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《12月15日 衆議院議員総選挙の結果を受けて 小沢一郎代表記者会見要旨》
『日本に本当の民主主義が定着するよう、全力を挙げたい』
【質疑要旨】
○選挙結果の受け止めついて
○野党結集について
○「次が最後」という声に対して
○選挙期間中の訴えについて
○当選16回について
○選挙結果の原因と、野党再編について
○岩手県選挙区、民主党とのすみ分けについて
○安倍政権について
○選挙前の2議員離党について
2014年12月15日、安倍晋三は自民党総裁として衆議院選の結果を受けて自民党本部で記者会見を行い、集団的自衛権行使容認と憲法改正について次のように発言している。文飾は当方。
安倍晋三「先ず安全保障法制についてですが、今回の選挙はアベノミクス解散でもありましたが、7月1日の閣議決定を踏まえた選挙でもありました。そのことも我々、しっかりと公約に明記しています。
また街頭演説においても、あるいは数多くのテレビの討論会でもその必要性、日本の国土、そして領空、領海を守っていく、国民の命と安全な国民の幸せな暮らしを守っていくための法整備の必要性、閣議決定をもとにした法整備の必要性ですね、集団的自衛権の一部容認を含めた閣議決定に基づく法整備、これを来年の通常国会で行っていく、これを訴えて来たわけです。このことにおいてもご支持をいただいた。当然、約束したことを実行していく。これは当然、政党、政権としての使命だと思う。来年の通常国会のしかるべき時に法案を提出していきたい。そして成立を果たしていきたいと考えています」――
安倍晋三「憲法改正については、これは自民党結党以来の一貫した主張です。ただし、国会において3分の2の議員を確保しなければならないと同時に、最も重要なことは国民投票において過半数の国民の支持を得なければならない。その観点から、国民的な理解と支持を深め、広げていくために、これから自由民主党総裁として努力をしていきたいと思っています」――
安倍晋三は集団的自衛権に関しては、今回の選挙は公約にも示していた集団的自衛権憲法解釈行使容認の7月1日閣議決定を踏まえた選挙でもあり、そのことは街頭演説やテレビ討論等で訴えてきたのであって、政権選択の支持を与えられたと言うことは集団的自衛権の行使についても支持をいただいたということだから、その法整備を行い、通常国会で法案を提出したいとしている。
憲法改正についても、自民党結党以来の一貫した主張であることを踏まえて、確保した3分の2の議席を背景に過半数の国民の支持を得る努力をしていくと、改正意志を明確に示している。
果たして今回の選挙で有権者は明確な意志で集団的自衛権の憲法解釈行使容認と憲法改正にまで支持を与えたのだろうか、与えたとしている安倍晋三が言っていることの正当性の有無が問題となる。
最初に、「今回の選挙はアベノミクス解散でもありましたが」と、アベノミクスを問う解散であり、そのことを主要争点とした選挙であったとしている。いわばアベノミクスの是非を旗印に高々と掲げた、あるいはアベノミクスの是非を前面に立てた選挙であった。
そういった選挙であったことは街頭演説を伝えるテレビニュース、あるいはテレビの政見放送が証明してくれる。
政見放送で登場した安倍晋三は次のように訴えている。
安倍晋三「安倍晋三です。日本は今、15年苦しんだデフレから脱却しようとしています。雇用は政権交代後、100万人増加し、賃金の上昇も過去15年で最高になっています。
このような経済成長のチャンスを手放すわけにはいかない。だからこそ、消費税増税の延期を決断しました。アベノミクスで雇用を増やし、所得を増やし、地方を元気に、国民生活を豊かにしていきます。
景気回復、この道しかない」
要するに選挙戦を通して安倍晋三以下自民党候補は、公明党も含めてだろう、国民の目の前にアベノミクスの是非を最も頻繁に差し出して、アベノミクスの効用を最重点に訴え、アベノミクスへの支持を求めた。
と言うことは、集団的自衛権についても、憲法改正にしても、自民党の公約とし、街頭演説やテレビ番組で発言はしているが、争点として高々と掲げて旗印としたわけでもなく、あるいは前面に立てたわけでもないと言っていることになる。
