日本の竜巻規模のよりアメリカ化が始まる?

2012-05-08 10:22:57 | Weblog

 ――アメリカと相互情報交換・相互研究を開始して、竜巻に対する危機管理構築を早急に果たすべきではないだろうか――

 5月6日の茨城県各地で発生した竜巻は幅約500メートル、距離約15キロの範囲に及び、家屋全壊、半壊、車を飛ばすなどの大きな被害を与えた。茨木県つくば市で中学3年男子生徒1人が倒壊した家屋の下敷きになり死亡したほか、37人が怪我を負ったという。

 それぞれが自分なりの人生を抱え、自分なりの世界を抱え、関わりを持つかなりの数の人間がいる中で相互に無くてはならない存在として位置していた者にとって、その人生との関わりを失い、相互性を抱えていた世界からその相互性を欠かす無力感・哀しみには耐え難いものがあるに違いない。

 特に将来に亘って長く続くことを意識しないまま自然体とし、予定調和としていた相互性が突然裏切られて短い期間で断ち切られた自然体の意識することとなったその喪失感・絶望感には激しいものがあるはずだ。

 《気象庁 竜巻被害15キロに及ぶ》NHK NEWS WEB/2012年5月7日 18時4分)

 気象庁の調査によると、家の屋根や自動車が吹き飛ばされたりする瞬間的な風の強さは風速50メートルから69メートルで、風の強さを示す6段階の指標の上から4番目の「F2」に相当するそうだ。

 この「F2」は6年前の2006年(平成18年)9月に宮崎県延岡市で発生した竜巻の強さに匹敵すると記事は伝えている。

 竜巻の発生をニュースで知ったとき、日本で初めての大規模な竜巻発生ではないかと思っていたが、単なる無知で、実際は6年前に発生していた。

 但し「F2」は初期的調査情報で、最終的調査情報ではない。

 気象庁「今後の調査によっては『F2』より強くなる可能性もある」

 無知は無知でも、なぜ日本初の大規模竜巻発生と思ったかと言うと、昨今の世界的な異常気象現象を受けた印象である。

 小司禎教気象庁気象研究所研究室長「被害の甚大な場所と被害があまりない場所が隣り合っていて、風速が急激に強まるという竜巻の被害の特徴が出ていた。さらに詳しく調査していきたい」

 佐々木洋気象庁予報課主任予報官「今週の後半にも、寒気の影響で大気の状態が不安定になると予想されている。地元の気象台が出す気象情報などに注意し、竜巻などの突風が予想される場合は、できるだけ頑丈な建物の中に避難してほしい。建物の中でも、カーテンを閉めて窓から離れた安全な場所に待避し、万が一、突風が吹いた場合は、地震のときと同じように机の下などで身を守ってほしい」

 他の記事が建物被害は約900棟だと伝えている。そのうち住宅全壊259棟。3分の1が全壊だから、どれ程の竜巻だったか、想像がつく。

 日本だけではなく、世界的に異常気象が年々進行している。今後大規模な竜巻が1年のうちに何回も発生するといったことはないだろうか。アメリカでは例年以上に竜巻が発生していて、異常気象と関連づけられているという。

 《米国の気温、3月は史上最高 異例の暖かさで異常気象も》CNN/2012.04.11 Wed posted at: 10:05)

 米海洋大気局(NOAA)の発表。

 今年3月の米国平均気温が1895年の記録開始以来最高。全米で最高気温などの記録が1万5292件更新。

 1~3月期平均気温、アラスカとハワイを除く48州で史上最高を記録。平年を約3.3度も上回る平均摂氏約5.6度。

 3月のみの平均気温はロッキー山脈東側の25州で過去最高。西海岸のワシントン、オレゴン、カリフォルニア各州では平年を下回る。

 最高気温の記録7755件が塗り替えられ、夜間の最低気温が過去最高を上回ったケースが7517件。

 NOAA報道担当者「暖かい天候がこれだけの範囲と規模で観測された前例はない」

 年平均80件の竜巻発生が3月は3倍近い223件の観測。その大半が3月初めにオハイオ渓谷や南東部で観測された竜巻で、死者40人、被害総額15億ドル(約1200億円)で、今年最初の大規模災害となった。

 記事。〈異例の暖かさが続いた結果、雷雨や竜巻が発生しやすくなった面もある。〉と異常気象と関連づけている。

 但し、〈長期的な地球温暖化との関連は不明。東欧などではこの冬、気温が平年を下回ったり記録的な寒さとなったりする傾向がみられた。〉と結んでいる。

 「Wikipedia」を参考にすると、異常気象自体が長期的な地球温暖化との関連は不明ではあっても、竜巻は積乱雲や積雲の急激な発達によって発生する集中豪雨が関係していて、集中豪雨が大気から気化熱を急激に奪って下層の空気を冷却、冷却した下層の空気の上に暖かく湿った空気が乗り上げて上昇することで上昇気流が発生、その部分の気圧が低くなり、急激な空気の流れが生じて竜巻が発生するということらしい。

