北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

無人機研究システム 多用途小型無人機はF-2支援戦闘機の親戚

2009-07-13 19:12:45 | 先端軍事テクノロジー

◆海を睨んだ多用途小型無人機

 間もなく硫黄島において飛行試験が開始される無人機研究システム。しかし、その開発は1995年より開始されていたものである。

Img_9736  多用途小型無人機として、技術研究本部は、無人機の開発を1995年度より開始し、1997年度には試験飛行を開始している。この試験飛行に用いられた無人機は、ステルス性を意識した機体で、F-4戦闘機から運用する。ターボファンエンジンを搭載、全長6.7㍍、幅2.5㍍、重量は620kgの無人機となっている。

Img_9484  自律飛行にはGPSを用いて座標確認を行い、飛行試験においては洋上哨戒任務を実施。目標となる艦船の上空を飛行し、赤外線映像などにより情報収集を行った後、海上にパラシュートで着水している。画像データなどは、リアルタイムで地上に送信されており、万一任務遂行中に攻撃を受け、撃墜されたとしてもデータは送ることが出来る訳だ。

Img_8413  着水した無人機は、その後、塩分除去などの措置を受けた上で、再び使用されている。この実任務に使用したのち、海上に着水し、その後に再整備を行った上で運用するというかたちは、どちらかというと、海上自衛隊の無人標的機の運用を髣髴させるものがある。ところで、この多用途小型無人機の回収には、海上自衛隊の訓練支援艦の支援を受けたのかもしれない。

Img_3414  F-4からの運用ということであるが、多用途小型無人機の運用試験において、洋上目標に対する偵察任務というのは、どちらかというとF-2が想定していたような対艦任務での運用していたのかもしれない。この計画が開始された1995年というのも、対艦攻撃任務を重視していたF-2支援戦闘機、FSX計画が進展中の時期と重なる。

Img_9731  考えてみれば、大型水上戦闘艦には、必ず強力な対空火器が搭載されており、中には広域防空に用いる長射程の艦対空ミサイルを搭載したものも配備されている。F-2支援戦闘機がASM-2など空対艦ミサイル四発を搭載して洋上阻止任務にあたるのも、日本本土上陸を試みる強力な両用戦部隊を迎撃する任務にあたるためであった。

Img_0213  両用戦部隊は、多くの人員が乗船していることと同時に地上戦力は揚陸までその真価を発揮できないという脆弱性を抱えている。言い換えれば、攻撃されれば反撃もままならず、人的損害の大きい両用戦部隊には、航空攻撃を警戒し、艦隊防空が重視された編成がとられることとなる。こうした艦隊に対する強行偵察は、非常にリスクを抱えることとなる。

Img_8592  他方で、無人機によってでも、その正確な位置が把握できたのならば、陸上自衛隊が運用する地対艦ミサイルや、海上自衛隊の地方隊が運用するミサイル艇により打撃を加えることが可能となる。本来、こうした任務には潜水艦が最適であり、例えば冷戦時代、海軍力でアメリカ海軍に対して劣勢にあったソ連海軍も大量の通常動力潜水艦を大洋へ広範に遊弋させ、索敵手段に用いていた。

Img_8576  潜水艦により、上陸船団を索敵するという手法は、海上自衛隊の場合、16隻という保有潜水艦の上限があった。潜水艦16隻というのは、NATO諸国の保有潜水艦数を比較してもかなり多いのだが、何分、集団的自衛権を行使することが出来るNATOは同盟国の潜水艦の支援を念頭に置くことが出来る(もっとも、上陸船団というよりもNATOの場合は陸上国境あらの侵攻の方が遥かに大きな脅威であるが)のに対して、海上自衛隊は、米海軍の支援を除けば、基本的に16隻の潜水艦だけにたよって任務を遂行しなくてはならない。

Img_8270  艦隊に対して、海上自衛隊も対潜哨戒機であると同時に実用航空機としては世界最高性能の洋上哨戒能力を有するP-3C哨戒機を、80機運用しているが、やはり、ターボプロップ四発機であるP-3Cで強行偵察を行えば、航空優勢が確保されていなければ撃墜される可能性が非常に高くなる。高速で高空を飛行できるXP-1でも、厳しいものがあるだろう。

Img_7816  結果、ステルス性に配慮した多用途小型無人機は、F-4から運用し、水上戦闘艦部隊や両用戦艦部隊に対する強行偵察を実施、この情報を元にF-2支援戦闘機を展開させる運用が想定されていたのでは、と。1993年に北朝鮮はノドンミサイルの初試験に成功しているが、それ以上に、冷戦終結後とはいえ、F-2の開発が進められる程度に、洋上からの脅威は想定されていたはずである。つまり、F-2と多用途小型無人機は、親戚だった訳だ。

Img_9740  他方、今日では、離着陸が可能となった無人機研究システムは、北朝鮮の核実験など、新しい脅威の中、いよいよ硫黄島での飛行試験を開始しようとしている。洋上の艦隊と比べ、地上の移動式ミサイル発射機は、その発見が難しく、何分、1995年から開発が始まった多用途小型無人機と比べ、能力への要求はあまりに大きく変わっている。他方、F-4の主翼左右に搭載できる程度に機体は小さく、結果的にレーダーには非常に映りにくい航空機である。過剰な期待は、と戒める心とともに、日本の新しい翼、その運用の性能には、やはり期待したい。

HARUNA

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コメント (6)
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