「言葉の人」野田首相の社会保障と税の一体改革「アジア・モデル」志向と政局との大言壮語的矛盾

2012-05-25 12:33:01 | Weblog

 野田首相が昨日5月24日午後開催の国際交流会議「アジアの未来」の晩餐会で、野田内閣の社会保障と税の一体改革を持続可能な高齢社会の「アジア・モデル」としたいとスピーチしたと今朝読んだ各記事が伝えていた。

 この記事を読んで受けた第一印象は“矛盾”の二文字であった。なぜなら既に「アジア・モデル」とする絶対条件を失いつつあるからだ。

 スピーチ全文を首相官邸HPから捜し出して、まずは掲載。主要と思われる文字には文飾を施した。 

 《第18回国際交流会議「アジアの未来」野田総理スピーチ》首相官邸HP/2012年〈平成24年〉5月24日)

 リー・クアンユー・シンガポール元首相、
 マハティール・マレーシア元首相、
 並びに、ご列席の皆様、

 日本の内閣総理大臣、野田佳彦です。明日の日経の一面は、政局でなく、この話になるように頑張りたいと思います。

 本日は、「アジア・太平洋の世紀」の確かな礎を築いてこられた偉大なる大先輩、そして各国の政治・経済の中枢を担っていらっしゃる、まさに「当事者」の方々を前にして、アジアの未来と日本の役割についてお話しをさせていただく機会を頂戴し、大変に光栄です。

 まず初めに、昨年の東日本大震災に際して、我が国に寄せられた温かい支援と励ましに対し、改めて御礼を申し上げます。

 震災から一年余りを経て、被災地の復旧・復興は道半ばではありますが、明るい兆しも見えてまいりました。

 その一つの表れは、被災地の「海」にあります。津波で破壊された東北沿岸部の港湾での貨物の取扱量は、既に震災前の水準に戻りました。また、地域の基幹産業である漁業についても、宮城県の漁港の水揚げは、金額ベースで震災前の8割程度にまで回復をしております。

 日本経済全体も、震災直後こそ製造業のサプライチェーンに支障が生じて大きな影響を受けましたが、復興需要にも支えられて力強い回復を遂げており、先に発表された直近の四半期のGDPは、年率4.1%の高い伸びを示すまでになっております。

 震災直後に導入された日本産品への規制や日本への渡航制限についても、多くの国で措置の緩和や撤廃が進みました。未だ規制が残る国におかれましても、最新の状況を踏まえた見直しや緩和が進んでいくことを強く期待をしています。

(1.世界史の中の「アジア太平洋の世紀」)

 さて、「アジアの未来」に思いを馳せるにあたって、まず、アジアに住む私たちは、長い文明の歴史の上で、類まれなる幸運のもとに生まれているということを確認したいと思います。

 人類の文明は、その発祥以来、「西回り」でその重心を移してきました。

 黄河、インダス、メソポタミア、エジプトに発祥した文明は、ギリシャやローマを経てヨーロッパで大きく花開き、大英帝国の時代の後に、アメリカ中心の20世紀を迎えました。

 そのアメリカも、西側の太平洋へと軸足を向け、「アジア・太平洋の世紀」が、今、本格的に幕を開けようとしております。

(2.中間層の拡大が牽引する豊かさ

 「アジア・太平洋の世紀」の最大の特徴は、かつてない規模での「豊かさの増大」にあります。

 最新の予測によれば、5年後には、アジア新興諸国のGDPは20兆ドルに達し、米国やEUと並ぶ巨大経済圏になると見込まれております。21世紀初頭は、わずか2.5兆ドル程度であったことを考えると、その成長力は驚異的であります。

 豊かさは、「中間層」の爆発的な拡大を生んでいきます。今後10年の間に10億人を超える新たな中間層が生まれ、その旺盛な購買力が生み出す好循環は、これからの世界経済を動かす巨大なエンジンとなることは間違いございません。

(3.「アジアの未来」の鏡としての日本)

