安倍晋三には尖閣諸島は日本の領土と中国側に認めさせることが毅然とした態度と言うことではないらしい

2016-08-09 06:11:26 | 政治
 
 
 中国海警局の船1隻が8月5日午後0時15分頃、尖閣諸島魚釣島沖合で中国の国旗を掲げた漁船6隻と共に一時日本の領海に侵入したのに始まって翌8月6日には中国海警局の船7隻と中国漁船約300隻が沖縄県の尖閣諸島周辺の接続水域に大挙押しかけてきて航行、さらに翌8月7日、中国当局の船13隻が、と言うべきか、13隻もと言うべきか、尖閣諸島沖合の日本の領海に侵入。

 外務省の再三の抗議にも関わらず日本の領海内の自由航行を改める気配はない。

 と言うよりも、日本の外務省の抗議など蚊に刺された程にも受け止めていないのだろう。

 ここに来ていきなり漁船まで引き連れて大挙押しかけてきた理由をマスコミはフィリピン政府の国連海洋法条約に基づいた中国相手の2013年1月の訴えに対してオランダ・ハーグの仲裁裁判所が7月12日、南シナ海に対する境界線「九段線」に基づいた、と言うよりも中国が地図上に勝手に線を引いた中国の領有権主張や人工島の建設等を国際法に違反するとした判断を日本が中国に対して履行することを求めていることに対する反発だとか、中国の強引な海洋進出に批判を強める日本に対する牽制だとか報じているが、要は日本が「尖閣諸島は歴史的にも国際法上の日本の固有の領土で、尖閣諸島に関しては領土問題は存在しない」としているのに対して中国はそれを無視、「釣魚島(尖閣諸島の中国名)は中国固有の領土」と主張し、自身の領海として航行しているのだから、決着がつくはずはない。

 領海侵入した中国公船に対して日本の海上保安庁の巡視船が、「ここは日本の領海だから、直ちに領海外に立ち去るように」とマイクで警告を発すると、「ここは中国の領海であって、巡視船は直ちに領海外に立ち去るように」と応じる堂々巡りである。
 
 確かに日中関係の緊迫度に応じて中国公船の接続水域航行や領海侵入の頻度・隻数に違いが生じることもあるだろうが、中国が尖閣諸島を自国領土としている以上、例え日中関係がどれ程に良好な関係にあろうとも、中国領土であることを知らしめるデモンストレーションのために接続水域航行と領海侵入はなくなることはあるまい。

 つまり、日本が「尖閣諸島は歴史的にも国際法上の日本の固有の領土で、尖閣諸島に関しては領土問題は存在しない」の主張をいくら繰返しても中国公船の接続水域航行も領海侵入もなくならない。現在の状況を引きずることになる。

 それを止めるためには尖閣諸島は日本の領土なのだと中国側に認めさせる以外に手はない。アメリカ政府にしても尖閣諸島に対する日本の施政権は認め、日米安全保障条約第5条は日本の施政下にある領域に適用されるとの見解を示しているものの、尖閣諸島の領有権について最終的に判断する立場にないとしている。

 つまり日本のものとも中国のものとも判断していない。

 アメリカのこのような態度も、中国の領有権主張を結果的に後押ししている側面もあるに違いない。

 日本側がいずれに領有権はあるのか決着をつける気もなく、領土問題は存在しないという態度を取り続けるなら、日本側の抗議と、中国側の抗議を無視した、自国の接続水域内の航行であり、自国領海内の航行だとする、日本側にとっての領海侵入の始末の悪い繰返しがこれからも続いていくことを尖閣周辺に於ける光景としなければならない。

 実際にも2012年9月の尖閣諸島国有化以降、この手のことを光景としてきている。

 ここに来ての尖閣周辺に於ける中国公船や中国漁船の大挙押し寄せの事態に安倍晋三が〈8月8日までに関係省庁に対し、連携して国際法及び国内法令に則り、冷静かつ毅然とした対応することやアメリカを始めとする関係諸国と緊密に連携すること、さらに、国民や国際社会に的確な情報提供を行うよう指示した。〉と「NHK NEWS WEB」が伝えていた。

 領海侵入した中国公船を逮捕するか、尖閣諸島は日本の領土なのだと中国側に認めさせる外交を推し進めることこそが日本の毅然とした態度だと思うのだが、そのようなことはしない安倍晋三の「冷静かつ毅然とした対応」とはどのような日本の態度を言うのだろうか。

