自民党圧勝は株高・円安を加速し、富裕層をより豊かにし、中間層以下の生活を直撃するとロイター記事

2014-12-06 06:42:50 | Weblog

 ロイター記事は直接的には自民党圧勝が中間層以下の生活を直撃するとは書いていないが、そう読み取らなければならない。文飾は当方。

 《自民圧勝観測に沸く市場、株高・円安戦略の強化に期待》ロイター/2014年 12月 4日 17:06 ) 

 記事冒頭。12月〈2日に公示された衆院選での自民党圧勝観測を好感し、株高・円安が加速している。政権基盤を盤石にした安倍晋三首相の政策推進力に期待しているだけでなく、これまでの株高・円安戦略が一段と強固になるとの思惑が原動力だ。右傾化加速への懸念はあるものの「それは後回し」といったムードになっている。〉・・・・・・

 右傾化の危険性なんてことよりも、カネになりさえすればいいと市場は熱いムードとなっている。つまり市場は自民党が圧勝することを大々歓迎している。

 問題はこの“歓迎”である。“歓迎”とは、多くの期待を生んでいることを意味する。

 〈期待されるのは、その盤石な党内基盤を背景にした一段の政策推進だ。特にアベノミクスの「第3の矢」である成長戦略や構造改革の推進は、市場でも期待が大きい。〉
 
 藤戸則弘三菱UFJモルガン・スタンレー証券・投資情報部長「これまでのアベノミクスで不十分なのは第3の矢。新たな成長戦略メニューがそれほど残っているわけではないが、これまで停滞していた社会保障改革や環太平洋連携協定(TPP)が進展すれば、マーケットでも大きなプラス材料になる」

 圧勝を力とした党内基盤強化を推進力として第3の矢が軌道に乗り、その成果を確実にしていけば、マーケットの大きなプラス材料になって、なお一層の株高・円安が期待できる。

 市場は自民党圧勝の予測にワクワクしている。

 但し不安材料がないわけではない。自民党圧勝に対しての不安ではない。圧勝が確実に第3の矢の成果に結びつくかどうかの不安である。民間投資喚起を目的としたアベノミクス第3の矢の「成長戦略」は構造改革なくして実現不可能であり、その構造改革に対する既得権益層の抵抗である。

 〈構造改革が再び、既得権益層の抵抗にあい、改革がとん挫する不安もある。「自民党が強いのは依然として地方だ。地方の有権者から反対されそうな農業改革やTPPを果たして推進させることができるかは疑問だ」(国内証券)と不安視する声は、市場でも少なくない。〉・・・・・

 もう一つの不安材料。

 〈財政再建を棚上げすることで、景気対策・デフレ対策にまい進するとしても、円安による輸入物価上昇分を超える賃金上昇が見込めるかは不透明だ。〉・・・・・

 ましてや大多数の生活者を雇用している中小・零細企業にとってはなおさら不透明であろう。

 自民党圧勝の予測だけで既に株高・円安が加速している。市場にとっては歓迎すべきことだが、安倍晋三が来年の春闘、更に再来年の春闘で経団連に賃金アップの圧力を掛けたとしても、企業にしても円安を受けて輸入原材料や輸入製品が高騰、その高騰分をそうそうに製品価格に転嫁できるわけではなく、ある程度抑えて企業負担とした場合、その分、賃金アップに素直に応えることができなくなる恐れが生じる。

 そしてその結果、食品や生活雑貨、その他の生活関連物資の製品価格の高騰が賃金上昇分に追いつかずに中間層以下の生活を否応もなしに圧迫する恐れが二次被害さながらに生じる。

 記事解説を見ると、市場はこういった不安材料を問題視していないようだ。

 〈経済の行方はともかく、株高・円安路線は一段と強固になるとみられている。「安倍首相が絶対的な政治的権力を得たとしても、経済が持続的な成長軌道に乗せることができるかは、まだわからないが、その『手段』として、株高・円安が使われることはまず間違いない」(国内銀行幹部)というのが強気筋の読みだ。〉――

 経済の行方よりも、市場が株高・円安で活気を呈すればいいと市場は見ているということである。

 このような見方を言い直すと、株高は株を持っている富裕層の資産効果を高め、円安は中間層以下の一般生活者の生活を圧迫する背景を抱えることになっても、市場が活況を呈して為替売買や株売買の手数料が入って利益を上げさえすればバンバンザイだということになる。

 更に言い替えると、富裕層と市場にとって株高・円安はツヨーイ味方となるが、一般生活者にとって味方とはならないということである。

 このような状況を記事は次のように解説している。〈円安には副作用も大きいが、衆院選で圧倒的な票数を得れば、「アベノミクス」が国民の信を得たと主張できる。物価は原油安で物価は上がりにくくなっており、少しでもデフレの傾向が強まれば、日銀は追加緩和を実施するとの期待が自民党の圧勝で高まりやすいことになる。日銀や公的年金の買いが押し上げる需給的に歪んだ株高だとしても、株高に反対する声は小さい。〉・・・・・

 円安が一般生活者の生活を圧迫する毒成分の副作用を抱えていようが、歪んだ株高だろうと何であろうと、株高・円安は大々歓迎状況にある。

 記事は自民党が実際に圧勝した場合の慢心が政策実行能力を鈍らせるとか、財政のバラ撒きが生じて財政再建を遅らせることはないかといった懸念材料、あるいは自民党圧勝予測に対する反動が生じて、圧勝が幻で終わることの懸念材料を伝えたあとで、最後に結論づけている。

 〈自民圧勝観測に沸く市場では、まだ懸念を現実的に受け止めているわけではない。「憲法改正など安倍政権が右傾化することも懸念要因だが、強気相場の中では、そうした懸念は後回しとなっている。バブルの匂いもしてきているが、しばらく市場はリスクオン(市場の活況に応じてリスクはあるが、その分収益の高い株や債券に投資する状況)の踊りを続けることになりそうだ」(三菱UFJMS証券の藤戸氏)という。〉――

 要するに自民党に投票することは株を大量に持っている富裕層にとっては資産効果を活性化させてリッチな生活を提供してくれるが、一般生活者が自民党に投票することは自分で自分の首を絞めることになって生活を圧迫することになり、これまでのアベノミクス2年間をこの先も続けることになる確率が高いということである。

 別の言い方をすると、富裕層にとって自民党圧勝は期待の対象となり得るが、一般生活者にとって期待の対象とはなりにくいということである。

 つまり歓迎と非歓迎の差が出てくる。

 だから最初に、〈問題はこの“歓迎”である。〉と書いた。

 勿論、断るまでもなく誰に投票するか、どの党に投票するかは本人の自由意志による。勝ち馬に乗るのも良し。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする