安倍晋三は中国を「法の支配」に危険なヒール役への仕立てに成功したが、退治できずにその跋扈を許している

2016-08-20 10:03:43 | Weblog

 民主党政権から第2次安倍政権が発足したのは2012年12月26日。翌年2013年3月7日の衆議院予算委員会。 

 安倍晋三「尖閣諸島周辺海域において中国公船による領海侵入が繰り返されている等、我が国を取り巻く情勢は厳しさを増しています。

 このため、海上保安庁において、大型巡視船の新規建造や海上保安官の大幅な増員などにより専従の警備体制を確立し、その体制を強化するとともに、自衛隊の艦艇、航空機等を用いた警戒監視と適切に連携するなどして、その警戒警備に、現在、万全を期しているところであります。

 そして前政権のこととはいえ、我が方の手のうちにかかわることでございますので、詳細について申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますが、あえて一言申し上げさせていただければ、前政権下においては、過度に軋轢を恐れる余り、我が国の領土、領海、領空を侵す行為に対し当然行うべき警戒警備についても、その手法に極度の縛りがかけられていたというふうに私は承知をしております。

 このことは、相手方に対して誤ったメッセージを送ることにもなり、かえって不測の事態を招く結果になることすらある、私はそう判断をしたわけでございまして、安倍内閣を発足させた直後から、この危機的な状況を突破するために、前政権の方針を根本から見直しを行いました。そして、冷静かつ毅然とした対応を行う方針を示したところでございます」――

 安倍政権になった以上、中国に対して誤ったメッセージを送ることになった前政権の軟弱な対応を改めて、冷静かつ毅然とした対応を以てして領海侵入を許さないとばかりに大見得を切ったものの、政権交代前後の時期に一頃は月20隻を超えていた領海侵入隻数は2013年10月以降は半分程度に減ってはいるが、それでも月10隻程度で推移していて、領海侵入を止めたという状況とはならなかった。

 そこで安倍晋三は中国公船の日本の接続水域の航行、あるいは領海侵入を「力による現状変更の試み」だと批判、何らかの問題で緊張関係にない友好国、あるいは友好国といえる外国を訪れて、「法の支配」を訴えて回った。

 安倍晋三は2013年7月25日から3日間の日程でマレーシア、シンガポール、フィリピンの東南アジア3カ国を訪問しているが、7月25日、出発に先立って、羽田空港で記者たちに訪問の抱負を語っている。

 安倍晋三「成長著しいASEAN・東南アジア諸国連合の活力を、日本の経済再生に取り込んでいきたい。自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった普遍的価値を共有する国々との連携を強化をしたい」

 2015年6月にドイツ・エルマウでG7サミット=先進7か国首脳会議が開かれた。日本時間の6月7日夜、最初のセッションで世界経済や成長などをテーマに意見を交わしたという。

 安倍晋三「G7は、自由、民主主義、法の支配といった基本的価値に立脚して国際社会の秩序を支えてきたが、世界には、力による現状変更、暴力的な過激主義の脅威など、安全保障上の脅威が存在する。われわれには基本的な価値を守り、子孫にしっかりと引き渡していく責任がある」

 Ḡ7各国首脳とそれぞれ個別首脳会談を行い、「自由、民主主義、法の支配といった基本的価値」の重要性を訴え、「力による現状変更の試み」の存在を批判した。

 安倍晋三はこのような外交を「価値観外交」と名づけ、「積極的平和主義外交」と名づけた。第2次安倍政権となってから、このようにまわりまわった訪問国及び地域が63、延べ訪問国・地域が94だそうだ。

 2014年11月9日から17日まで中国・北京行われたAPEC首脳会議出席のために一度中国を訪問し、習近平と首脳会談を行っている。

 この会談そのものにしてもそうだが、安倍晋三のこのような外交が中国公船の尖閣沖周辺の日本領海への侵入の抑制に役立っているわけではない。

 こういった状況に関して2013年7月28日の当ブログに、〈要するに中国以外の各国を回って価値観外交を訴えている安倍対中外交は一人の主婦が自分の価値観を押し通そうとして思い通りにならない近所の主婦に対する面白くない感情を晴らすために近所の別の主婦たちのところに回って、自分の価値観こそが正しい、相手の価値観は間違っていると訴えて同意を得て満足しているような外交に過ぎない。

 いくら周囲の同意を得ても、肝心な相手との価値感の違いは解消できるわけではない。〉と書いた。  

 要するに安倍晋三は中国の日本領海侵入を「力による現状変更の試み」だと世界各国を回っては首脳会談で訴えたことで中国を「力による現状変更の試み」のヒール役に仕立てることに成功はした。

 だが、プロレスで言うと、ヒール役のレスラーは正義役のレスラーに最後には退治される。ヒール役の暴虐はいつまでも許されることはない。

 暴虐は息の根を止められ、最後はギブアップ――全面降伏する。

 安倍晋三の場合はそのようには順調な展開を見せていない。ヒール役を許し続けている。

 結局のところ、安倍晋三の「自由、民主主義、法の支配といった基本的価値」を訴える価値観外交や積極平和主義外交が成功しているのは対中国でも対北朝鮮でもなく、その多くが元々「自由、民主主義、法の支配といった基本的価値」を信奉、そのような価値観に基づいて国家を運営し、国民も社会活動している、改めて訴えることもない国々だということである。

 現在、安倍晋三の自民党総裁任期延長問題が自民党内で議論されていると、今朝(8月20日)のNHKニュースで報じていた。

 道路族のドンであった自民党幹事長の二階俊博が「安倍総理大臣は内政・外交ともに多くの実績を挙げている」ことを理由に党総裁としての任期の延長を検討する協議機関を党内に設けて、年内をメドに結論を得たい考えを示していると伝えていたが、個人消費は伸びずに低迷したままで格差拡大の歯止めがかからない内政とただ単に訪問外国数の多さと首脳会談開催数の多さだけで終わっている外交を以てして安倍晋三の内政・外交の「実績」としているのだから、余程お目出度い自民党に仕上がっているようだ。

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