 日本の巡視船が領海侵入した中国公船から「ここは中国の領海だから直ちに領海外に出るように」という返事が返ってくるのを承知で「日本の領海だから、直ちに領海外に立ち去るように」とマイクで警告を発することが「冷静かつ毅然とした対応」だと言うなら、あるいは無視されることが常態化したそれ故に一種の儀式めくことになる在日中国大使館の大使に抗議をしたり、それとも同様の抗議を直接中国外務省に入れることが「冷静かつ毅然とした対応」だと言うなら、堂々巡りを続けていればいい。

 安倍晋三は第2次安倍政権となってからの2013年3月7日の衆議院予算委員会でも中国の尖閣周辺の行動に関して前民主党政権とは異なって毅然とした態度で対応すると答弁していた。文飾は当方

 萩生田光一「私は、新聞ですとか週刊誌の記事をもとに質疑をすることは本意ではないんですが、また、今さら民主党政権下の非をあげつらうつもりは全くございませんけれども、事安全保障の問題ですので、あえて触れておきたいと思います。

 一昨日、産経新聞の一面に驚くべき記事が載りました。
 
 昨年9月の尖閣諸島の国有化後、挑発を繰り返す中国海軍の艦船に、一つ目、海自は15海里、約28キロの距離を置いて近づかないようにというふうに求められた。

 二つ目、他国軍の艦船の領海侵犯に備えるためには先回りして領海内で待ち構えるのが常套手段なんですが、それも自制をせよ、こう言われた。

 そして三つ目、海洋監視船はヘリを搭載可能で、ヘリが飛び立てば即領空侵犯になるので空自のスクランブルの必要性がある、こういう議論をしていたんだけれども、当時の岡田副総理は、軽微な領海侵犯だから中国を刺激するな、海上保安庁に任せればいいと準備を認めなかったという記述であります。

 先日、レーダー照射の事案で、民主党の委員は、政府の対応を遅いと断じ、中国海軍の解説までしていただき、問題意識をもっと高く持つようにと促しておりましたけれども、もしこの記事が事実とすれば、民主党政権時代の間違ったメッセージがもたらした当然の結果と言えます。

 政府は、本件について事実を確認しているのでしょうか。また、安倍内閣にかわり、これらの対応は具体的にどのように変わったのか。お尋ねいたします」

 安倍晋三「尖閣諸島周辺海域において中国公船による領海侵入が繰り返されている等、我が国を取り巻く情勢は厳しさを増しています。

 このため、海上保安庁において、大型巡視船の新規建造や海上保安官の大幅な増員などにより専従の警備体制を確立し、その体制を強化するとともに、自衛隊の艦艇、航空機等を用いた警戒監視と適切に連携するなどして、その警戒警備に、現在、万全を期しているところであります。

 そして、今委員が御指摘になられたこの警戒警備の状況については、前政権のこととはいえ、我が方の手のうちにかかわることでございますので、詳細について申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますが、あえて一言申し上げさせていただければ、前政権下においては、過度に軋轢を恐れる余り、我が国の領土、領海、領空を侵す行為に対し当然行うべき警戒警備についても、その手法に極度の縛りがかけられていたというふうに私は承知をしております。

 このことは、相手方に対して誤ったメッセージを送ることにもなり、かえって不測の事態を招く結果になることすらある、私はそう判断をしたわけでございまして、安倍内閣を発足させた直後から、この危機的な状況を突破するために、前政権の方針を根本から見直しを行いました。そして、冷静かつ毅然とした対応を行う方針を示したところでございます。


 今後とも、我が国の領土、領海、領空を断固として守り抜くという決意のもとに、引き続きしっかりと警備、警戒を行っていく考えであります」――

 安倍晋三が民主党政権のように「極度の縛りがかけられていた」のとは異なる「冷静かつ毅然とした対応を行う方針を示した」その成果が尖閣周辺における中国の今日の状況ということなのだろう。

 どうも一般人の「冷静かつ毅然とした対応」と安倍晋三の「冷静かつ毅然とした対応」とは産地も種類も味も違うらしい。

 一つ分かっていることは、日中関係の緊迫度に応じたその時々で中国公船の接続水域航行や領海侵入の頻度・隻数に違いが生じることはあっても、原風景となった尖閣周辺に於ける中国の行動は安倍晋三の「冷静かつ毅然とした対応」の成果として延々と続くだろうということである。

 中国に対する尖閣問題ばかりか、ロシアに対する北方領土問題、北朝鮮に対する拉致問題、難しい外交問題は何一つ前へ進んでいない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする