安倍晋三の都合の悪いデータ無視の目くらましを国民に投げつけた、狡猾なご都合主義の働き方改革法案

2018-03-01 12:20:57 | 政治

安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定


「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 2018年2月26日衆院予算委。希望の党代表玉木雄一郎が現状で調査データに300件以上も不備が見つかった厚生労働省労働基準局の「平成25年度労働時間等総合実態調査結果」に基づいた「働き方改革関連法案」は撤回すべきだと求めた。

 安倍晋三 「これはまさに働く方々の目線に立っているわけであります。(ヤジ)自由な働き方を、自由な働き方をしたいという方が、おられるのは事実でありまして、裁量労働制につきましてはですね、これはまさに専門業務型の裁量労働制とですね、企画業務型の裁量労働制があって、我々が今回拡大するのは企画業務型でありますが、その中で先程申し上げましたように『やや満足』を合わせて8割の方々が満足しているという事実。

 もう一つはですね、仕事が効率的に進められるので、労働時間を短くできるかということについても、これは回答を得ているのでございますが、『概ね期待通り』の方と、『一部期待通り』、それぞれ30%ずつおられて、『一部期待通り』を合わせれば、約6割の方々。

 しかし一方でですね、『あまり期待通りになっていない』の方々が、38%となっているのは事実でございます。だからこそ、先程申し上げましたように、先ほど申し上げましたようにですね、健康確保措置も採ることにしているところございますし、と同時に、ちょっと、場外の方がうるさいので注意して頂けますか、答弁しにくいものですから。

 いわばこうした自由な働き方を選択している裁量労働制企画業務型の裁量労働制の中で8割を満足している方々の中には今申し上げたような方々がおられるのは事実でございますし、そういう要請もあります。

 そういう要請に応えていくことも大切だろうと。ま、しかし、今、そういう要請がないと言う方が(ヤジ)、そういう要請があるのは厳然たる事実でございまして、その上に於いて我々はそうではない方々がおられるということもしっかりと認識されながら、健康を確保、あるいはみなし労働時間とですね、実労働時間の乖離に対してはしっかりと対応してということにしている。

 それがこの法案でございますので、同時にですね、データにつきましてはしっかりと精査をしながら、今厚労大臣の下で準備を進めている、という方針で、ございます」

 安倍晋三がここで提示したデータは、「先程申し上げました通りですね、先ほど申し上げました通り、JILPTの、いわば、えー、これは、データにおきましてもですね、8割方の、約8割弱の方々が、やや満足も合わせれば、満足となっており、そして、仕事を効率的に進められるので、労働時間を短くできるかどうかについても、概ね期待通りと一部期待通りの方々はですね、えーえー、約、それぞれ3割おられて、6割となっている、と言うことでございます。そのことはですね、えーあのー、ご説明をさして頂きたい、と思う次第でございます」と同じ繰返しの答弁をしているようにJILPT、正式名「労働政策研究・研修機構」の「裁量労働制等の労働時間制度に関する調査結果 労働者調査結果」(平成26年6月30日)からの引用である。

 厚生労働省は2017年9月8日「働き方改革推進法」(正式名「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」)の法案要綱を厚労相の諮問機関である労働政策審議会(略称「労政審」)に諮問した。

 しかしこの諮問にはカラクリがあった。諮問に於ける議論の参考資料として調査データに300件以上も不備が見つかった厚生労働省労働基準局調査の「労働時間等総合実態調査」を提出しながら、厚労省独立行政法人労働政策研究・研修機構(略称「JILPT」)に対して調査依頼し、JILPTが2013年11月中旬~12月中旬の期間で纏めた上記「裁量労働制等の労働時間制度に関する調査結果 労働者調査結果」は提出しなかった。

 要するにJILPT調査のデータは労政審の諮問に使われることはなかった。にも関わらず、安倍晋三は労政審が妥当と諮問した企画業務型裁量労働制の適用業種の範囲拡大の正当性の訴えにJILPTのデータを使う。