 しかし、こうした「豊かさが一人一人に広がっていくアジア」というバラ色の未来図は、待っていれば自動的に実現できるほど単純なものではありません。

 「繁栄」を現実のものとするためには、行く手に潜んでいる様々なリスクに対する備えが欠かせません。それでは、私たちは、いかなるリスクを念頭に置き、どのような備えを用意しておくべきなのでしょうか。

 その手がかりは、東日本大震災から一年余りを経た日本が抱える数々の課題の中にあります。

 大震災からの復興。原発事故後のエネルギー政策の再構築。疲弊する中間層の建て直し。そして、世界最高速で進む少子高齢化への対処。私は、こうした難題に立ち向かい、一つ一つ解決策を見出していくという使命を負っております。

 こうした問題は、精緻に眺めれば、10年先、20年先を見渡した際に、いずれの国も向き合わなければならない「アジア共通の課題」を含んでいることに、既に多くの方がお気づきではないかと思います。

 自然の脅威は、日本においてすら、決して侮れるものではなく、多くの人たちから住み慣れた「ふるさと」の平穏な暮らしを奪いました。災害多発地帯であるアジアにおいては、東日本大震災の教訓に学び、災害に強いまちづくりを目指していかなければなりません。

 世界最大の化石燃料消費地域であるアジアは、資源多消費の従来型成長を続ける限り、早晩、資源・エネルギー面での制約が成長の限界となる事態に直面します。「低炭素成長」の具体化を急がなければなりません。

 そして、リー・クアンユー元首相がかねてより警鐘を鳴らされているとおり、社会の高齢化の波は、2020年以降、確実にアジアを覆っていきます。高齢化がもたらす社会の歪みに、早くから万全な備えをしておかなければなりません。

 こうしたリスクを封じ込め、アジアは、強靭な活力ある社会を維持していけるのでしょうか。日本は、アジア全体の先行きを占う壮大な「鏡」であり、アジアのどの国よりも早く、この挑戦に立ち向かわなければなりません。

(4.アジア全体に資する日本の挑戦)

その典型となる挑戦が、「社会保障と税の一体改革」であります。

 戦後の日本は、国民皆保険、国民皆年金といった確かな社会保障制度に支えられた「分厚い中間層」の存在により、世界に類のない高度成長を達成しました。しかし、あまりにも急速に少子高齢化が進み、制度を持続可能とするため、大きな手術が「待ったなし」になっております。

 少子高齢化社会到来は、ずいぶん前に予見されていましたが、問題は半ば先送りされてまいりました。

 私は、この改革を成し遂げることによって、課題を先送りしない「決断する政治」の先鞭をつけたいと考えています。私は、「決断する政治」の象徴的な課題だと考えるからこそ、この一体改革を最優先課題の一つとして掲げ、その実現に向けて全力を傾けているところでございます。

 この長年の「宿題」を日本が自ら解決し、確かな処方箋を示していかなければ、2020年以降、日本を追いかけるように高齢化していく他のアジア諸国に対して、同じ課題を残したままになってしまいます。

 この改革を必ずや実現して、持続可能な高齢社会の「アジア・モデル」を示していきたいと考えています。

(5.地域の「繁栄」の基盤づくりのために)

 豊かなアジアの未来を呼び込むためには、各国それぞれの取組とともに、「繁栄の共通基盤づくり」に皆で汗をかかなければなりません。

 「財政健全化」と「経済成長」の両立は、繁栄の大前提となる課題です。特に、人口構成が高齢化していけば、経済成長を促すための環境整備は、各国共通の課題として、今まで以上に意識されていくでありましょう。

 高いレベルでの経済連携を目指した「アジア太平洋自由貿易圏」は、域内の経済成長を促す基盤として、より重要性を増すはずであります。

 その実現に向け、TPP交渉参加に向けた関係国との協議を引き続き進めるとともに、先般の日中韓サミットで年内の交渉開始につき一致した日中韓FTAやASEANを中心とした東アジア地域の包括的な経済連携を並行的に追求をいたします。

 これらの取組が相互に刺激し合い、すべてが活発化するというダイナミズムが働いていくことを期待しているところであります。

 このように、我が国としては、様々な場を活用して、域内の貿易・投資のルールづくりを主導し、議論を牽引したいと考えております。

 また、各国の先駆的な知見を集め、低炭素成長を加速させることも重要です。

 先月、東京で開催した「東アジア低炭素成長パートナーシップ対話」は、そのための先駆的な取組の一つです。「省エネ先進国・日本」として、この分野で引き続き主導的な役割を果たしてまいります。

