安倍晋三の「攻めの農業」:15年度カロリーベースの食料自給率が証明するアベノミクス農業所得倍増の眉唾

2016-08-05 11:50:40 | Weblog
 

 8月2日(2016年)公表の「2016年度経済財政白書」は個人消費と企業の設備投資は力強さを欠き、政権が描く経済の好循環――アベノミクスによる好循環は十分に起きていないと指摘されていると8月2日付「asahi.com」記事が伝えている。

 円安と株高で企業収益は拡大しているものの、その企業収益を設備投資と従業員の賃金に十分回していない理由を「国内の需要の伸び悩みに加え、企業の成長予想が低い」ことに置いているとしている。

 要するにアベノミクスに先行きの期待が持てない状況にあることになる。

 いくら企業が収益を拡大しようと、賃金の上昇がそこそこでは個人消費が伸びるわけがなく、当然、その伸び悩みは「国内の需要の伸び悩み」となって現れる。

 アベノミクスは好循環どころか悪循環に陥っている。

 にも関わらず安倍晋三は参院選挙自民党大勝の結果を受けた7月11日の記者会見で、「『アベノミクスを一層加速せよ!』と、国民の皆様から、力強い信任を頂いたことに、心から御礼を申し上げます」などとノー天気なことを言っている。

 悪循環に陥っている「アベノミクスを一層加速」してどうするのだろう。

 アベノミクスのこの悪循環は農政にも現れていることを伝えている記事がある。「日本の食料自給率、6年連続39%」asahi.com/2016年8月2日13時32分)  

 農水相が8月2日、国内で消費する食料をどの程度国内生産で賄えるかを示す指標である2015年度の食料自給率(カロリーベース)は6年連続で39%だったと発表。

 この横這いの推移は自給率が100%に近いコメの消費量が減っているのに対して海外依存度の高い国外産の油脂類の消費量が増えていることが自給率を下げているものの、国内産小麦などが豊作で生産量が増えたことで全体の減少を補う形を取っているからだそうだ。

 その一方で、国内の田畑を有効活用した場合にどれくらいの食料が作れるのかを示す食料自給力は、農地面積の減少や面積あたり収穫量の伸び悩みで低下傾向が続いたためここ5年間で4~8%程度減少したと伝えている。

 安倍晋三は「攻めの農政」を掲げている。

 2013年5月17日の安倍晋三の「成長戦略第2弾スピーチ」で、「攻めの農林水産業」と題して次のように発言している。
  
 安倍晋三「この20年間で、農業生産額が、14兆円から10兆円へ減少する中で、生産農業所得は、6兆円から3兆円へと半減しました。

 基幹的農業従事者の平均年齢は、現在、66歳です。20年間で、10歳ほど上がりました。これは、若者たちが、新たに農業に従事しなくなったことを意味します。

 耕作放棄地は、この20年間で2倍に増えました。今や、滋賀県全体と同じ規模になっています。

   ・・・・・・・・・
 池田総理のもとで策定された、かつての所得倍増計画も、10年計画でありましたが、私は、今後10年間で、六次産業化を進める中で、農業・農村全体の所得を倍増させる戦略を策定し、実行に移してまいります」――

 2016年1月22日の安晋三施政方針演説 

 「農政新時代」と題して発言している。

 安倍晋三「意欲ある担い手への農地集約を加速します。農地集積バンクに貸し付けられた農地への固定資産税を半減する一方、耕作放棄地への課税を強化します。大規模化、大区画化を進め、国際競争力を強化してまいります。

 『攻めの農政』の下、四十代以下の新規就農者が年間2万人を超え、この8年間で最も多くなりました。

 『きつい仕事だが、やりがいがあります』

 和歌山で出会った若手林業者の言葉です。緑の雇用事業で家族と共にIターンして11年、地域の林業を支える人材となりました。

 若者が将来に夢や希望を持てる農業へと改革する。『農政新時代』を、皆さん、共に切り拓いていこうではありませんか」――

 2013年7月参院選挙約2カ月前の5月17日の安倍晋三の「成長戦略第2弾スピーチ」では「基幹的農業従事者の平均年齢は、現在、66歳です。20年間で、10歳ほど上がりました」と言い、2016年1月22日の「安晋三施政方針演説」では、「『攻めの農政』の下、四十代以下の新規就農者が年間2万人を超え、この8年間で最も多くなりました」と農業政策がさも成功しているかのように言っている。

 だが、「農業労働力に関する統計(農水省)によると、2013年の基幹的農業従事者は174万2千人。うち 65歳以上が106万7千人、平均年齢が66.5歳と前年よりも悪くなり、更に翌年2014年も更に悪くなり、2015年になって基幹的農業従事者が2013年の174万2千人から175万4千人と1万2千人増加しているが、平均年齢で2013年の66.5歳から、2014年66.8歳、2015年67.0歳と僅かづつ高齢化している。   

 勿論この原因は65歳以上の基幹的農業従事者が増加していることからの高齢化だが、2013年106万7千人に対して2014年105万6千人と一旦は減っているが、2015年になって113万2千人と一気に増えている。

 但し2016年の65歳以上の概数値は103万1千人と2015年と比較して10万人程度減っているが、なぜか理由は分からないが、基幹的農業従事者自体が2015年の175万4千人から2016年概数値158万6千人と16万8千人減少していることを受けた平均年齢の若年化であって、農業従事者自体の若返りではないはずだ。

 新規就農者にしても2014年57万7千人は2013年比で+6万9千人となっているが、2012年の56万5千人と比較すると、1万2千人の増加、2011年の58万1千人と比較すると、4千人減っている。

 どうも一貫して増加傾向を辿ってはいないようだ。

 2013年5月17日に「池田総理のもとで策定された、かつての所得倍増計画も、10年計画でありましたが、私は、今後10年間で、六次産業化を進める中で、農業・農村全体の所得を倍増させる戦略を策定し、実行に移してまいります」と公約してから3年、「今後10年間」の約3分の1が経過しているから、0.6倍程度は所得が増えていていいはずだが、また、「農業生産額が、14兆円から10兆円へ減少する中で、生産農業所得は、6兆円から3兆円へと半減しました」と言っているから、農業生産額の推移から、生産農業所得を推計してみる。

 平成25年の「農林省」のサイトに、〈2013年の農業総産出額は8兆4,668 億円で、前年に比べ0.7%減少した。これは、野菜、果実及び畜産の各部門で産出額が増加したものの、米の産出額が減少したことによる。〉  

 平成26年の同じく「農林省」のサイトに、〈2014年の農業総産出額は8 兆3,639 億円で、前年に比べ1.2%減少した。これは、肉用牛、豚等の各畜産部門で産出額が増加したものの、米の産出額が減少したことによる。〉と出ている。


 2013年、2014年と農業総産出額が減少していれば、0.6倍程度は所得が増えているどころか、平均して所得も伸びていないことの証明でしかない。

 だからこその、2015年度の食料自給率(カロリーベース)は6年連続で39%、増減ゼロの状況にあるということであろう。国内農業生産が活発化すれば、食料自給率も伸びる。所得も伸びる。

 いわば全体的には安倍晋三の気前の良い発言程の状況にはなっていない。

 農業所得倍増を公約してから3年が経過しても国内農業生産活動が深く関係する食料自給率がこの程度なのだから、安倍晋三のアベノミクス農業所得倍増は眉唾程度に聞いていた方が無難だ。

コメント (1)
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