◆防衛予算概算要求
11月3日に作成しつつ、掲載の機会を逸していた平成22年度概算要求の主要装備品について掲載します。
事業仕分作業により、さらに減額となる可能性がある装備品ですが、装備品定数については、防衛大綱にその装備計画が明記されているほか、基盤的防衛力の維持に必要な定数が考慮された上で、その数字が算出されているため、削減には下限があるということを第一に認識しなくてはならない。
外国製装備の方が安価なのでは、という短絡的な考えもあるが、運用上の国内法規との関係や稼働率の維持や予備部品、国内での運用基盤確立に際しての初期調達部品や支援企業、設備などの面を含めれば、必ずしも安価とは言い難く、こういった背景があるからこそ、日本以外の各国も装備品の国産化に向かう訳だ。
◆火器・車両等
- JGSDF9mm拳銃:1004丁(2)→1004丁(2)
- JGSDF89式小銃:10012丁(29)→10012丁(29)
- JGSDF対人狙撃銃:105丁(2)→105丁(2)
- JGSDFMINIMI機銃:195丁(4)→195丁(4)
- JGSDF12.7mm機銃:128丁(7)→126丁(7)
- JGSDF81mm迫撃砲:5門(1)→5門(1)
- JGSDF120mm迫撃砲:4門(2)→4門(2)
- JGSDF99式自走榴弾砲:9両(82)→9両(82)
- JGSDF新戦車:58両(561)→16両(157)
- JGSDF軽装甲機動車:100両(31)→100両(31)
- JGSDF96式装輪装甲車:19両(24)→17両(22)
- JGSDF87式偵察警戒車:3両(8)→3両(8)
- JGSDFNBC偵察車:11両(69)→11両(69)
- JGSDF車両通信施設器材:(950)→(850)
- JASDF軽装甲機動車:40両(13)→26両(8)
火器、車両については、もっとも大きなものとして新戦車の調達が58両から16両に大幅削減されていることである。74式戦車が耐用年数を迎えたことで速いペースで削減されており、これを補うことができない戦車調達数にとどまるとともに、量産効果についても将来、大きな影響を及ぼしそうである。
車両としては96式装輪装甲車の調達が一部減らされているが、仮にアフガニスタンへ陸上自衛隊が派遣される可能性があるのならば、この種の装甲車はどれだけあっても充分ではないほどであろう。このほか、12.7ミリ重機関銃や対人狙撃銃の調達について下方修正して要求されている。
◆ミサイル防衛関連
- 技本イージスBMD日米共同開発:16→(16)
- JASDFペトリオット改修:7式・定修1:944→(944)
誘導弾関連では、03式中距離地対空誘導弾、91式携帯地対空誘導弾、01式軽対戦車誘導弾の調達が下方修正されている。しかし、新装備である中距離多目的誘導弾の要求が維持されたことについては、幸いである。22年度は新装備が多く、量産初年に当たる装備品の調達数削減は全体の調達コストに影響するためだ。
ペトリオットミサイルのランチャーシステム改修については、すべての予算が取り下げられている。ただし、この中にはPAC-3は含まれていない。一応、射程は短いもののPAC-3はPAC-2と同じく航空機対処に用いることができ、陸上自衛隊の03式中SAMも配備されているため、後回しにされたのだろうか。
◆誘導弾
- JGSDF03式中SAM:1中隊(270)→1中隊(203)
- JGSDF91式携SAM:30セット(15)→22セット(22)
- JGSDF96式MPMS:5セット(108)→5セット(108)
- JGSDF中距離多目的誘導弾:13セット(53)→13セット(53)
- JGSDF01式軽MAT:100セット(116)→39セット(31)
- JASDFペトリオット(PAC3以外):(87)→(87)
- JASDFペトリオットLS改修:6式(18)→(0)
航空機関連では、まず目につくのは新哨戒機P-1の要求が二機から一機に半減されたことだろう。MCH-101掃海輸送ヘリコプター、SH-60K哨戒ヘリコプターも要求が削減されている。F-15の近代化改修、F-2支援戦闘機の空対空能力に関する改修もそれぞれ削減されているところが、大きな問題である。
電子装備が陳腐化した航空機は実戦運用に耐えない場合があり、それは抑止力の低下に直結する。他方で、磁気主力戦闘機F-X選定は順調に遅れている。早く決定しなければF-2のライン閉鎖の時期となってしまうため、国内航空産業への影響は、自衛隊の航空機運用を直撃する。
◆航空機
- JGSDF観測ヘリOH-1:4機(81)→4機(81)
- JGSDF多用途ヘリUH-60JA:5機(161)→3機(101)
- JGSDF輸送ヘリCH-47JA:2機(142)→2機(142)
- JGSDF新練習ヘリ:1機(3)→1機(3)
- JMSDF新哨戒機P-1:2機(403)→1機(223)
- JMSDF哨戒ヘリSH-60K:5機(292)→4機(240)
- JMSDF掃海輸送ヘリMCH-101:2機(148)→1機(82)
- JMSDF救難飛行艇US-2:0→0
- JMSDF初等練習機T-5:4機(10)→4機(10)
- JMSDF回転翼練習機TH-135:3機(21)→3機(21)
- JASDFF-15近代化改修:4機(62)→2機(37)
- JASDFF-15自己防衛能力向上:4機(110)→2機(66)
- JASDFF-2空対空能力向上:4・28機(81)→1・28機(75)
- JASDFF-2JDAM運用能力付与:35機(47)→35機(47)
- JASDFCH-47J輸送ヘリ:1機(43)→1機(43)
- JASDFE-767レーダー能力向上:3機(135)→3機(135)
- JASDFE-2C改善:1機(9)→1機(9)
艦船としては22DDHとして要求されていた、19500㌧型ヘリコプター搭載護衛艦が維持されている点が特筆される。中国海軍が60000㌧クラスの大型空母を建造しており、満載排水量で30000㌧に迫る新しい護衛艦は、しらね型を代替し、周辺海域の平和と安定を維持するうえで重要な護衛艦となるからだ。
削減された装備には、音響測定艦の調達が中止となっている。音響測定艦はもちろん、海洋観測艦も日本は排他的経済水域の規模と比べ不足していることは否めず、この種の装備品はもう少し充実していてしかるべきであろう。日本の領海、排他的経済水域はあの大陸中国よりも広いことを忘れてはならない。
◆艦船
- JMSDF護衛艦DDH:1隻(1166)→1隻(1181)
- JMSDF潜水艦SS:1隻(551)→1隻(554)
- JMSDF掃海艇MSC:0→0
- JMSDF敷設艦ARC:0→0
- JMSDF音響測定艦AOS:1隻(194)→0
- JMSDFむらさめ型SAM換装:1隻(1)→1隻(1)
内訳は、当初要求額と要求定数→補正後、として掲載。
HARUNA
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