小沢一郎生活の党代表日本外国特派員協会記者会見要旨と自民党憲法草案97条削除について

2013-07-20 05:16:10 | Weblog



 今日は生活の党から配信された、7月17日の小沢一郎生活の党代表の日本外国特派員協会記者会見の要旨を紹介します。

 最後に取り上げている自民党「日本国憲法改正草案」が削除している「日本国憲法」の97条と、安倍晋三がテレビの党首討論で97条を統合したという11条の条文を記載して、余分ながら少々注釈を加えておきます。 

 《小沢一郎生活の党代表日本外国特派員協会記者会見要旨》

●安倍政権との経済政策の違い

 安倍内閣の経済政策は,小泉内閣とほぼ同質であり、自由競争により競争力のある企業、生産性の高い分野を成長させようというものだ。しかし、そこで得られた富は偏在し、多くの国民に再分配されることはない。たとえば、大企業の内部留保金が260兆ある一方で、一般国民の所得は低下している。

この歪んだ政策を、安倍内閣は小泉内閣以上に徹底しようとしている。また、雇用の面でも、現在、非正規雇用が38%といると言われるが、今後、正規雇用を減らし非正規雇用の割合を拡大させる方向にある。医療分野でも、日本が誇る国民皆保険も破壊しようとしている。

 もとより、自由は人間にとって根源的なものであり、自由競争を否定するものではない。ただ、まったくの自由放任主義とでもいうようなやり方は、弱肉強食の動物の世界と同じになってしまう。

 民主主義は弱い立場にある多くの人間が安定した生活を営めるような社会を構築することで発展してきた。そういう観点からも、雇用、医療、農漁村、年金・・・、あらゆる分野でセーフティーネットをつくったうえでの自由競争であるべきだ。

 安倍内閣との経済政策についての根本的な違いは、私は正規雇用の促進など個人の生活を安定させ、それによって個人消費を拡大させることで景気を回復・拡大していくのが最良の方法と考えていることだ。

 とはいえ、大企業のもつ内部留保金を賃金や配当に強制的に回せとやみくもにいうのは筋が違う。たとえば、特定の年齢層を雇用した場合に税制上の優遇措置をとるなど、富の再配分を促す措置や政策を推進していくことが必要で、それが政治の責任だ。

●野党連合

 参院選には間に合わなかったが、非自民の立場の政党が協力できれば、必ず政権交代できる。国民はその受け皿ができることを望んでいる。

 昨年の総選挙でも自民党の獲得票数は前回に比べて決して増えてはいなかった。また、今年に入っての地方選でも、横須賀市長選に象徴されるように、自民党の敗北が目につき、国民は非自民を選んでいる。

 政党のエゴもあり、野党の協力体制をつくるのはなかなか難しいが、今後、国民の側からこうした声がもっと高くなってくると思う。受け皿づくりは、参院選後も続けていきたいが、私が主導すると、メディアが妨害するので善意の第三者として協力してやっていく立場になりたい。

●普通の国

 安倍内閣が提唱する軍事力を強化したり、あるいは愛国主義を鼓舞するような国を普通の国というなら、北朝鮮も普通の国ということになる。

 私がいうノーマルな国、普通の国とは安倍総理の考える国家像とはまったく違う。国民一人ひとりが自己判断と自己主張ができる、自立した国民が増えることが普通の国になることだと考えている。私はこれを常に訴えかけているが、日本はまだ普通の民主主義国家になっていないと思う。

 私の問題に関しても、私は古い体制を崩さないと新しい日本を生み出せないと信じているので、古い体制から利権を得ている人たちにとって大変危険な思想の持ち主と思われているようだ。しかし、意見の違いがあっても、その相手を権力をもって抹殺しようとするのは民主主義国家とはいえない。そういう意味でも、日本はまだ民主主義国家ではない。

●日米外交

 安倍政権のもとで、日米外交は危ういものになってきている。このことを、安倍総理や国民は真摯に受け止めるべきだ。たとえば、先のサミットでも同じホテルに宿泊しながら日米首脳会談が実現しなかった。同盟関係にある国が、ほんの少しの時間もとれないなど異常なことといえる。今後、安倍政権の右傾化は、国際的に批判されていくだろう。

 また基地問題については、前線に大量の実戦部隊を置くといういままでのアメリカの戦略に変化が見られ、沖縄に海兵隊を置く必要はなくなってきていると思う。極東の平和、有事即応の体制を考えたとき、沖縄を中心にどのような施設が必要か改めて考え直すべきだ。

 また、有事といってもいろいろなケースが想定されるので、米軍がくるまで日本が日本の領土をどう守るかも考えなくてはならない。日本が平和と経済だけで、国際的な責任を果たしていないと言われることについても、はっきり自覚しておかなければならないと思う。

●憲法問題

 自民党の改正案の骨子は、憲法9条2項を削除し「国防軍」を創設することと、97条の削除の2点といえる。これを実現しやすくするために96条を改正しようというのは乱暴な話だ。

 97条は最高法規の章で、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果でかつ永久の権利として獲得した基本的人権を削除しようと言うのはまったく信じられない。

 「日本国憲法」

 第十章 最高法規

 第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。 

 第三章 国民の権利及び義務

 第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

 自民党「日本国憲法改正草案」

 第三章 国民の権利及び義務

 (基本的人権の享有)
 第十一条 国民は、全ての基本的人権を享有する。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利である。



 「日本国憲法」の第九十七条は、基本的人権の自由は一人日本国民のみならず、人類が長年に亘って獲得したもの――人類不可侵の権利だと、国家権力を規制している。

 いわば国家権力が基本的人権の自由を破った場合、日本国民だけの問題ではなく、人類全般に対する挑戦だと厳しく規制している。

 当然、「日本国憲法」の第九十七条は同第三章 国民の権利及び義務の第十一条と同じことを言っているわけではない。

 これに対して自民党「日本国憲法改正草案」は第三章 国民の権利及び義務 第十一条と同じ趣旨だからと第九十七条を削除、統合するとしている。

 “人類不可侵の権利”だからとしている国家権力に対する規制を消し去っている。

 また第十一条にしても、「日本国憲法」が「すべての基本的人権の享有を妨げられない」と、国家権力に対する規制を命令形としているのに対して、自民党「日本国憲法改正草案」は、「全ての基本的人権を享有する」と、その命令形を弱めているだけではなく、「日本国憲法」が規制している「現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」としている保障の対象(=「現在及び将来の国民」)に対する永遠性の強調を自民党「日本国憲法改正草案」は、単に「侵すことのできない永久の権利である」とすることで保障の対象に対する強調を取り払っている。

 自民党「日本国憲法改正草案」が国家優先・国家主体の国民主権、基本的人権としている思想の反映がこのような国家権力に対する規制の緩和となって現れているはずだ。

 国民主権を字義通りに把えた国民優先の「侵すことのできない永久の権利である」ことと、国家優先・国家主体の「侵すことのできない永久の権利である」こととは自ずと違ってくる。

 前者の国家権力にかかるべき規制が後者は国家権力による国民にかかる規制となり得る。

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