枝野の関西電力・電力不足問題発言に見る無責任とデタラメさ加減

2012-05-10 11:14:26 | Weblog

 ――国は自ら電力供給に動け――

 関西電力は大飯原発3・4号機再稼働なしの場合は同管内最大で18.4%の電力不足に陥るとの見通しを示していたのに対して、政府が法律に基づいて全国の各電力会社に対して夏の需給見通しに関する詳細な報告を求めた結果、関西電力は一昨年の猛暑を前提に企業・家庭の節電を計算しても、最初の18.4%の電力不足から、なぜか分からないが2.1引いて16.3%の電力不足に訂正。

 だが、5月2日開催の今夏の電力需給状況検証の国の第三者委員会が企業・家庭での節電を従来予想よりも多く見込むよう求めるべきだとする案を提示、その見込み節電を加えてさらに1.3%低く予想、15%程度の電力不足だとした。

 多分具体的な根拠を持たせた正確な予測だと思うが、どうも電力会社の報告どおりの電力不足としたのでは政府が言いなりになっているように見えるからと国民を納得させるために数字だけを一生懸命小さくしているようにも見える。

 この約15%不足について5月8日閣議後記者会見で詭弁家・枝野経産相が次のように発言している。 

 枝野詭弁家「(供給力不足が)15%というレベルだと、節電をしてもらっても足りなくなる可能性がある」(YOMIURI ONLINE

 この発言は枝野の4月26日読売新聞インタビュー発言とセットにさせた発言であろう。

 枝野詭弁家「猛暑の場合に(自主的な)節電では足りないとなれば、計画停電や電力使用制限令といった手段を駆使することになる」(YOMIURI ONLINE

 4月26日の時点での関西電力管内の電力不足は16.3%と見込んでいたが、それが15%になっても一層の節電の努力では追いつかない、計画停電や電力使用制限令といった強硬手段を取らざるを得ないというシグナルである。 

 5月6日(2012年)日曜日の朝日テレビ「報道ステーションSUNDAY」と続けて放送した同朝日テレビ「サンデースクランブル」で関西電力管内の大飯原発を再稼働しない場合の電力不足を取り上げていた。

 4月26日の関西広域連合会委員会。

 井戸兵庫県知事「(関西電力は)去年の最高は2789(万KW)だったはずなのに、だから、何で3030(万KW)になるのか全く疑問です」

 ここで「今年8月の電力需要3030万KWは一昨年の猛暑を想定」と解説が入る。

 気象庁の今夏の長期予想は一昨年並みの猛暑にはならないと言っているが、電力会社からしたら、最悪の事態を想定内としなければならない危機管理上、一昨年並みを基準とすることは十分に正当性を得る。

 メインキャスターの長野智子が訪れた関西電力で質問。

 長野智子「そもそも見通しが過大過ぎるのでは?」

 軸屋尚久関電給電計画グループ「1日たりとも停電させたくないという思いからですね、実績に基づいてあり得る数字として高めを見ていますので・・・・」

 その危機管理上の「高め」の正当性が政府の手にかかって低めに見積もられる仕打ちを受けたということになるが、関電に正当性があるのか政府に正当性があるのかはこの夏を過ごしてみないと何とも言えない。

 番組はここで川崎重工業明石工場の節電対策を紹介する。自身の工場でも製造しているガスタービン自家発電機を設置、去年関西電力から50%以上購入していた電力を24時間稼働で今年は7%にまで削減。工場従業員が針がゼロの位置にあるメーターを指差して、「関西電力から電気を購入していない」と言っていたから、現在はゼロ購入ということらしい。

 ガスタービン自家発電機は1基数千万円から数億円の価格だが、東日本大震災以降、注文が増えているという。

 能美伸一郎川崎重工ガスタービンビジネスセンター副センター長「(今年度の販売台数の見通しは)1.5倍ぐらいですか。2009とか、2010年に比べたら」

 番組が近畿では自家発電機の生産量は右肩上がりだと棒グラフを示して解説。

 荒木秀之りそな総合研究所主任研究員「関西で原発1基分の容量の自家発電設備が普及している可能性があると思いますねえ。100万KW前後の、需要の押し下げにつながってもおかしくないのかなあと思いますねえ」

 予想でしかないが、企業としたら停電は困るから、関西電力の電力節電に懸命に努力している様子は窺うことができる。

 にも関わらず、関西電力は東京電力の10%(600万KW)の節電見込みに対して3%(100万KW)の節電しか見込んでいないという。

 長野智子「少なくとも去年並みの節電はできるんですか?」

 明徳毅関電営業計画グループ副部長「(去年の節電は)かなり社会的にも経済的にもですね、あの、無理、無理と言うか、色んな負担があった結果として、そういう数字だったんだと思ってまして、(今年の節電は)3%ぐらい織り込んでいますけども、それは無理のない範囲ということでして――」

 要するに去年の節電量は社会的にも経済的にも無理を重ねた結果であって、無理のない範囲ということなら、去年並みは難しいということを言っている。
 
 番組はここで切れて、建設機械製造のコマツ粟津工場(石川県小松市)に場面を移す。

 なぜ長野智子は各企業が去年以上に関西電力からの電力購入抑制に動いていることを伝えなかったのだろう。自家発電機製造・販売の川崎重工業の2009年度や2010年度比較で2011年度は1.5倍ほど販売量が増加しているという指摘、近畿では自家発電機の生産量が右肩上がりという棒グラフでの指摘が意味をなさなくなる。

 これら節電の動きは関電の説明を否定していることになるはずだ。

 撮影が後先となったという弁解は効かない。最初に放送テーマを決めて、関西地域を基盤とした各企業の節電に向けた動きを調査・把握してから各撮影に入ったはずだからだ。

 それとも、「企業の負担になることは見込めない。しかし3%の節電が企業にとっての限界なのだろうか」と解説が言っている疑問解明の企画を途中に挟んでいた都合上、肝心の質問は省いたのか、質問したけれども、編集段階でカットしたのか。

 竹原宣博コマツ粟津工場プロジェクト室室長「いち早く節電に取り組んで、(この夏の)難局もですね、乗りきれるような、そういった形に持って行きたいと思います」

 コンピューターで無駄な電力使用をチェック。

 上田和則コマツ省エネルギー推進部課長「実際の加工には使っていない電力が約3分の2あったということで、加工している時より効率のいい加工の仕方、あるいは効率のいい装置を使うことによって、そこそこの電力を下げていくといったような取り組みに取り組んでいます」

 この工場では生産量を維持したまま、冬場の電力をピーク時で15%削減、今夏は25%の節電を目指しているという。

 企業のこのような節電努力からすると、関西電力が言っている去年の無理に対して今夏は「無理のない範囲」に節電量をとどめるとしている方針説明の正当性はかなり疑わしくなる。

 番組は次の電力供給源として関西電力管内に5箇所あるという揚水発電を取り上げる。上下2ヶ所のダム間で昼間上のダムから下のダムに水を流して発電し、夜間、余力電力で下のダムの水を上のダムに汲み上げて、再び昼間上のダムの水を放水して発電する仕組みの発電だと解説。

 関西電力管内5箇所の揚水発電最大出力は512万KW。原発4基分に相当。

 但し関電試算の供給可能出力は232万KW。長野智子が関電事務所でこの違いの理由を尋ねる。

 軸屋尚久関電給電計画グループ「ベース電源がぐっとなくなることによって、発電時間が長くなっていることになりますので、時間が倍になれば、供給力は半分になる――」

 要するに下のダムから上のダムへ揚水する電力は他の供給源に頼ることになるが、その供給源自体が電力不足に見舞われているから、フル稼働は見込めないということなのだろう。

 テレビの画面で見ると、上のダムから下のダムへの放水路と下のダムから上のダムへの揚水路が同じだから、下のダムから上のダムへ揚水している間は発電を停めていなければならない。これが別々なら、常時水を循環させることが可能となり、発電も常時可能となって、最大出力512万KWは常に確保できるが、そうはなっていないから、「時間が倍になれば、供給力は半分になる」ということなのだろう。

 このことに対する部分的解決策を専門家が発言している。

 藤波匠日本総研主任研究員「他社からの融通を受けることで、揚水発電なども効率化されるはずで、200万kW以上の供給力向上が期待できると思います」

 但し関西電力提示の不足量の正当性を崩そうとする番組の努力に反して、関西電力は供給量をもう少し積み増しはできるとしながら、本質的態度は大きく不足することを前提としていて、その態度に変化はない。

 5月4日大坂府市統合本部「エネルギー戦略会議」

 岩根茂樹関西電力副社長「大飯が動けば、もう少し我々できると、ま、こういうふうに乗り切れるという案はつくります」

 副社長の発言だから、関西電力を代表した発言ということになる。

 大飯原発の再稼働がなければ、今夏の電力不足を乗り切る案はつくることはできませんと言っている。大飯原発の再稼働がなければ、電力不足に手も足も出ませんと言っているのと同じである。

 あるいは大飯原発再稼働を取るか、電力不足を取るかと迫っていると言ってもいい。

 ここで番組は実質的にどの程度の電力不足なのか、専門家の試算と対比させる。

 関西電力――-495万KW(不足見通し)

 これは今夏の予想電力需要3030万KWに対して15%程度の電力不足としていることから算出した-万495万KWであろう。

 自家発電――100万キロワット(りそな総研試算)

 他の電力会社から――100万KW(日本総研試算)

 揚水発電――233万KW(環境エネルギー政策研究所試算)

 合計433万KW。試算上、62万KWの不足となる。

 藤波匠日本総研主任研究員が「他社からの融通を受けることで、揚水発電なども効率化されるはずで、200万kW以上の供給力向上が期待できると思います」と言っていたから、関電試算供給可能出力232万KWに上乗せした200万kW以上の向上だと思ったら、そうではなかった。

 このような不足状況に対しての枝野の態度を見てみる。同じ5月6日日曜日の午後12時からの朝日テレビ「サンデースクランブル」

 この番組の中で5月5日土曜日放送のBS朝日放送「激論!クロスファイア」での枝野の発言を取り上げている。司会者は例のマヤカシ人間田原総一朗。

 枝野「(大飯原発を)再稼働しない場合にお願いしなければならない無理の大きさは(去年の東電の計画停電と比べて)今年の関西の方が大きい。

 これは間違いのないことです。やはり、その、計画停電の、計画は立てないといけない。

 病院、医療関係とか、あのー、それから、例えば冷凍食品を扱っているとか、そういうところは計画停電しなければ(ふっと笑いをこぼし、そのまま小さく笑いながら)、例えば購入しているものは3時間冷やせなくなった、商品がダメになる分野はたくさんあるわけなので、大きな企業は、あの、自家発電とか、色んなことでリスクを分散できる。

 問題は選択肢を持たない中小零細企業――」

 田原総一朗「これが大変だ」

 枝野「これが大変なんです」

 大飯原発再稼働がなければ、こうなりますよの警告である。だが、質の悪い警告となっている。質の悪い分、笑いながら誤魔化していたが、それとない威しの仄(ほの)めかしとも言える。

 中小零細企業対象の個別的電力供給ということなら、軽油燃料の横長さ3.5メートル前後×高さ1.2メートル前後×幅1.5メートル前後、出力150KVA(キロホルトアンペア、kW換算で約120kW)

 レンタル料金、一例初日価格1万円前後~1万5千円前後、初日以降価格5千円前後~1万円前後の中型発電機1台前後を使用すれば、計画停電時間帯を過ごすことができるはずだ。(左図)

 月借りだとより割安となる。

 電力の安定供給は電力会社の責任であると同時に国の責任である。計画停電時間帯の普段の消費電力料金を差引いた金額を電力会社と国が共に補助すべきだろう。

 常に電気を必要とする個別の商店に関しては小型発電機で間に合う。間に合わなければ、小型発電機を2台3台増やしていけばいい。1ヶ月契約で5万円前後から借りることができる。資金に余裕があるなら、自前で購入したなら、自身があった時などの今後の備えとなる。1ヶ月のレンタル料で買うことができるはずだ。(左図)

 「病院、医療関係」にしても自家発電装置を備えていなければ、国の補助でレンタルの中型発電機を設置すれば、備えとなるはずである。

 現在の発電機は全て静音型となっていて、近くにいても左程気にならない。

 朝日テレビ「報道ステーションSUNDAY」が紹介していた川崎重工のガスタービン自家発電機を、電力需要がピークとなる真夏になるまでに3ヶ月近くもあるのだから、例え億単位のカネがかかろうと、一定地域ごとに設置して、24時間フル稼働させたなら、提供可能とした電力相当分は関西電力の需要削減につながり、その電力不足を補うはずだ。

 企業ができる限りの可能な範囲で自ら電力供給と節電に努力しているのに対して国が自らは電力供給に何ら努力もせずに、手をこまねいたまま大企業はリスク分散できるが、中小零細企業はそれができないから大変だと薄く笑いながら言うだけのことで済ましている。

 この無責任とデタラメさ加減は詭弁家枝野ならではの体質であろう。

 大飯原発再稼働が難しくなった時点で国が電力不足回避の危機管理から自家発電機等の設置、企業、あるいは個人が自ら設置する場合の補助金制度の創設に動いていたなら、時間的にも十分に間に合い、例え原発が再稼働することになって無駄となったとしても、危機管理上許される行為となるはずだ。

 三菱自動車パワートレイン製作所京都工場が1997年に約10億円を投じて稼働し、燃料代高騰等の理由で2005年前後に停止した天然ガス燃料のタービン発電機を中心とするコジェネレーション(熱電併給)システムの2基あるうち1基を今夏再稼働させると、《三菱自、京都の自家発電設備を再稼働-補修進め7年ぶり》日刊工業新聞/2012年03月19日)が伝えている。
 
 1基当たり5億円の価格ということだと思うが、最大出力6000kW、夏場の出力は5000kW程度になるという。

 川崎重工のガスタービン自家発電機にしても、1基数千万円から数億円の価格だと番組が紹介していたから、数億円単位の設備は三菱自動車のシステムと同程度の出力を出すのではないだろうか。

 自治体や住民の合意を得ることが困難な状況を無視して大飯原発再稼働にのみ目を向け、自らは電力供給に動くことはせず、電力不足に陥ったら大変なことになるぞと威し紛いの言動に終始している。

 最低の連中だ。

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