江渡聡徳の防衛相交代は本人からの再任辞退ではなく、安倍晋三が不測の事態発生を恐れて因果を含めた更迭

2014-12-27 08:12:39 | Weblog


 安倍晋三は総選挙に勝利し、第3次安倍内閣組閣に向けて当初はアベノミクス推進継続性重視のため、全閣僚再任の方針でいた。12月24日(2014年)の第3次安倍内閣発足の記者会見。

 安倍晋三「現在、7月に閣議決定した基本方針に基づき、来年の通常国会に向けて、(集団的自衛権行使を含めた)切れ目のない安全保障法制の準備を進めています。その担当大臣には経験豊かな江渡さんにお願いをしてまいりました。しかし、今回の組閣に先立ち、江渡大臣から、法案審議に遅滞をもたらすことのないようにと強い辞意があり、誠に残念ではありますが、その意思を尊重することといたしました」――

 政治資金規正法は選挙活動を除いて資金管理団体が候補者個人へ寄付することを禁じている。防衛相の江渡聡徳(あきのり)資金管理団体「聡友会」が2009年と2012年に行われた衆院選挙の期間外に4回に亘って計350万円を江渡氏個人に寄付していることが政治資金収支報告書への記載によって発覚した。

 江渡聡徳の釈明。

 江渡聡徳「350万円は寄付ではなく、聡友会の複数の職員に支払った人件費だった。私から職員らに人件費を交付する際、私名義の仮の領収書を作成していたため)担当者が(私への)寄付と混同した」――

 要するに資金管理団体「聡友会」から人件費を江渡聡徳が一旦受け取って、それを職員に渡したが、受け取る際自分名義の領収書を書いていたということになる。

 なぜ給与を江渡聡徳を経由しなければならなかったのか。給料を払っているのは俺だと恩を着せるためか。経由したとしたら、複数の職員が受け取った金額を合わせて350万円相当となる領収書が出てこなければならないことになる。

 自身は領収書を発行し、職員は発行しなかったでは辻褄が合わない。

 「聡友会」は2010年は「渉外費」、2011年、2012年と「寄付金」名目で毎年6月に靖国神社に各1万2000円、計3万6000円の支出までしていた。これらの靖国神社への支払いが果して政治活動の一環と言えるのか。

 さらに江渡聡徳が代表を務める「自民党青森県第2選挙区支部」へと同じ住所にある、政治資金規正法の対象となる「政治団体」の届け出がない任意団体「政経福祉懇話会」が2012年までの11年間で3285万円を寄付していることが判明した。

 政治資金規正法は任意団体を収支報告書作成と提出の義務付けの対象外としている。

 要するにカネの入りをいくらでも隠すことができるし、自身が直接使う場合、出も隠すことができる内緒の財布とすることができる。

 江渡聡徳は国会で追及されて、釈明、言い逃れ、弁解、様々に形容できるが、どのように言葉を尽くしても満足な説明をつけることができなかった。

 満足な説明をつけることができなかったとは、動いたカネを黒いカネに色づける一方だったことを意味する。

 こういった経緯から防衛省関係の法案審議が遅れるなど影響が出た。

 第3次安倍内閣で全閣僚再任ということになれば、江渡聡徳の一度も満足な説明をつけることができなかった「政治とカネ」の問題をそのままの状態で目の前に横たわらせることを意味するのだから、再び国会で追及されて、再び法案審議に遅滞が生じることは誰もが予測することであるし、安倍晋三も予測していたはずである。

 野党としても追及をスケジュールに入れていただろう。

 要するに予測と全閣僚再任は明らかに矛盾する。第1次安倍内閣では複数の閣僚が「政治とカネ」の問題で満足な説明をつけることができずに辞任に追い込まれ、一人は自殺という方法で満足な説明をつけることができなかったことの決着を付け、消えた年金問題も加わって安倍内閣は失速していき、ついには安倍晋三自身が辞任、内閣を投げ出すこととなった。

 この矛盾を矛盾でないことにするためには、江渡聡徳が再び満足な説明をつけることができずに防衛相辞任に追い込まれる展開と、追い込まれた場合は安倍晋三自身が再任までしたことの任命責任まで追及されることになる展開、更にそれらの展開が第1次安倍内閣の二の舞いへと発展するかもしれない万が一の事態等々を前以て覚悟して、火中の栗を拾うリスクを負う必要が生じる。

