had been a neighborhood establishment for years, but when business was poor, the former owner stepped down and handed over his shop to Tomoyo’s parents, name and all.  With time, the new owners turned the business around.

境目といったような」という言い方をthat can be described as a kind of boundaryいった表現を充てるのは信じられないくらいすごいことである。

 ベテランのネイティブの日英翻訳者でもできないことだ。

 この訳者David BoydとMonkey編集部がいかに原文を大切に扱っているかがわかる。

「福ずしの店のあるところは、この町でも一ばん低まったところで、二階建の銅張りの店構えは、三四年前表だけを造作したもので、裏の方は崖に支えられている柱の足を根つぎして古い住宅のままを使っている」あたりの表現は翻訳者泣かせというか、原文も瞬間的に理解するのがむずかしいのだが、翻訳はダッシュを使って実にうまく訳している。

 ネイティブが日本語を翻訳する際、意味がわからないところをわれわれ日本人が説明して、それを聞いて訳文を作るが、それは翻訳というより「言い換え」になってしまうこともよくある。reconstructionしなければと日英翻訳者がいうのをよく耳にしたが、結局は原文通りに翻訳することがむずかしいからそうせざるを得ないだけだったと思うこともある。

 だが、このBoyd氏は原文通りに翻訳しているので、驚かざるをえない。

 チェックしている日本人の柴田元幸がここでもすごい仕事をしているのであろう。

「店もだんだん行き立って来た」は英語らしい表現にされていて、とてもいいと思う。

 MONKEY NEW WRITING FROM JAPAN VLUME 1 2020, 読んでいるだけで、大変英語の勉強になる。

 

 

 

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