(6.繁栄に欠かせない「安定」をもたらすために)

 そして、「繁栄」を追求するためにも、地域全体の「安定」が欠かせません。そのために重要なのは、共通のルールに基づき、摩擦に対処していくという姿勢であります。

 域内のルールメークの基盤となるのが、開放的な地域協力です。ASEANとの間で進めている域内の連結性強化の取組はその一例であり、これを、改革が進んでいるミャンマーを経て、成長著しい南アジア地域まで繋げることによって、更なる地域の発展が期待できます。

 また、欧州発の金融危機がアジアに波及することを未然に防ぐため、チェンマイ・イニシアティブを強化する具体策に合意したのも、地域の安定に寄与する重要な取組であります。

 我が国は、今後とも、東アジア首脳会議やAPECなど様々な場を使って、域内の秩序・ルールづくりに重層的に取り組み、アジア・太平洋の安全保障を高め、地域の安定に積極的な役割を果たしてまいります。

(7.おわりに)

 私は明日沖縄に赴き、第6回太平洋・島サミットを主催をいたします。太平洋島嶼(とうしょ)地域の平和と繁栄に向けた有意義な議論を行う考えです。

 「繁栄」と「安定」に裏打ちされた、確かな「アジア太平洋の世紀」を切り拓いていくために、各国がそれぞれの責任を果たしながら、共に成し遂げていくべき課題は、数多くあります。

 この「アジアの未来」に代表される知的交流の場は、そうした課題を再確認し、地域の協力を進展させるきっかけとなりうるものです。関係者のご尽力に敬意を表しつつ、今後の益々の発展をお祈りして、私のスピーチを締めくくらせていただきます。

 ありがとうございました。

 アジアをリードしていくんだという強い決意に満ちた気概溢れる、人を感動させずにはいられない力強い美しい言葉の羅列を物の見事に実現させている。

 このような力強い言葉を実現させることができたという点に於いては強烈な(まではいかないかな?)リーダーシップを感じ取ることができる。

 例えば、「『アジア・太平洋の世紀』の最大の特徴は、かつてない規模での『豊かさの増大』にあります。

 最新の予測によれば、5年後には、アジア新興諸国のGDPは20兆ドルに達し、米国やEUと並ぶ巨大経済圏になると見込まれております。21世紀初頭は、わずか2.5兆ドル程度であったことを考えると、その成長力は驚異的であります。

 豊かさは、『中間層』の爆発的な拡大を生んでいきます。今後10年の間に10億人を超える新たな中間層が生まれ、その旺盛な購買力が生み出す好循環は、これからの世界経済を動かす巨大なエンジンとなることは間違いございません」の件(くだり)は実現がすぐの目の前に控えている確約されたものの如くに聞く者をして確信させる。

 アジア・太平洋地域が「かつてない規模での『豊かさの増大』にあります」ということは現在進行形の渦中にある「増大」を言うはずで、その「豊かさの増大」化は「『中間層』の爆発的な拡大を生んでいき」、「5年後には、アジア新興諸国のGDPは20兆ドルに達し、米国やEUと並ぶ巨大経済圏になる」と予測しているのである。

 これ程の壮大な確約はないはずである。

 だが、この確かな約束、あるいはよく当たる占い師並みの予言はアジア・太平洋地域に於いても存在する貧富の格差拡大現象、あるいは貧富の格差二極化現象の抑制と収束を同時に約束、あるいは予言しないことには、その「豊かさの増大」は欠陥ある、見せかけの姿を取ることになる。