 このリスクはまた、折角手に入れることができる長期政権と言う甘い果実を失うリスクを道連れにしない保証はない。

 要するに再任の方針を打ち出す時点で様々なリスクを予想して、負う人事上の危機管理に立っていなければならなかった

 にも関わらず、安倍晋三の説明によると江渡聡徳本人から「法案審議に遅滞をもたらすことのないように」と辞意を表明し、安倍晋三は「その意思を尊重することとした」。

 だが、この展開は全閣僚再任の当初方針を貫いた場合は負うかもしれないと心構えしていなければならなかったリスクに対する安倍晋三の当然の覚悟、予測していたであろう人事上の危機管理から見た場合、あまりにも矛盾した呆気ない結末となる。

 逆に毒を喰らわば皿まで、とか、一蓮托生だと強く慰留して、再任に漕ぎつけてこそ、再任の方針を打ち出す時点で様々なリスクを予想し、そのリスクを負う覚悟でいなければならなかった危機管理と矛盾なく辻褄を合わせることができる結末となるはずである。

 全閣僚再任の当初方針と江渡聡徳の辞任というこの結末の違いを読み解くとしたら、辞意は江渡聡徳本人の意思ではなく、全閣僚再任は江渡本人からの辞意という形に持っていくための演出で、その実態は安倍晋三本人からの因果を含めた戦力外通告と見て、初めて整合性を得る。
 
 このことの証明は他にもある。12月24日の閣議後、江渡聡徳は防衛省で記者団に発言している。

 江渡聡徳「人事はあくまでも首相の専権事項だ。首相がこの後でご判断される形になるのではないか」(産経ニュース

 自身の方から再任を辞退したなら、それなりの覚悟を持っていただろうし、辞表も持参して提出していただろうから、いわば辞任の心構えでいただろうから、安倍晋三から「少し考えさせてくれ」と言われたとしても、首相の判断にかかっているといった言い方をして、結論を先の形にすることはないはずだし、そうすること自体、辞任の心構えに反しすることになる。

 安倍晋三の方から前以て因果を含められていた場合のみ、再任の期待を捨て切れずに結論を先の形にすることができる。

 だが、結果は更迭そのものであった。

 もう一つの証明。自らの資金管理団体の収支報告書への不明朗な記載や選挙区内でのカレンダー配布が問題となっていた御法川信英財務副大臣と外国人からの献金受領や女性への暴行で書類送検されたことが問題となっていた大塚高司国土交通兼内閣府政務官が再任を辞退したと「時事ドットコム」が12月25日の記事で伝えていたが、副大臣にしても国会で答弁を求められる。

 当然、「政治とカネ」の問題や、カネの使い途、女性スキャンダル等々についての追及を受けることになる。だが、役職から一掃してしまえば、後顧の憂いはなくなる。第1次安倍内閣の二の舞いの危険性を限りなくゼロに持って行くことができる。
 
 こうまでの徹底ぶりを見ると、国会に出席して答弁に立たなければならない立場にある三人もが「政治とカネ」の問題、その他で自分の方から辞任を申し出るという事態は偶然の一致にしては出来過ぎていることになる。

 作り出した一致でなければ、納得がいかない。本人からの辞意という形であるなら、何のためにこれまで国会で追及をかわしてきたのか、意味を失う。

 内閣改造を絶好のチャンスとして安倍晋三の任命責任に波及しない穏便な形で本人からの辞意を演出しつつ、因果を含めた更迭とすることで、全閣僚を全員再任と一旦は決めた方針にしても、その他にしても全ての納得がつく。

 これが政治資金収支報告書虚偽記載疑惑の望月義夫と、外国人献金疑惑及びSMバーへの交際費名国での支出に関わる疑惑の宮沢洋一まで含めて、合計5人までが一斉に自分から辞意を求めたとなると、それが演出であったとしても、事実であったとしても、どちらも大問題となる。確実に安倍晋三の任命責任に波及する。

 望月義夫の場合は会計責任者の妻が死亡していて、死人に口なしで逃げ切ることができると踏み、宮沢洋一の場合は経営者が外国人だと知らなかった、SMバーは本人の利用ではないとすることで逃げ切ることができると踏んだのだろう。

 閣僚の場合は更迭は一人が最善の限度であるはずだ。しかも本人からの辞退と装わせることができた。

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