少なくも集団的自衛権も、憲法改正もアベノミクスの是非の背後に置いていた。アベノミクスの是非と並べて、アベノミクスの是非と同じ時間を掛け、その是非を争点としたわけではなかった。
当然、国民の側にしても目の前に最も頻繁に差し出されたことを受けて、アベノミクスの是非を最大の争点とした。安倍晋三がそうしたように国民も集団的自衛権と憲法改正をアベノミクスの是非の背後に置くことになった。
そもそもからして有権者の各政策に対する関心の度合いも手伝ったことは各種世論調査が証明している。NHKの11月28日~30日の世論調査。
「最も重視する6つの政策課題の中から一つ」
「景気対策」が31%、
「社会保障制度の見直し」が27%、
「財政再建」が12%、
「原発への対応」が9%、
「外交・安全保障」が7%、
「東日本大震災からの復興」が4%
アベノミクスが31%の最大関心事であり、集団的自衛権に関する「外交・安全保障」は7%の関心しか示していない。
興味深いのは投開票翌日の12月16日付の《衆院選:「白紙委任していない」自民に投票100人アンケ》(毎日jp/2014年12月16日 06時45分)なる記事である。
北海道から九州まで全国30市区の投票所で自民の候補や党に投票した有権者を対象に各政策への賛否を取材、男女114人が応じた。
政策と賛否
▽アベノミクス――約9割が賛成
▽憲法9条改正――5割超反対
▽集団的自衛権の行使容認――4割近く反対
▽原発再稼働−−――4割超反対
集団的的自衛権については6割近くが賛成しているが、アベノミクス程賛成しているわけではないし、憲法改正は反対が過半数を上回っている。アベノミクスの9割賛成はアベノミクスの是非を争点として前面に立てたことに対応した割合であろう。
もしアベノミクスを争点として最前面に立てずに、あるいは集団的自衛権と憲法改正を争点の位置づけとしてアベノミクスの背後に置かずに憲法改正と集団的自衛権を等しく並べて争点とした場合、各マスコミ世論調査の集団的自衛権に対する賛否が賛成が30%前後、反対が50%台半ばから60%近くとなっていることと、さらに内閣支持率が50%を切っていることを考え併せると、アベノミクスに対する約9割の賛成は約9割まで獲得できたかどうかは疑わしい。
アベノミクスの是非を第一番の争点としていた以上、アベノミクスの是非に対する賛成を減らす分、議席減につながることになる。議席を前回総選挙よりも大きく減らせば、例え自公で過半数を得たとしても、集団的自衛権や憲法改正まで信任を得たとすることは難しくなる。
つまり、安倍晋三はこれとは逆の経緯を狙って、アベノミクスの是非を第一番の争点とし、集団的自衛権と憲法改正を争点としてはアベノミクスの背後に置いた。
アベノミクスだけを見て、その背後に置いてある集団的自衛権と憲法改正を全然見ていなかった国民が多く存在していたのかもしれない。
安倍晋三の逆の狙いが見事に当たって、有権者は衆院で法案の再可決が可能となる3分の2の議席の317議席を超える326議席を自公与党に与えることになった。
このことを以って、安倍晋三は集団的自衛権についても憲法改正についても国民の支持を得たとしている。
実質的には有権者のアベノミクス支持の中に集団的自衛権と憲法改正の支持を潜り込ませているのだから、ここに巧妙・狡猾な仕掛けを見ないわけにはいかない。
有権者がアベノミクスの効果信じるに至ったのは安倍晋三の経団連に対する賃上げ要請であろう。要請が実現したとしても、賃上げだけで景気回復が可能になるとは考えてもいないだろうが、賃上げは取り敢えずは窮屈な消費に余裕を与える。
有権者にこのように思わせた安倍晋三が選挙戦で見せた巧妙・狡猾な仕掛けはアベノミクスの効果を賃上げ要請で釣って、集団的自衛権や憲法改正まで掴ませる悪質詐欺商法同然に見える。
安倍晋三は国民や野党がどう批判しようと、どう反対しようと、獲得した3分の2以上の議席を国民の信任とイコールさせて、それを力として様々な口実を設けて集団的自衛権行使と憲法改正に向けた歩みを進めていくに違いない。
国民の側から言うと、人間はパンのみにて生きる生きものではないが、賃金が保障するパンに飛びついたばっかりに、望んでいる有権者ならいざ知らず、望んでいない場合、望んでいない世の中まで掴まされる悪質詐欺商法の被害に遭ったことになる。
国民の納得がないままに自衛隊が海外まで出兵して戦争し、憲法が改正される世の中である。