安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定 「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を 直接示すような記述も見当たらなかった」とする “政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき |
2018年3月1日、安倍晋三が首相官邸で会見して「働き方改革関連法案」から「企画型裁量労働制対象業務の拡充」の全面削除を言明した。
「記者会見」 安倍晋三「来年度予算の早期成立こそが最大の景気対策であると、こう申し上げてまいりました。明日からいよいよ参議院の審議が始まります。一日も早い成立を期してしっかりと取り組んでいきたいと考えております。 そしてまた、働き方改革を進めていくことによって柔軟な働き方を可能とする。そして、そのことによって介護あるいは子育てといった事情を抱える皆さんが生き甲斐を持って、そして、遣り甲斐を持って働くことができる。そういう日本にしていきたい。そのための改革をこの国会で行いたいと、こう考えております。 その中におきまして、裁量労働制度に係るデータについて国民の皆様が疑念を抱く、そういう結果になっております。そこで、今回提出する働き方改革法案の中において、裁量労働制については全面削除するように指示いたしました。 厚生労働省において実態を把握した上において、議論をし直すようにすることとした次第であります。一方、働き方改革は極めて重要であります。今回の働き方改革におきまして、提出する法案におきましては、まず働き過ぎ、長時間労働のこの慣行を断ち切るために、長時間労働について時間外労働の罰則付きの上限規制を行う。そしてまた、非正規、正規の格差を埋めるための同一賃金同一労働の導入。そしてまた、高度プロフェッショナル制度。この3つについては提出していきたい。裁量労働制に関わる部分以外のこの3つの柱については提出していきたいと、こう考えております。 この国会において、しっかりと働き方改革関連法案を成立させたいと思います。アベノミクスの最大のチャレンジである働き方改革をこの国会において前に進めたいと、こう考えております。 3本柱については、削除を行った上で、まずは与党において、プロセスを経た上で閣議決定して提出したいと、こう考えております」 |
「裁量労働制については全面削除するように指示いたしました」と宣言している。但し議論をし直して再度提出するとしている。
「議論をし直す」ということは、最初の議論に基づいて作成し、了解した「企画型裁量労働制対象業務の拡充」に関わる案文に依拠して自分たちが正当性を発信し続けた国会答弁・発言を見直すことを伴うゆえにそれらの自己否定に当たる。
例えば厚生労働省は2017年9月8日に「働き方改革推進法」(正式名「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」)の法案要綱を厚労相の諮問機関である労働政策審議会(略称「労政審」)に諮問したが、その資料として提供した厚生労働省労働基準局作成のデータ、「平成25年度労働時間等総合実態調査結果」に300件以上の多くの誤りが発見・指摘されることになり、そのことに対して厚労相の加藤勝信は間違えていたデーターに一部基づいて議論されたことは問題視せずに、「データへの指摘は謙虚に受け止めるが、労政審からはおおむね妥当との答申を貰っている。法案をしっかり作っていきたい」と労政審の諮問に基づいた答申を正当とし、その正当性を以って「企画型裁量労働制対象業務拡充」に関わる自分たちの国会答弁・発言を正当とした。
だが、案文の議論をし直す以上、今まで正当として発信してきた国会答弁・発言を自己否定することを意味する。
