安倍晋三の外交能力をさも有能と見せかける参院選対策用の粉飾が進んでいる

2013-07-03 05:16:15 | 政治

 安倍政権で内閣官房参与を務める谷内(やち)元外務事務次官が6月17日、18日の2日間中国を訪問し、尖閣諸島を巡る問題で冷え込んでいる日中関係改善に向けて、中国政府の関係者と会談したと次の記事が伝えている。

 《内閣参与が訪中 関係改善模索か》NHK NEWS WEB/2013年6月20日 18時48分)

 6月20日午後の記者会見。

 菅官房長官「谷内訪中に関しては政府としてのコメントは差し控えたい」(解説文を会話体に直す)

 記者「谷内氏は、安倍総理大臣や菅官房長官の了解の下で中国を訪れたのか」

 菅官房長官「基本的にはそう思ってもらって結構だ。

 日本は『対話のドアは常に開いている』と言い続けている。沖縄県の尖閣諸島を巡る問題などいろいろあるが、中国と戦略的互恵関係を結んだのは安倍総理大臣だ。政府としては常にさまざまな可能性を考えている」――

 記事の会話に関わる活字からでは伝わってこないが、ニュースでの菅官房長官の口調は歯切れが悪くて明快な口調とは程遠く、言い淀みがあったから、関係改善模索に失敗したなと思わせた。

 具体的にどう発言したのか、内閣官房のHPから菅官房長官の6月20日午後動画にアクセスしてみた。

 記者「谷内訪中の狙いは」

 菅官房長官「事実関係は承知しているが、政府としてはコメントを差し控えさせて頂きたい」

 記者「長官や総理が、内閣官房参与ですから、了解のもとに行かれていると認識しておりますか」

 菅官房長官「まあ、あのー、まあ、基本的に、あのー、そうなんだろう、こう、オー、(苦笑を漏らし)思って頂いても結構です」

 記者「総理がロンドンで、『習近平主席といつでも首脳会談をする用意はある』と言ったことと谷内氏の訪中は関係あるのか」)

 菅官房長官「私自身は関係ないと思う」――

 首相の女房役と言われている官房長官が首相の了解のもとの訪中なのかどうか把握していないということはなく、「基本的に、あのー、そうなんだろう」という推測語での物言いはあり得ない。

 もし菅官房長官が知り得ていない安倍晋三独自の秘密外交であったなら、両者間の信頼関係はないことになって、女房役としての存在意義はゼロとなる。

 また、安倍晋三のロンドンでの発言と関係ないことはなく、大いに関係はあるはずだ。それを「関係ないと思う」と言い、歯切れの悪い推測語と言い、谷地訪中は失敗したなと思わせた。

 谷内内閣官房参与が訪中したのは6月17日、18日の2日間。安倍晋三がロンドンで講演したのは6月19日。1日のズレがあるから、谷地訪中の結果を知らされていなかったとしたら、情報収集に問題があることになる。

 イギリス・ロンドンで講演後の記者会見。

 記者「経済成長には中国との関係改善が必要ではないか」

 安倍晋三「何か問題があったとしても話し合いを続けていけることが大切だ。私は常に対話のドアは開いているし、習近平主席といつでも首脳会談をする用意はある」(NHK NEWS WEB)――

 「何か問題があったとしても話し合いを続けていけることが大切だ」の意味は話し合いを続けていくことができない状況を前提としているはずだ。

 谷地訪中失敗を前提とすると、その情報を得ていたはずだから、中国側の拒絶反応に対する自身の心境、対中姿勢を述べたことになる。

 決定とまで行かなくても、日中首脳会談開催の可能性を見い出していたとしたら、「何か問題があったとしても話し合いを続けていけることが大切だ」などと言わずに、別の言い方をしただろう。

 私自身は失敗したと判断した。

 ところが6月22日になって、安倍晋三外交ブレーンの一人である谷口智彦内閣審議官が6月28日から中国を訪問する予定だと明かしたと「時事ドットコム」が伝えた。

 この事実を素直に受け止めると、谷内訪中は日中首脳会談開催の可能性を見い出し得たことになる。要するに谷口内閣審議官は日中首脳会談開催実現に向けた詰めの交渉のために訪中ということもあり得る。

 素直にではなく、疑ってかかると、谷内訪中失敗の場合は飯島訪朝失敗に続く失敗となり、安倍晋三自身の外交能力の評価に関わってくる。無能力の評価を避け、有能と思わせる粉飾のために谷内訪中が一定程度成功したと見せかけることになる谷口内閣審議官の訪中ではないかと見ることができる。

 「時事ドットコム」解説。〈谷口氏は、米ブルッキングズ研究所研究員などを経て今年2月から内閣審議官を務め、首相のブレーンとして外交スピーチなどの作成に当たっている。谷内氏にも近く、同氏が外務事務次官だった際に民間から外務副報道官に起用された。〉――

 安倍晋三の外交スピーチは安倍晋三のオリジナルではなく、谷口内閣審議官作成によるということになる。

 果たして安倍対中外交は成功の判断をすべきなのか、失敗とする判断が妥当なのか、いずれなのだろうか。

 谷口内閣審議官の6月28日からの中国訪問によって受けた情勢変化からだろう、菅官房長官が6月30日に東京都内で講演して、対中関係について発言している。

 《官房長官 中国との間合い狭まっている》NHK NEWS WEB/2013年6月30日 23時7分)