 今回の竜巻は集中豪雨はなかったらしいが、晴れていた空が急に暗くなり、雹(ひょう)が降り、雷が鳴ったというから、雹が強い雨に代わって下層の空気を冷却して急激な上昇気流を生じせしめたのではないだろうか。

 日本では毎年のようにどこかで集中豪雨が発生、大きな被害をもたらしている。集中豪雨が長雨とならずに急に降って、急に晴れ上がった場合、竜巻が発生、それが大規模に発達しない保証はないはずだ。

 大規模な竜巻が発生したとき、守ることができるのは自らの身ぐらいのもので、動かすことができない建物等の不動産は竜巻が襲うままに任せるしかないが、今回の竜巻の報道で頼みとする気象庁の竜巻注意情報の的中率がかなり頼りにならないことが分かった。

 《竜巻注意情報 的中の割合低い》NHK NEWS WEB/2012年5月7日 19時23分)

 「竜巻注意情報」は平成18年に宮崎県延岡市(9月)や北海道佐呂間町(11月)で竜巻の被害が相次いだのをきっかけに、気象庁が平成20年3月から運用を開始したと記事は書いている。

 但し、〈積乱雲は急激に発達することがあり、突風がいつ、どこで発生するのかを細かく予測するのは難しいのが実情〉で、去年1年間の「竜巻注意情報」は589回発表、この内実際の突風発生は8回の的中率約1%。「竜巻注意情報」を出さないときに発生した突風回数31回。

 記事は「突風」と書いているから、それ程の被害をもたらさなかったということなのだろう。

 このような「竜巻注意情報」と的中率の関係が影響してのことだろう、気象庁が茨城県や栃木県などに「竜巻注意情報」を発表して注意を促していたそうだが、エリアが茨城県や栃木県というだけでは地震の被害影響域と比較して範囲が広過ぎ、場所をピンポイントに特定する技術もないことから、それが限界だということと、地震に対する危機管理意識は日常的に鋭敏化させているが、竜巻に対しては未成熟であることも手伝ってのことに違いない、自治体の方で住民に周知徹底する注意まで払わなかったらしい。

 「東京新聞」が伝えている、つくば市付近で大きな被害を生んだ竜巻発生僅か7分前の5月6日午後零時38分の水戸地方気象台竜巻注意情報第1号にしても、範囲は茨城県であって、気象庁の竜巻注意情報と同程度の効果しかなかったはずだ。

 いわば竜巻は地震程には身近な危険とはなっていないということである。

 竜巻発生翌日の5月7日、内閣府の末松副大臣を団長とする調査団を現地を視察している。

 視察後の記者会見。

 末松副大臣「日本の場合は、(竜巻に対して)あまり対策ができていなかったので、これを機に(政府でも)しっかり検討していきたい」(FNN

 要するに竜巻に対する対策を十分に取って来なかったので、今後対策を検討したいと言っているが、対策を十分に取って来なかった成果が「竜巻注意情報」的中率約1%にとどまっている技術状態であり、あるいは発生を把握するまでに至らないケースもある技術の未到達ということなのだろう。

 だが、中学生3年生の少年一人を死なせているのである。異常気象が進行していることからも、竜巻の発生頻度の増加とその大規模災害化を想定内とし、地震と同様に竜巻に対しても身近な危険とし、身近な危機管理の対象としていく必要があるはずだ。

 末松副大臣が言う対策の検討とは、各省庁の担当者や専門家による作業チームを近く発足、アメリカなど海外の事例も参考に今年7月末までに対策をまとめる方針だと「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。

 事例参考だけで、アメリカの竜巻研究者等を招いて共同研究するとまでは書いてない。福島原発事故時にアメリカの原子力研究者と情報・知見の共有を図ったようにアメリカの竜巻研究者と情報・知見の共有を測って、研究の相乗効果と成果達成時間の促進を図るべきではないだろうか。

 福島原発事故発生初期にはアメリカに対する情報提供が遅れて、少なからず事故収束に向けた初期対応に遅れを取ったはずだ。《【つくば突風】予測困難、どう守る? 本場・米国でも的中2割》MSN産経/2012.5.7 20:34)記事には、〈年間約800例の竜巻(トルネード)が発生するとされる「本場」米国に比べ、発生数の少ない日本は予測に必要なデータ蓄積に乏しい。〉ことに対して、〈しかし研究が進んでいる米国でも予測の的中率は20%程度。〉と、その予測の困難さを書いているが、例え予測困難であっても、日本の的中率約1%に対して20%ものアメリカ的中率と見るべきだろう。

 アメリカと日本では地理的条件も気象条件も違うだろうが、アメリカ側のデータの蓄積は無視できるわけがなく、衆知を集めることが地理的条件や気象条件の違いをも乗り越えることとなって、相互の利益に適うことにもなる。

 日本の竜巻規模のよりアメリカ化が始まるかも知れないという強い危機意識をことさら設定して、そのような危機意識のもと危機管理態勢を整えていこうという意志が否応もなしにアメリカの情報・知見を必要とするだろうし、共同の危機管理体制構築こそが竜巻によって1人として死なせないという、少なくとも気持ちの上での危機管理にもつながっていくはずだ。

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