 にも関わらず、野田首相はこのスピーチで格差について一言も触れていない。一言も触れずに、「豊かさの増大」一方の「アジアの未来」を力強い胸打つ言葉で描いている。

 このように描くためには否定されるべき汚れた風景である貧富の格差拡大現象、あるいは貧富の格差二極化現象は触れるわけにはいかなかったのだろうか。

 第18回国際交流会議に臨席したマハティール元首相のマレーシアは、「Wikipedia」に、〈民族間に限らず、国民全体に貧富の差が広がりつつあり、経済格差の規模は東南アジア最大である。〉という記述があるし、同じく臨席したリー・クアンユー元首相のシンガポールに関しては、《「シンガポールは格差社会だ」》堀江貴文ブログ「六本木で働いていた元社長のアメブロ」/2009-09-29 12:03:31)には格差に関する次のような記述がある。

 〈日本に比べれば超格差社会である。しかし格差の下層部に居る人たちが豊かな暮らしを出来ていないわけではない。生活する上で大事な食。シンガポールには沢山のホーカーズと呼ばれる屋台コンプレックスが存在し、格安で食事を楽しめる仕組みになっている。もちろん都心部には東京並みの高級レストランも存在し、ブランドショップが林立している。たったあれだけの面積に格差社会が詰め込まれている。〉・・・・・

 シンガポールは日本よりも超格差社会だが、インスタントラーメンなどで飢えを凌いでいる、社会の底辺に位置した低所得層たる日本のフリーターたちよりもマシな貧乏生活を送っているという比較対照に過ぎない。

 経済の拡大が格差の拡大を生んでいるのである。と言うことは経済の拡大は富が上層のみに偏って流れることを示し、ある意味、高所得層による低所得層からの富の剥奪が彼らの富の独占を成り立たせる経済構造となっていると言うこともできる。

 経済の拡大が格差拡大を生んでいる現実世界の困難に向ける視点を欠いた野田首相が言っている「アジアの未来」であるなら、「豊かさは、『中間層』の爆発的な拡大を生んでいきます。今後10年の間に10億人を超える新たな中間層が生まれ、その旺盛な購買力が生み出す好循環は、これからの世界経済を動かす巨大なエンジンとなることは間違いございません」とする理想世界実現の実効性は怪しくなり、話半分のアジアをリードしていくんだという強い決意に満ちた気概、聞く者をして人を感動させずにはいられない力強い美しい言葉の羅列と見ないわけにはいかない。

 次の野田内閣の「社会保障と税の一体改革」を「必ずや実現して、持続可能な高齢社会の「アジア・モデル」を示していきたい」の意気込み、強烈なリーダー意識を持たせたその実現性にしても、最初に野田内閣の社会保障と税の一体改革は既に「アジア・モデル」とする絶対条件を失いつつあると書いたように話半分、あるはいそれ以下、あるいはまるきりのマヤカシと見た方がいい。

 この「アジア・モデル」とする基本形は野田内閣が閣議決定した「社会保障と税の一体改革大綱」念頭に置いたものでなければならないはずだ。なぜなら、それを最善だとして整備した内容であるはずだからだ。

 決して最善ではないものをつくりましたとは言えない。

 また、最善であるからこそ、「アジア・モデル」とすべく意志志向が可能となる。

 国会に上程し、採決を得て実体的制度として社会に定着させて、「持続可能な高齢社会」の確立と同時に持続可能な財政健全化を目指そうと努力してきた。

 いわば野田内閣の「社会保障と税の一体改革」を「必ずや実現して、持続可能な高齢社会の『アジア・モデル』」とするには閣議決定の「社会保障と税の一体改革大綱」の実現を前提としているということであり、前提としていなければならないことになる。

 なんてたって最善の「社会保障と税の一体改革」案なのだから。

 だがである。最初の「不退転の決意」もどこへやら、野田内閣が最善だとして掲げてきた低所得層対策としての「最低保障年金」と、同じく低所得層向けの消費税逆進対策としての「給付付き税額控除」が野党の猛反対に遭って同意を得ることができず、ただでさえ与野党逆転状況の参院通過が危ぶまれているところに持ってきて、残り1カ月を切った審議日程との関係からも野党の両案撤回の要求に対して柔軟な姿勢に転じたことは妥協を前提とした野田内閣閣議決定の「社会保障・税一体改革大綱」の変質を同時に意味することになる。