2018年2月26日衆院予算委 希望の党代表の玉木雄一郎が働き改革法案の撤回を求めた。 安倍晋三「裁量労働制は一定の知識・経験を有している働く方本人に会社が決めた一律の定時に縛られることはなく出勤・退勤自由を決めて頂きます。仕事の進め方を任せをして効率的に成果を上げて頂こうというものであります。 労政審では労働時間等についての(厚労省の)資料も含め、様々な資料に基づいて議論を頂き、種々の指摘もあったと承知をしております。政府としてはその取り纏めの内容に添って裁量労働制の見直しを行うものであります。 その中でですね、対象業務の拡充を行う企画業務型裁量制、ま、これは専門業務型があって、拡大するのはですね、企画業務型裁量労働制でございますが、その労働制についてはJILPT(労働政策研究・研修機構)のアンケート・調査によりますと、対象となっている方の8割弱が『満足』と答えているのは事実でございます。 そしてそこで、『不満』に思われる方々は、業務量、時間などに不満を感じている方が多いのも事実であります。こうした点に対応するため今回の見直しでは健康確保措置を義務化したり、みなし時間と実労働時間の乖離を是正するために労働基準監督署の指定規制(?)を創設したりしているところでございます。 現在行っている企画業務型の労働制の中に於いて、20%近くが不満を持っておられる点にしっかりと着目しながら、今回この法制を進めているところでございまして、この点も是非ご理解して頂きたいと思いますし、そうした観点から(厚労省の)データの精査もしっかりと行いながら、ただ今加藤労働大臣のもとで準備を進めているところでございます」 |
安倍晋三は「労政審では労働時間等についての(厚労省の)資料も含め、様々な資料に基づいて議論を頂き」云々との発言で労政審は厚労相から受けた諮問を厚労省提供の間違いだらけの不適切なデータのみに基づいて議論を経て答申したわけではないとの趣旨で答申の正当性を訴え、答申に基づいて作成した案文に関わる自らの国会答弁・発言に対しても正当性の確立に努めている。
「JILPT(労働政策研究・研修機構)のアンケート・調査によりますと、対象となっている方の8割弱が『満足』と答えているのは事実でございます」も、「企画型裁量労働制対象業務の拡充」の正当性の主張となっている。
だが、労政審の諮問では厚労省の要請に基づいて行われたGILPTのデータは提供されていなかったために参考資料として活用されていなかった。にも関わらず、安倍晋三は国会答弁ではGILPTのデータを用いて法案の正当性を訴えている。
「働き方改革関連法案」から「企画型裁量労働制対象業務の拡充」の全面削除によって、これらの国会答弁の正当性そのものを自己否定したことになるが、国会答弁の正当性を自己否定したわけではない、「企画型裁量労働制対象業務の拡充」の全面削除を行ったに過ぎないとした場合、そこに自己矛盾が生じることになる。
国会答弁による正当付けによってのみ、「企画型裁量労働制対象業務の拡充」は正当づけられるからだ。国会答弁による正当付けは労政審
の諮問に対する答申と諮問の参考として提供された様々なデータ、その他のデータを裏付けとする。
間違っていたデータの存在が明らかになって、そのことが原因となって「企画型裁量労働制対象業務の拡充」の全面削除に自ら迫られた以上、国会答弁の正当性が崩れたということだけではなく、その崩壊は国会答弁の正当性の自己否定を意味する。
国会答弁は正しかった、だが、裁量労働制は全面削除するではなお一層矛盾を広げることになる。
安倍晋三は上記衆院予算委で「8割弱が『満足』と答えているのは事実でございます」ことを以って法案の正当性の訴えとしているが、GILPTのデータを仔細に眺めてみると、諸手を挙げて歓迎している調査データとはなっていないことを昨日のブログに書いた。
大体がGILPTが纏めたどの調査も「厚労省抽出分」と記載されている。諮問の基は厚労省が出したデータであって、厚労省自身が調査した労働時間の実態調査に多くの誤りがありながら、GILPTに提供した厚労省の元のデータに間違い、あるいは疑うなら、数値の操作がなかったと断言できる保証はない。
数値の操作の疑いに発展した場合の政権へのダメージを恐れて、早々に全面削除の挙に出た可能性も疑うことができる。でなければ、今まで厚労省のデーターの間違いを無視して法案の正当性を押し通し続けてきた経緯がある。今後共無視を押し通してこそ、整合性ある態度ということになるが、働き方改革は安倍政権の重要政策と言いながら、ここに来て国会答弁の自己否定までして、その整合性を自ら投げ捨て、重要政策の遂行に綻びを見せることになった。
これまでの国会答弁の自己否定の矛盾とGILPTに提供した厚労省の元のデータに数値の操作がなかったか、追及し明らかにしなければならない。