安倍晋三に不正確な情報をタレ流させて選挙戦を有利にさせた野党党首たちの責任

2013-07-24 10:23:08 | Weblog


 
 昨日(2013年7月23日)、パソコンを叩き“ながら視”していたNHKテレビ番組「クローズアップ現代 検証“ネット選挙”」で、街頭演説を行なっていた安倍晋三が、大写しになっていたから、周囲はよく見えなかったが、テレビ画面で見た限りでは多くの聴衆を前にして、「安倍政権になってから、GDPがプラスの4.1%になった」とか、汗をかいた顔でマイクを握り、声を張り上げていた。

 番組はその場面を伝えただけで、別の場面に移っていったから、次にどのような言葉を発したかは分からない。

 そのとき瞬間的に気づいたのだから、後付けの知恵となるが、要するに安倍晋三は有権者に対してアベノミクスの効果を印象づけるべく数字を、選挙戦を通じてのことだろう、操作していたのだから、野党党首達はそのことに対抗して、不正確な情報を垂れ流す、人間的に信用の置けない政治家という逆の印象づけを行って対抗すべきではなかったかと気づいた。

 安倍晋三のアベノミクス効果の印象づけが、それが不正確な情報であっても、無党派層の票獲得に力を発揮したはずだ。逆説するなら、野党各党は安倍晋三に対して不正確な情報による無党派層の票獲得をみすみす許したことになる。

 勿論、GDPプラス4.1%は正確な数字だろうが、株高と円安が押し上げたGDPプラス4.1%であって、株を持たないばかりか、為替変動が円安に振れたときに利益に関係しない場所にいて、また実質賃金が上がらない状況下のその他大勢の一般国民にはGDPプラス4.1%は意味のない数字であって、正確な情報とは決して言えない。

 逆に円安は輸入生活物資の高騰と電気代等の高騰を招き、生活を圧迫する要因となって一般国民を襲う。

 不正確な情報を流すのは不正直だからである。国民各階層に満遍なく向ける目を持たないから、不正確な情報を平気で垂れ流す不正直を犯すことになる。

 先行きGDPプラス4.1%がさらにプラスの上昇気流に乗せて一般国民の賃金につながっていく保証があるなら、正確な情報とも言えるが、2001年4月26日から2006年9月26日の小泉内閣時代と2006年9月26日から2007年9月26日の第1次安倍内閣時代と重なって2002年1月から2007年10月までの69カ月間続いた「戦後最長景気」の際は大企業は軒並み戦後最高益を得ながら、賃金に反映されず、当然、個人消費も伸びず、実感なき景気と言われた前例もあるのだから、GDPプラス4.1%が賃金につながる保証があるわけではない。

 すべての国民にほぼ同等に利益を配分するGDPプラス4.1%ではないにも関わらず、安倍晋三は有権者にアベノミクスの効果を示す数字として宣伝し、効果を印象づける情報として巧妙な用い方をした。

 このGDPプラス4.1%は2013年6月18日の「G8サミット閉幕後内外記者会見」でも、記者の質問に対して用いている。

 安倍晋三「GDPの成長率は、昨年の7月、8月、9月は、マイナスの3.6%だった。しかし、それが今年に入って1月、2月、3月は、プラスの4.1%、マイナスからプラスに、ネガからポジに、私たちが進めている政策によって変わったんですね。そして4月の数値を見てみると、消費においても生産においても数値は改善しています」――

 「消費においても生産においても数値は改善しています」と言っているが、主体は高所得層の消費に傾いた数値改善であり、生産も円安で利益を受けた主として外需産業であって、産業全般に亘る生産の改善ではないのだから、不正確・不正直な情報のタレ流しであることに変りはない。

 参議院選挙ということで日本記者クラブを始め、各テレビ局が党首討論を開催した。そこでも安倍晋三は不正確・不正直な情報をタレ流していたのだから、単にその情報を批判するだけではなく、不正確・不正直な情報を流布させる、人間的に信用の置けない政治家という、事実その通りの印象づけを行なって対抗手段とすべきではなかったろうか。

 7月3日の日本記者クラブ9党党首討論から始めて、各テレビ局の党首討論を日付順に、既に文字に起こしてある箇所に限って、安倍晋三が不正確・不正直な情報を流布させている発言を、既にブログに書いてあることと重なる箇所もあるが、再度取り上げて、それらの発言に対する野党党首の対応を見てみることにする。

 7月3日日本記者クラブ9党党首討論――

 小沢一郎生活の党代表の非正規雇用拡大に対する質問に答えた安倍晋三の発言だが、質問と回答が1回限定形式となっていて、小沢氏にはその場での反論の機会がない。だが、次の質問の順番が回ってきたとき、不正確な情報であることを追及して、信用の置けない政治家であるという印象づけを行うべきだったが、そういった戦術は取らなかった。

 安倍晋三「先ずね、雇用について言えば、安倍政権になってですね、5月、前年同月比、60万人増えました。そしてですね、いわゆる有効求人倍率、0.9になりましたね。これはリーマンショック前に戻りました。

 我々の政策によって、(声を強めて)明らかに実体経済が良くなって、雇用にもいい影響が出てきました。そして雇用市場がタイト(=不足)になって来れば正社員は増えていきます。

 事実、正社員、4月2万人求人が増えています。ですから、間違いなく、これはまだ半年間で、このような数字が出ていますから、これを続けていけば、必ず皆さんに実感していただけるだろうと、こう、オー、確信しております」――

 すべて不正確・不正直な指標で成り立たせた不正確・不正直な情報のタレ流しを駆使したアベノミクス効果の印象づけに過ぎない。
 
 「5月、前年同月比、60万人増えました」と言っても、その中に多くの非正規雇用が含まれているし、 「有効求人倍率、0.9」にしても、正社員に限った有効求人倍率ではないし、「正社員、4月2万人求人が増えています」と言っているが、2万人すべてが正社員であるわけではないと見て、明らかにウソの情報だとブログに書いたが、改めて調べ直してみた。

 厚労省HP――《第1表 一般職業紹介状況(新規学卒者を除きパートタイムを含む)》を見ると、正社員の新規求人数は3月305753人に対して4月326870人となっていて、確かに21117人、安倍晋三が「正社員、4月2万人求人が増えています」と言ったとおりに増えている。

 この点に関しては正確・正直な情報の流布と言うことができる。

 だが、非正規・パート等を含めた全数で、前年同月比707643人に対してプラス10.5%となっているものの、4月新規求人数は698062人で、3月の793120人よりも95058人減っている。

 常用と言うことで見てみると、前年同月比ではプラス9.1%の639926人で、58136人増ではあるが、3月706717人に対して4月 698062人の8655人減で、やはり減っている。

 新規求人数を取るだけでも、格差拡大を見て取ることができる。

 要するにアベノミクスの効果を印象づけ、宣伝するために都合のいい統計だけを有権者に提示する情報操作、不正確・不正直な情報流布を駆使しているに過ぎない。

 このような選挙戦術は果たして人間的に信用の置ける政治家の遣り方と言えるだろうか。

 上記調べ直した以外のことは2013年7月5日当ブログ記事―― 《安倍晋三がウソつきだと分かる小沢一郎生活の党代表の党首討論雇用質問に対する答弁 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に書いて、記事最後の結論で、〈安倍晋三ははっきり言って、ウソつきである。〉と断罪したが、不正確・不正直な情報を垂れ流す、人間的に信用の置けない政治家であると事実その通りに印象付ける選挙戦術が必要なことまで考えていたわけではない。

 7月3日の日本記者クラブ9党党首討論から4日後の7月7日フジテレビ「新報道2001」でも、安倍晋三はほぼ同じ繰返しの不正確・不正直な情報で以ってアベノミクスの効果を印象づける戦術を用いている。

 安倍晋三「私たちは明確な物価安定目標を示しています。その中でですが、景気が動き始めている中に於いて、雇用は段々創出され始めました。民主党政権下、55万人正規社員が減りました。

 しかし政権替わってからですね、求人ではありますが、2万人正社員、求人増えた。そして前年度比で5月60万人、雇用が増えたんですね」――

 司会者からこの安倍発言に対する意見を直接求められて、志位和夫共産党委員長が発言している。

志位和夫共産党委員長「今、総理が昨年比で60万人雇用を増やしたと言ったのですが、中身を分かっておっしゃっていらっしゃるのでしょうか。

 60万人と言いますが、増えたのは非正規(雇用)が116万(人)、正社員は47万(人)減っているんですよ。つまり、正社員から非正規への大規模な置き換えが進んでいる。これは、ずっと自民党政権下で、労働法制の規制緩和をやってきた結果なんですね」――

 志位委員長は続けて話題を解雇の自由化等の問題に移してしまう。「60万人雇用」の中身を解説したのみで、特に内容の不正確さを批判したわけではないし、不正確・不正直な情報を垂れ流す信用の置けない政治家という文脈で印象づける戦術を取ったわけではない。

 あの場で、「いい加減な情報を垂れ流して、有権者をたぶらかさないでください」と一言釘を差し、各遊説の先々で、このような人間的に信用の置けない政治家だと印象づける選挙戦を展開したなら、少しは違う結果を招くことができたのではないだろうか。

 フジテレビ「新報道2001」と同じ7月7日のNHK「日曜討論」

 安倍晋三「雇用に於いても60万人、えー、増えたんですね。前年同月比。えー、増えました。正社員についても2万人、増えた。

 段々労働市場がタイトになってくれば、必ず労働条件、えー、賃金も上がっていく。えー、この夏はですね、大手でありますが、7%、あのバブル期以来の伸び率になっていきますから、私は必ず賃金は上がっていくと、このように確信をしております」――

 「新報道2001」志位共産党委員長から「60万人雇用」の中身の不正確さを指摘されながら、その舌の根も乾かない短い時間の経過後に、性懲りもせずに「雇用に於いても60万人、えー、増えたんですね。前年同月比」と言って、その不正確・不正直な情報をアベノミクスの効果を印象づける情報として利用している。

 正社員新規求人2万人にしても、他の新規求人数を隠しているのだから、同じ利用ということができる。

 アベノミクスの効果を印象づけるこのような不正確・不正直な情報で、どれだけの有権者を釣り上げたのだろうか。

 2日後7月9日の夜のTBS テレビ「NEWS23」

 安倍晋三「あの、実体経済は確実に良くなっています。有効求人倍率は0.9ですから、これはリーマンショック前に戻りました。去年同月比で雇用も60万人、ま、増えています」

 続けて海江田民主党代表、その他が発言しているが、安倍晋三が発信する不正確・不正直な情報のタレ流しを攻撃する文脈での発言ではなかった。

 志位委員長「今のですね、経済情勢の認識がですね、安倍さん、良くなった、良くなったと一点張りなんですが、例えば雇用は60万人増えたとおっしゃるけれども、正社員は1年間で47万人減っているんですよ。

 つまり、正社員は非正規社員への置き換えが起こってる、こういう状態なんですね。・・・・」――

 志位委員長にしても批判とまではいかない、語調からしても中身の単なる解説で終わって、「新報道2001」と同様、労働法制の規制緩和を批判、労働のルールの立て直しの必要性を訴える発言につなげていったのみである。

 翌日7月10日の朝日テレビ「報道ステーション」

 古館伊知郎アナ「(安倍晋三の来年には賃金が上がるとする主張に対して、かち合う形で)消費税が来年上げるとすると、消費が冷え込むという見方が当然出てくるんで、課題が難しいところですね」

 安倍晋三「あの、これは非常に難しいところでしてね、あの、ま、実際、あの、雇用も、えー、5月前半、同月比60万人増えて、段々雇用の状態が良くなっていけば、雇用市場、段々タイトになって、賃金が上がっていくという状況も出てくるんですが、来年の4月、消費税3%上げる、この3党で決めた。

 これは伸びていく社会保障、あるいは大きな借金がありますから、国の信認を保たなければならない。・・・・」――

 アベノミクスは円安・株高によって経済格差拡大を招いている。デパートでは高額商品が売れ、住宅販売が伸び、高級自動車が売れて、大型自動車志向が高まっている。

 だが、多くの国民が給与が増えない状況の中、スーパーで1円の節約に血眼になっている。

 当然、この経済格差は雇用60万人の中の正規・非正規と相互反映し合う。

 安倍晋三はこのような中身の実態を隠して、アベノミクスの効果を印象づけるプラスの情報としてタレ流し、そのような情報に踊らされたのだろう、自民党は今回の参院選挙で無党派層の支持を大きく受けた。

 逆に民主党は無党派層の支持を失い、それが全体の獲得議席に現れた。

 あとで気づく寝小便でしかないが、もし野党党首達が各テレビ討論や街頭演説で安倍晋三を不正確・不正直な情報を垂れ流す、人間的に信用の置けない政治家と印象づける戦術を取って攻撃したなら、無党派層の投票動向もまた違った様相を見せたのではないだろうか。

 いや、遅くはない。飯島訪朝の結果報告もしていない。谷内、谷口訪中の結果も公表していない。芳しい結果を得ることができなかったからこそ公表しないのであって、いわば情報を隠蔽している状況に置いている。都合の悪いことは隠し、都合のいいことだけを白日に曝す。

 今後共不正確・不正直な情報を垂れ流して、アベノミクスの効果を印象づける戦術を取るだろうから、野党各党は国会追及等で、安倍晋三を正確・不正直な情報を垂れ流す、人間的に信用の置けない政治家と印象づける戦術を取って、対抗すべきではないだろうか。

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