 簡単に言うと、「持続可能な高齢社会の『アジア・モデル』」とするとした「社会保障と税の一体改革大綱」とは別の内容となるということである。

 5月22日の衆院社会保障・税特別委員会。

 安住財務大臣「(低所得層の逆進性対策として)軽減税率を導入し、適用範囲を広げると兆円単位で税収に影響する。諸外国をみると、標準税率が15%前後の国では導入しているところもあり、現金を給付するなどの『給付付き税額控除』と『軽減税率』のどちらがよいのか議論してほしい」(NHK NEWS WEB

 「給付付き税額控除」が最善の逆進性対策だとしていたのが、「どちらがよいのか議論してほしい」と後退を示すことになった。

 5月23日の衆院社会保障・税特別委員会。

 野田首相「最低保障年金というゴールを見て、今、改善しなければならないという意見と、現行の制度は大丈夫なので改善しながらよりよいものを作ろうという姿勢は、一致点は見いだせる」(NHK NEWS WEB

 野党は「最低保障年金」の撤回を求めているのである。参院の議席数がそのまま反映することになる現在の力関係から言って、野田首相が「見いだせる」としている「一致点」は限りなく撤回に近い形の場所となるだろう。

 例えそこまでいかなくても、野田内閣閣議決定の「社会保障・税の一体改革大綱」とは厳密には違ったものとなる。

 当然、最善としてきたこととは内容の変質が避け難くなった状況下で「社会保障と税の一体改革」を「実現して、持続可能な高齢社会の『アジア・モデル』」とするということは矛盾しているということだけではなく、矛盾であることにとどまらず、詐欺でもあり、変節にも当たるはずだ。

 野田首相の国際交流会議「アジアの未来」のスピーチは5月24日午後。5月24日以前から既に制度内容に対する妥協の姿勢を野田首相を筆頭に安住財務相、岡田副総理等が示していたのである。

 だからこそ、政府の国会対応に対して民主党内から反発の声が上がった。《一体改革:民主・前原政調会長 政府答弁に不満示す》毎日jp/2012年05月22日 21時36分)

 5月22日記者会見。

 前原誠司口先番長「(野党の修正要求への)柔軟対応がにじみでていて違和感を感じる。

 我々は(政府案が)ベストだと認識している。最終的な修正協議では柔軟な対応をすべきだが、党の立場を踏まえてもらいたい」

 記事はこの発言を民主党内の反発を懸念してクギを刺したものだとしている。だが、如何ともし難い数の力を前にした政府の四苦八苦を救う方策が政策によっては丸呑み、あるいは大きな譲歩以外にない以上、前原発言は尤もらしげに取り繕いの体裁を述べたに過ぎない。

 野田首相はこれまで消費税増税はマニフェスト違反ではないと強硬に主張してきたが、5月24日の衆院消費増税関連特別委員会で到頭降参する妥協を見せた。《増税提起は「公約違反」 首相、初めて認める 衆院委》asahi.com/2012年5月25日0時14分)

 野田首相「2009年(の衆院選で)マニフェストに明記せず、口頭では任期中に上げないと国民に訴えた。選挙時に明確に方向性を打ち出していなかったことはおわびする」

 だが、この発言にもゴマカシがある。「マニフェストに明記」しなかったこと、「口頭では任期中に上げないと国民に訴えた」こと、「選挙時に明確に方向性を打ち出していなかったこと」は間違いだったとして、そのことに謝罪しているが、これらのことに違反して打ち出した野田首相の消費税増税であるはずだが、そのことは間違いだとはしていない発言となっている。

 間違いだとしていなからこそ、消費税増税そのものを撤回するとは発言しなかったのだろう。

 口達者だからできる、なかなかの誤魔化し屋である。

 だとしても、何よりのゴマカシ・矛盾は変質目前の運命にある「社会保障と税の一体改革」の実現を以てして、「持続可能な高齢社会の『アジア・モデル』」としていることである。

 これを以て大言壮語と言わずに他に言いようはないはずである。

 もし変質目前の運命にないというなら、野党に対してどのような妥協も示すべきではない。玉砕を覚悟で遣り抜くべきだろう。

 但し、玉砕した場合であっても、「持続可能な高齢社会の『アジア・モデル』」とはならないことに変わりはない。

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