 菅官房長官「日中間でさまざまな折衝をしているが、お互いの間合いは狭まってきている。安倍総理大臣の外交姿勢は間違っておらず、冷静にきぜんと外交を進めていく」――

 「日中間でさまざまな折衝」とは谷地訪中と谷口訪中を指すはずで、両訪中によって「お互いの間合いは狭まってきている」ということなら、安倍対中外交は進展の過程にあることになる。

 しかも、「安倍総理大臣の外交姿勢は間違っておらず、冷静にきぜんと外交を進めていく」と自信を見せている。

 谷内訪中は失敗で、その失敗を隠蔽するための、と言うことは、安倍外交無能力を隠蔽して、逆に有能と見せかける谷内訪中に続く谷口内閣審議官訪中の粉飾だとした私自身の判断は全く以ってゲスの勘繰りとなる。

 岸田外相も安倍対中外交の進展を発言している。《政治対話実現に期待=岸田外相》時事ドットコム/2013/06/21-10:30)

 6月21日午前の閣議後記者会見。

 岸田外相(谷内正太郎内閣官房参与の中国訪問に関して)「今さまざまな対話、意思疎通が行われているが、こうしたものをしっかりと積み重ねることで、政治レベルでの対話も実現したい」――

 このような展開からすると、誰しもが日中対話のドアが開らかれるのは間近だと期待しないわけにはいかない。

 朝日新聞社が6月29、30日に行った世論調査の、安倍晋三の外交・安全保障政策への取り組みを「評価する」49%、「評価しない」29%とする世間一般の評価はその外交能力を正しく見ていることになる。

 菅官房長官が日中双方の「お互いの間合いは狭まってきている」と言い、「安倍総理大臣の外交姿勢は間違っておらず」と発言したのは6月30日の東京都内の講演である。

 ところがその2日前の6月28日、安倍晋三はインターネット番組の公開討論会で対中関係改善が進んでいないと発言している。

 《「尖閣棚上げで首脳会談」示唆》NHK NEWS WEB/2013年6月28日 23時2分)

 安倍晋三「日本と中国は切っても切れない関係だ。だからこそ、さまざまな問題があったとしても、首脳会談や首脳どうしの交流がとても大切で、『日本のドアは常に開いている』と言っている。

 中国側は、『尖閣の問題について、ある一定の条件を日本がのまなければ首脳会談をしない』と言ってきている。『それは間違ってますよ』ということを、われわれは言い続けている。何が何でも首脳会談をやろうとして、こちらが国益を削っていくのは間違っている」――

 要するに中国の態度も不変で、日本政府の態度も不変と言うことになって、関係改善は何も進んでいないことになる。

 だとすると、谷内訪中は中国政府の態度を変えるに至らず、失敗したことになる。では、谷内訪中の後追いの形の谷口訪中は何のためだったのだろう。谷内訪中は失敗で、その失敗の隠蔽と安倍外交無能力の隠蔽のための谷口訪中の粉飾ではないかした私自身のゲスの勘繰りが正しかったことになるのだろうか。

 中国政府が日中首脳会談開催に付けた条件を伝えると同時に谷地訪中が失敗だったと分かる記事がある。《中国、尖閣「棚上げ」迫る…首脳会談の条件に》YOMIURI ONLINE/2013年7月2日03時12分)

 日中首脳会談開催の条件。

 〈1〉日本政府が領土問題の存在を認める
 〈2〉日中双方が問題を「棚上げ」する
 
 日本政府関係者「中国政府は6月中旬、日本側に首脳会談開催の条件を伝え、受け入れを求めた」(解説文を会話体に直す)

 記事は条件を突きつけられた日本政府の態度を次のように伝えている。〈これに対し、谷内正太郎内閣官房参与が訪中した際、戴秉国(ダイビングオ)(たい・へいこく)前国務委員との会談で「日本政府として、認められない」と回答した。〉云々。

 単に「日本政府として、認められない」と回答するためにだけ訪中したわけではないはずだ。中国側の条件の撤回を求め、日本側の条件を提示したはずだ。

 勿論、中国側も、「中国政府として、認められない」と回答したはずだ。

 このことは6月中旬以降も続いた中国監視船の尖閣周辺の接続海域航行と6月30日の中国企業の海洋調査船の日本の排他的経済水域への出没、7月1日の中国海洋監視船4隻の尖閣沖日本領海侵入が証明している。

 話し合いが進展していれば、こういったことは控えるからだ。

 菅官房長官は谷地訪中が失敗だったからこそ、記者会見で谷内訪中の狙いを聞かれて、歯切れの悪い答弁となった。

 谷地訪中が失敗だったからこそ、安倍晋三のイギリス・ロンドン講演後の記者会見で、「何か問題があったとしても話し合いを続けていけることが大切だ」と、そうはなっていない状況を前提とした発言となった。

 だとすると、6月30日東京都内講演の菅官房長官の「日中間でさまざまな折衝をしているが、お互いの間合いは狭まってきている。安倍総理大臣の外交姿勢は間違っておらず、冷静にきぜんと外交を進めていく」との発言は何だったのだろう。

 ブルネイで開催中の東南アジア諸国連合(ASEAN)で岸田外相と中国外相が同席していながら、日中外相会談を中国側から拒否されてもいる。

 安倍晋三の飯島訪朝の対北朝鮮外交の失敗に続く谷内訪中の対中国外交失敗を隠蔽して、さも有能と見せかける粉飾ではないかとしたゲスの勘繰りが正しかったことなのか。

 当然、この粉飾は参院選対策用ということになる。

安倍晋三の外交能力をさも有能と見せかける参院選対策用の粉飾が進んでいる

 
コメント (2)
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