 この狡猾なご都合主義は恥知らずなまでの図々しさである。

 安倍晋三が挙げたデータをここに纏めてみる。

 企画業務型裁量労働制の満足度

 「満足」+「やや満足」80%
 「概ね期待通り」30%
 「一部期待通り」30%
 「あまり期待通りになっていない」38%

 肯定派が圧倒的多数を占めているのだから、企画業務型裁量労働制の適用業種拡大を推進してどこが悪いということなのだろう。

 「厚生労働省の調査によれば裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べれば一般労働者よりも短いというデータもある」と安倍晋三に国会答弁させた事実と異なる統計を含めて不合理な質問を用いた不備が300件以上もある厚労省の調査を用いて企画業務型裁量労働制適用業種拡大を正当づけるのではなく、厚労省が労政審に諮問材料として提出しなかったJILPTのデータを使って正当づけようとする狡猾さからすると、JILPTのデータを使った玉木雄一郎に対する上記国会答弁にしても、どこまで正確な読みをしているのか、分かったものではない。

 安倍晋三が正確な読みをしているかどうかを見るために関連するデータを上記調査から引用してみることにし、それぞれ画像を添付することにした。少々見づらいがご勘弁を

 「企画業務型裁量制の満足度」

 「満足」36.4%+「やや満足」41.5%=77.9%
 「やや不満」15.5%+「不満」4.6%=20.1%

 安倍晋三は「『やや満足』を合わせて8割の方々が満足しているという事実」と答弁しているから、ほぼ間違いはないとすることができる。

 では、「企画業務型裁量制」に対する「仕事を効率的に進められるので労働時間を短くできる」の質問について見てみる。 

 「概ね期待通り」31.6%
 「一部期待通り」29.3%
 「期待どおりになっていない」38.3%

 安倍晋三が「もう一つはですね、仕事が効率的に進められるので、労働時間を短くできるかということについても、これは回答を得ているのでございますが、『概ね期待通り』の方と、『一部期待通り』、それぞれ30%ずつおられて、『一部期待通り』を合わせれば、約6割の方々。

 しかし一方でですね、『あまり期待通りになっていない』の方々が、38%となっているのは事実でございます」と言っていることにしても、このことだけを見れば、ほぼ間違っていない、正しいと言うことができるだろう。

 だが、どの項目に対する期待値への質問と回答にしても、「概ね期待通り」、「一部期待通り」となっていて、“十分期待通り”という期待値への質問と回答は存在していない。「概ね」という言葉は「大体」という意味であって、どちらかと言うと、前者の期待値と後者の期待値はより近接した関係にある。

 この質問形式を見ただけで、当たり前の期待に対して裏切られている部分の存在を見て取ることができる。

 例えば「企画業務型裁量制」に関わる「自分の能力の有効発揮に役立つ」は「概ね期待通り」は41.2%で半数近くを占めているが、「一部期待通り」は34.9%で、“十分期待通り”という期待値がない状況で双方の差が6.3%しかないのは、「自分の能力の有効発揮に役立つ」裁量労働制になっていると十分に言うことができるだろうか。

 この根拠は「あまり期待通りとなっていない」の21.5%、4分の1近くもあることを付け加えると、更に強まる。

 このことは同じ質問の「専門業務型裁量制」を見れば理解できる。

 「概ね期待通り」37.8%
 「一部期待通り」39.7%
 「あまり期待通りとなっていない」22.1% 

 「概ね期待通り」と「一部期待通り」が差は僅かでも、逆転していて、「あまり期待通りとなっていない」22.1%は、これも僅かにではあるが、更に4分の1に迫っている。

 いわば“十分期待通り”という状況からは程遠い。このことは第1位に位置づけたどの回答でも半数の50%をいずれも超えていないところにも現れている。

 一つも50%を超えていないデータを以って素晴らしい制度だ、拡大は当然だとすることはできるだろうか。

 「企画業務型裁量制」に関わる「仕事の裁量が与えられるので、仕事がやりやすくなる」

 「概ね期待通り」45.1%
 「一部期待通り」34.8%
 「あまり期待通りとなっていない」17.4% 

 第1位に位置づけた「概ね期待通り」はやはり50%を超える期待を集めることができていない。どの調査も「厚労省抽出分」と記載されているから、調査の基は厚労省が出したデータであって、“十分期待通り”の質問を設けたが、いずれも低い数値しか出てこなかったから、その質問は抹消して、「概ね期待通り」の質問に加えたデータをJILPTに渡したということはないと思うが、それくらいのことはするだろうが、“十分期待通り”ではない「概ね期待通り」が50%を切っているということは、安倍晋三が答弁している「『やや満足』を合わせて8割の方々が満足しているという事実」にしても、「満足」36.4%+「やや満足」41.5%=77.9%を切り離して、「満足」は50%を13.6%も切って40%も満たない36.4%に過ぎない、「やや満足」にしても「満足」の36.4%を5.1%も上回る41.5%に達していると見るべきだろう。

 「企画業務型裁量制」に関わる「能力や仕事の成果に応じた処遇が期待できる」に至っては――、

 「概ね期待通り」31.5%
 「一部期待通り」41.1%
 「あまり期待通りとなっていない」26.6% 

 「概ね期待通り」と「一部期待通り」、いずれも50%を割って、さらに「一部期待通り」が10%近くも上回っている。さらに「あまり期待通りとなっていない」26.6%は4分の1を僅かながら超えている。

 「企画業務型裁量制」に関わる「仕事と生活のバランスを保ちやすくなる」

 「概ね期待通り」34.0%
 「一部期待通り」32.9%
 「あまり期待通りとなっていない」31.7% 

 「仕事と生活のバランスを保ちやすくなる」の「概ね期待通り」と「一部期待通り」の回答がどれも30%台前半で近接していて、40%を超えていないばかりか、「あまり期待通りとなっていない」が同じく近接した数値で31.7%と30%を僅かに超えている。いわばほぼ3分の1ずつ占めている。

 これを以って「企画業務型裁量制」が、「専門業務型裁量制」にしても似たり寄ったりだが、「仕事と生活のバランス」の保持を十分に可能としている裁量労働制だと断言できるだろうか。

 このことは次の画像で見ることのできる調査が十分に証明する。 
 「企画業務型」では「与えられている業務の裁量牲が小さい」(14.0%)と「上司の指示か具体的であり、裁量性が小さい」(3.0%)、「担当以外の業務が命じられる」13.2%、「業務の権限の設定が不適切」(6.8%)等々、いずれも任せて貰うことができる裁量範囲が狭い、あるいは裁量権が不安定と見る回答が合計で37.0%も存在するということはかなりの利用者が裁量労働制の欠陥部分を指摘していると見なければならない。

 「労働時間〔在社時間〕か長い」(45.1%)にしても、仕事が早く終えれば早く帰ることができるという自由な裁量権の行使が阻害されて、逆に拘束を受ける不自由さの指摘に当たる。

 にも関わらず、「仕事の裁量が与えられるので、仕事がやりやすくなる」の質問に対しては「概ね期待通り」45.1%、「一部期待通り」34.8%という数字は矛盾することになるが、どこかにカラクリがあるなどということはないだろうか。

 さらに、「業務量が過大」(40.0%)、「みなし時間の設定か不適切」(25.5%)、「みなし時間で評価され適切な評価を受けていない」(11.5%)
「休日・休暇を確保しにくい」(19.6%)、「人事評価が不透明」(27.2%)、「給与か低い」(31.1%)は「専門業務型」であっても、「企画業務型」であっても、裁量労働制が期待通りではないことの示唆であろう。

 このように現実に不備・欠陥の指摘が多々存在しながら、「働く方々の目線に立っている」、「『やや満足』を合わせて8割の方々が満足しているという事実」と、自らの裁量労働制の見直しを自ら高く評価している。

 要するに安倍晋三は自分に都合のいいデータだけを掴み取り、都合の悪いデータは無視する狡猾なまでのご都合主義を発揮、働き方改革法案を正当化するための目くらましを国民に投げつけているに過ぎない。

 安倍晋三は今朝(3月1日)になって法案から裁量労働制の適用業務の拡大を全面的に削除するよう指示したとマスコミは伝えているが、あれ程正当性を訴えていた裁量労働制適用業務拡大である。

 データの使い方にゴマカシがなかったか、野党は追及しなければならない。

コメント
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